映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑥バディとの友情

映画『劇場』ネタバレなしの感想。孤独な劇団員と孤独な女学生が出会う

投稿日:

■評価:★★★★☆4.5

「愛」

【映画】劇場のレビュー、批評、評価

お笑い芸人でありながら、デビュー作『火花』がいきなりの芥川賞を受賞した、又吉直樹の長編小説二作目の映画化作品。
私は『火花』を原作小説のみ、読了している。
あまりの面白さにビックリした。

又吉直樹はいわゆる純文学好きで、描く小説のジャンルの純文学である。
小説は大きく分けてエンタメ小説(一般文芸)と純文学の二種類がある。
前者は文字通りで、ストーリーの起伏に富んだエンターテイメントな内容。

逆にストーリーよりも絢爛な文章や、哲学感の強さに重きの置かれた作品が純文学となる。
現代では村上春樹、村上龍、中村文則など。
故人でいえば又吉が好む太宰治などが挙げられる。

『火花』は純文学らしい、人間の内面が深く描かれた作品だが、エンタメとしての面白さも素晴らしい。
とにかくキャラクターが面白くて、一気に読み切った記憶がある。
あまりに優れた内容だったので、正直、本作『劇場』は期待しておらず、原作も手に取っていない。

コロナの関係で、新作映画にも関わらず、劇場公開されず、Amazonプライム動画で配信された。
鑑賞してみたが、とんでもない作品だった。

高校からの友人と立ち上げた劇団「おろか」で脚本兼、演出を担う青年・永田。前衛的で挑戦的な作風は上映ごとに酷評され、劇団員も永田を見放してしまう。そんな孤独にさいなまれる永田はある日、同じスニーカーの女性、沙希にナンパをして、仲良くなる。女優になる夢を抱いて上京し、現在は服飾の専門に通う沙希と永田の恋が始まる瞬間だった。

凄まじいヒューマンドラマを見せつけられた。
こんなに凄いドラマを見たことがないかもしれない。

とにかくメイン・キャラクターである二人、永田と沙希の造形が素晴らしすぎる。
セリフや行動はもちろん、永田の心の声も面白いし、ユーモラス。

例えば永田の沙希の好きなところは、歩く速度。
永田は自分より早く歩く女はキライだし、遅い女はもっとキライ。
でも沙希は絶妙な速度でちょうど良い。
とか。

あるいは、永田はたまに浮気をする。
その際は、罪悪感から、なぜか道端のブロックを持ち帰るクセがある。
二人は同棲しているが、永田のブロックを沙希はただの酒癖の1つと認識して、笑うのだ。
永田の罪悪感による行いだと知らず。
気づいたらブロックが4~5つくらい溜まっているのも何だかクスっとさせられる。

とにかくこんな感じで、二人のキャラクターが魅力的すぎる。
ただ二人の交流を見ているだけで楽しいという。
とんでもないキャラクター創造力である。
読書経験はもちろん、コントや漫才で鍛えたキャラクター作りの経験が執筆を助けているのだろう。

本作は劇的な展開はない。
ほとんどが二人の会話劇に近い。
この辺りはストーリー性に重きが置かれていない純文学らしさがある。
だが、ずっと面白いし、興味深い。
二人のキャラクターの行く末を見守りたくなり、画面に釘付けである。
激しい起伏のあるストーリーじゃないのに、ここまで観客を物語に吸引させる力が素晴らしい。

とにかく印象的だったのが、永田の心の声の痛々しさ。
嫉妬心が強くて、沙希に対してたまに攻撃的になってしまう。
でも本人は、自分の行いが悪いという自覚はある。
だが、攻撃的になる理由が良くわからなくて、苦しみながら攻撃する。
当然、永田の攻撃を受けた沙希は悲しむ。

こういう恋愛・コミュニケーション・人生経験においての未熟さよる愚行が観ていて辛い。
恋愛を経験したことがあるなら、誰もが共感できるだろう。
私も過去、永田のように、彼女を攻撃してダメになった恋愛はたくさんある。
だから物凄く共感できた。

個人的には、もっと永田がなぜ沙希に好かれるのかを、もっとしっかり描いてほしかった。
永田は典型的なダメ人間なのだ。
仕事はしないし、舞台に関しても大して努力していない。
なのになぜか沙希は永田が好き。
せめて一箇所だけでも、永田に惹かれる理由を、分かりやすく見せてほしかった。

どう考えても、沙希が永田を愛する意味がわからない。
恐らく、永田の才能に惹かれているんだろうが。

本作の見所はラストである。
ラストの沙希の家での会話劇には唖然とした。
こうも想定外の展開を見せるのかと。
展開の畳みかけで、画面に釘付けになった。

演技力が素晴らしい。
山﨑賢人は、本作の永田役が一番の当たり役じゃないか?
キングダムも相当よかったが、本作の永田は味があって、キャラクターに魂が宿っていた。

何といっても、沙希役の松岡茉優。
演技の化け物。
恐ろしいほどに素晴らしい演技をする女性である。
沙希の悲しむ姿は本当に辛かった。
思わず何度も映像を止めてしまったほど。

又吉という人間は本当に素晴らしい作家である。
純文学というジャンルの作家だが、お笑い芸人をやっているだけあって、エンタメ性も高い。
いずれ、本作の原作も手に取りたい。

優れた恋愛映画はコチラ。

■おんなのこきらい

劇場の作品情報

■監督:行定勲
■出演者:山﨑賢人 松岡茉優
■Wikipedia:劇場

劇場を見れる配信サイト

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Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年11月現在

-⑥バディとの友情

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。