映画の海

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⑨組織のなかで

映画『ビジランテ』ネタバレなしの感想。閉鎖的な地方都市を描く

投稿日:10月 26, 2020 更新日:

■評価:★★★★☆4

「閉鎖的な地方都市」

【映画】ビジランテのレビュー、批評、評価

『SR サイタマノラッパー』『22年目の告白 -私が殺人犯です-』『AI崩壊』の入江悠監督作品。

田舎・地方=人情味が溢れる穏やかな土地、と連想しがち。
だが内実、異様に強い横の繋がりに端を発して、トラブルを抱えがちである。
こうした閉鎖的な田舎の闇を描いた映画は多い。

閉鎖的な島で、男からは慰めものにされ、年配の連中には奴隷のようにこき使われる女性を描いた『ビー・デビル』。
『愛しのアイリーン』ではフィリピン女性を妻にしようとするが、母に反対されて、思わぬ事態に発展する様を描いている。

本作『ビジランテ』も、地方都市の暗部を描いた内容となる。

大型商業施設の誘致計画が進む、埼玉県のとある閉鎖的な地方都市。地元の有力者の子供である神藤三兄弟の長男・一郎は子供のころ、父の暴力に耐えきれず、家を出て行ったまま。次男・二郎は地元の市議会議員、三男・三郎は反社会的な組織の下でデリヘルの雇われ店長として働いていた。父が天に召された日、一郎が突然2人の前に戻ってきた。一郎は父の遺言書を盾に土地を相続すると主張し始める。この出来事がきっかけで、三兄弟の欲望や野心、プライドがぶつかり合い、思わぬ事態へ発展していく。

めちゃくちゃ面白かった。
バラバラとなった兄弟の元に、突如として音信不通だった兄貴がやってくる。
兄弟、それぞれの欲望などがぶつかり合って、とんでもない悲劇を巻き起こす話。
この流れ、非常に既視感の覚える作品がある。

映画ファンで知っている人は少ないだろう。
純文学作家、舞城王太郎のデビュー作『煙か土か食い物』である。

私が最も好きな小説の一冊。
ビックリするほど『ビジランテ』が『煙か土か食い物』と共通点が多い。
恐らく、脚本も担当した本作の監督・入江悠は『煙か土か食い物』を読了していると思われる。

『煙か土か食い物』は連続主婦生埋め事件の被害者の息子・四郎が、アメリカから地元の福井に戻り、推理して犯人をとっ捕まえる話。
実はこの家族にはいろいろといわく付きである。
政治家で、暴力的な父を持つ四郎は四人兄弟。
上から、一郎、二郎、三郎、四郎。
それぞれがバラバラに人生を歩んでいる。
中でも、とりわけ天才児かつ問題児だった二郎は行方不明。
どうやら連続主婦生埋め事件と何らかの関係があるんじゃないか、疑惑へと発展していくのだ。

この通り、『ビジランテ』との共通点が異様なまでに多い。
地元の政治家であり、暴力的である父を持つ息子たちの名前は一郎、二郎、三郎。
父の死をきっかけに、失踪していた一郎が戻ってきて、事態は凄惨な方向へと動いていく。
舞台は地方である埼玉。

ただ、テーマはまったく異なる。
『ビジランテ』は地方都市特有の暗部を描いており、全体を通して地方特有の陰湿な雰囲気が漂う。
本音の建て前まみれの世界で、みんながみんな、腹の中に隠す邪な欲望を満たすために動く。
心底、気色悪い。
日本人の悪い部分を煮詰めて出来上がったような、好きになれないキャラクターばかりが登場する。

ただ、桐谷健太が扮した三郎は良かった。
三郎は乱暴者で口が悪い。
仕事も風俗店のオーナーってことで、肩身の狭い思いをしながら働いている。

でも、お店の女の子たちは身体を張って守る胆力がある。
ただの商品として守るのではなく。
この三郎の良い人間性が、事態の深刻化を招いたりするのだから、切ない。

終わり方もかなり暗いトーンである。
でも『煙か土か食い物』とは違ったテイストで描いていたのは良かった。

意外と篠田麻里子が良かった。
父の跡を継いで政治家となった二郎の妻を演じている。
政治家の妻ってことで、野心があり、芯の強さが言動からひしひしと伝わってくる。

篠田麻里子といえば『TIME』という映画で演じた吹き替えがさんざん貶された印象が強い。
だが、本作では私は良かったと思う。

濡れ場があったらもっと良かった。
とあるシーンで濡れ場を削っているような場面があった。
ちゃんと体を張って演じていたら、キャラクターの説得力が更に増していた。

陰湿な映画だが、映画ファンなら好きな人は多そう。

田舎町の闇を描いた作品はコチラ。

■ビー・デビル

■愛しのアイリーン

ビジランテの作品情報

■監督:入江悠
■出演者:大森南朋 鈴木浩介 桐谷健太 般若 篠田麻里子
■Wikipedia:ビジランテ

ビジランテを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2020年10月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。