映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『マンダレイ』ネタバレなしの感想。女がたまたま訪れた綿花農場の奴隷を解放し、自由の共同体作りに奮闘する

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■評価:★★★☆☆3.5

「観念的な思想を押し付ける無意味さ。人間を類型に当てはめる愚かしさ」

【映画】マンダレイのレビュー、批評、評価

『奇跡の海』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『ハウス・ジャック・ビルト』のラース・フォン・トリアー監督の2005年の作品。
「アメリカ合衆国 – 機会の土地」三部作の二作目で、前作は『ドッグヴィル』となる。

一貫して描かれるテーマは「人間の「本性」を無視した観念的な道徳の無意味さ」。
聞きなじみのない「観念的」という言葉の意味は、具体的現実を離れて、(抽象的に)頭の中だけで考えるさまを示す。

本作のストーリーは一応、『ドッグヴィル』のつづきとなる。
私は『ドッグヴィル』を鑑賞したのは10年以上前。
すっかり内容を忘れた状態で鑑賞したが、問題なく楽しめた。

余談だが、『ドッグヴィル』で主人公のグレースを演じたニコール・キッドマンはかなりハードな性交シーンがあったせいか、『マンダレイ』では降板している。

南北戦争と奴隷解放宣言から70年後の1933年のアラバマ州。縄張りを失って旅をするグレースらギャング団は、大農場マンダレイの前で黒人の女に呼び止められる。マンダレイは今も奴隷制度同様の搾取が横行し、今まさに「使用人」の一人ティモシーが鞭打ちの刑に処される寸前だった。グレースが割り込むと、農場の女主人は発作で命を落としてしまう。グレースは主人を失って途方に明け暮れる「使用人」たちに、民主的で自由な共同体に作り替えようと奮闘するが……。

予想外に面白かった。
ラース・フォン・トリアー作品は起承転結の破綻したストーリーが多いので、楽しみづらいのが本音である。
だが本作は、事件も起こり、問題を解決する過程でキャラクターの変化も描かれる。
素直にちゃんとした物語として描かれているし、内容も分かりやすいので、かなり興味深く鑑賞できた。

本作は奴隷制度を題材に、思想の押し付けの無意味さを描く。

グレースがたまたま訪れたマンダレイという大農場には時代錯誤の奴隷がいる。
グレースは自分本位に自由のすばらしさを説いて彼らを解き放とうと奮闘する。

こうやって文字だけで書くと堅苦しく見える。
だが、農場は十人前後しかいないため、縮図として非常にわかりやすく描かれてる。

さらに本作は登場人物の心理状態(主にグレース)を、逐一、ナレーションで解説してくれる。
あまり映画的ではないスマートさに欠ける手法ではある。
筋金入りの映画ファンは、説明でキャラクターの内面を描く手法を好まない人は多い。
だが、物語への理解が容易にはかどるメリットはある。
私は受け入れられた。

私が特に本作で良かった箇所はキャラクターの魅力である。
グレースのキャラクターが滑稽で可愛らしかった。
グレースはとにかくマジメ。
奴隷たちを自由にするために、無欲に動き回る。

だが、思い通りに事は運ばない。
グレースが説く「自由主義」に対して、元・奴隷たちはあまり魅力を示さない。
それでもグレースは必至に促し、ようやく奴隷たちが活発に働きだす。
だが、今度は自然災害で、綿花畑がやられてしまう。

グレースはあらゆるストレスで性的に活発になってしまう。
この背徳感のある流れは、ちょっと面白かった。
もちろん、この性的な感情が後に、グレースの最後の決断を促すきっかけとなる。

あと、本作では印象的なのは舞台演出である。
前作のドッグヴィルにも見られた「機会の土地-アメリカ」三部作の特徴でもある奇妙な舞台。
床に白い枠線や建物の一部のみセットに配した異様な雰囲気。
最初はびっくりするが、観ていると普通に見慣れてしまうのも不思議なもの。

人としての尊厳をムシした愚かなアメリカ人を描くシリーズなので、このような簡素な作りにしているのだと思われる。
こういった挑戦的な試みはラース・フォン・トリアーらしさがあって良い。

三部作の最終作は無期限延期だそう。
内容は悪くないので、ぜひとも続きを作ってほしいところ。

人としての尊厳をムシされ、人生を振り回されるキャラが描かれる作品はコチラ。

■ビー・デビル

■それでも夜は明ける

■トガニ 幼き瞳の告発

■ヒトラーの忘れもの

マンダレイの作品情報

■監督:ラース・フォン・トリアー
■出演者:ブライス・ダラス・ハワード イザック・ド・バンコレ
■Wikipedia:マンダレイ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):50%
AUDIENCE SCORE(観客):75%

マンダレイを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(DVD)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年9月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。