映画の海

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⑤人生の節目

映画『ペパーミント・キャンディー』ネタバレなしの感想。男が鉄道に飛び込む場面に始まり、そこに至るまでの20年を描く

投稿日:10月 9, 2020 更新日:

■評価:★★★☆☆3

「運命(時間)の残酷さ」

【映画】ペパーミント・キャンディーのレビュー、批評、評価

『オアシス』『シークレット・サンシャイン』『ポエトリー アグネスの詩』『バーニング 劇場版』の韓国の巨匠イ・チャンドンの2000年の監督作品。
エンタメ性の薄い、テーマを重んじたドラマ作品を多く手掛ける監督。
観終わった後も尾を引く、トーンの重い映画が多い。
私はエンタメ性の高い作品が好きではあるが、イ・チャンドン作品は琴線に触れやすい。

『ペパーミント・キャンディー』は韓国のアカデミー賞といわれる大鐘賞で最優秀作品賞を含む主要5部門を受賞し、批評家からも絶賛された。

1999年、春。鉄橋の下の河原で、ピクニックが行われている。そこに現れたキム・ヨンホは、突然叫びだしたり川に飛び込んだりと、奇人のような行動を取る。そして鉄橋の線路に侵入し、「戻りたい…帰りたい…」と叫びながら列車に衝突する。3日前、ヨンホは海岸でバイクに乗った二人組と待ち合わせ、金と引き換えにピストルを受け取る。

率直な感想は、理解しづらい映画だった。
映画冒頭、自暴自棄で頭のイカれたスーツ姿の主人公ヨンホが河川敷のバーべキュウ会場に突入する。
その後、ヨンホは河川を跨る線路に登る。
迫りくる電車の前で両手を広げ、苦悶の表情を浮かべる。
恐らく、ヨンホは轢かれて命を落とした。

次に、ヨンホが、怪しい連中からピストルを譲り受けるシーンに切り替わる。
こんな感じで、本作はヨンホが自害に至るまでの20年間を、7つのエピソードに分け、時間を遡りながら描く構成となる。

この7つのエピソードがどれも繋がりがない。
エピソードの間にも相当な空白期間があるため、どのエピソードのヨンホの性格に一貫性がないように見えるのだ。
絶望しているヨンホ。暴力的なヨンホ。普通の生活を送るヨンホなど。

中盤を過ぎた辺りで、まともだったヨンホの姿が見られる。
なぜヨンホの人生が狂ったのか?
本作の核心となるシーンが、後半になってようやく明かされる。

遡って描く構成が、私はどうも好きになれない。
普通に時系列順に描くと普通だから、構成でごまかしているようにしか見えないのだ。
なので、本作もそこまでツボにハマった映画ではない。
イ・チャンドン監督作品では、一番、退屈な映画だった。
だが、尾を引くドラマ性は本作の時点ですでに健在である。

ぱっと見のテーマは、韓国映画ではおなじみである強権・軍事政権批判の印象が強い。
序盤はヨンホはあまりに自己中心的すぎる。
女性に対しても暴力的だし、印象は最悪。
まったくもって好きになれない主人公である。
次第に浮き彫りになる人生が狂わされたとある出来事を目の当たりにして、ヨンホへの同情の念を、観客は持つようになる。

ただ、鑑賞後にどうも軍事政権批判というテーマは安直すぎるようにも思えた。
そのため、インタビュー記事を探してみたら、やはりテーマは違った。

イ・チャンドン監督はある日、ひげを剃っていた時に鏡を見て、自分の老化した姿に気づいてびっくりしたそう。
つまり、すべてを破壊する運命(時間)の残酷さを恐ろしく感じたのだ。
現実では時間を巻き戻せないため、映画の中で時間を巻き戻そうと、本作を制作した。
これこそが本作のテーマである。

あと、なぜか性格の悪い退廃的なヨンホに、いろんな女性が体を許していく流れは、かなり違和感を覚える。
まるで村上春樹の小説の主人公のよう。

私はそこまで好きになれない映画だが、公開された2000年でこのテーマを扱う映画は鮮度が高かったのだろう。
評論家に評価されるのも納得である。
余談だが、カルト映画監督のギャスパー・ノエが、2002年にまったく同じテーマで『アレックス』を制作している。

運命(時間)の残酷さを描いたおすすめ作品はコチラ。

■アレックス

ペパーミント・キャンディーの作品情報

■監督:イ・チャンドン
■出演者:ソル・ギョング ムン・ソリ キム・ヨジン
■Wikipedia:ペパーミント・キャンディー(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):86%
AUDIENCE SCORE(観客):82%

ペパーミント・キャンディーを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年10月現在

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。