■評価:★★★☆☆3
「原始的宗教」

【映画】ウィッカーマン(1973)のレビュー、批評、評価
本作のタイトル「ウィッカーマン」とは、共和政ローマ期に「ガリア戦争」の遠征記録である「ガリア戦記」に記述されている。
柳の枝で編まれた巨大な人型の檻で、ドルイド教徒が生贄となる人間を入れて燃やしたものである。
このブログにも記事にしている『アントラム 史上最も呪われた映画』にて、似たようなモノが出現している。
スコットランド・ハイランド地方西部の警察に勤める中年の巡査部長ニール・ハウイーは、とある孤島で行方不明になった少女ローワン・モリソンの捜索依頼の匿名の手紙を受け取る。ハウイーが向かった先の島では、領主サマーアイル卿のもとでキリスト教の普及以前のケルト的ペイガニズム(※1)が復活していた風景だった。島民は生まれ変わりを信じ、太陽を信仰していた。子供たちには生殖と豊作を願うための性的なまじないを教え、大人たちは裸で性的な儀式に参加していた。ハウイーは厳格なキリスト教徒のため、衝撃と強い嫌悪感を覚えた。そんな中で捜索を続けるのだが……。
※1
ペイガニズムとは自然崇拝や多神教の信仰を広く包括して指し示す、印欧語圏における言葉。
カルトな宗教を信仰する連中の元に飛び込むという設定。
まさにこのブログにも記事にしている、2019年に劇場公開された『ミッドサマー』である。
『ウィッカーマン(1973)』の感想としては、『ミッドサマー』のアリ・アスター監督の凄さを相対的に実感した結果となった。
『ウィッカーマン(1973)』は退屈って意味ではない。
主人公である警官のニールが夜、外に出ると島民の男女が外で性交する姿を目撃したり。
泊まったパブの娘が急に誘ってきたり。
学校では教師が小学生たちに、男根がどうのこうのといったイカれた授業をする。
あまりに倫理観が狂った島のため、先の展開に好奇心がそそられる。
だが、演出が絶望的に下手である。
何の脈絡もなく、唐突に男女が外で性交シーンをドーンと見せる。
あまりに唐突なので、ニールの妄想描写なのか?と疑ってしまうほど。
逆に、『ミッドサマー』のアリ・アスター監督は不穏な雰囲気の作り方がうますぎるのかもしれない。
『へレディタリー/継承』にしても『ミッドサマー』にしても、常に不穏な雰囲気が漂う。
伏線とも思える怪しいシーン、キャラの言動が至る所に散りばめられている。
そのせいで、常に画面に緊張感が漂っているのだ。
だが、本作は伏線やフリといった、観客のテンションを上げる細かい要素が皆無。
映画としてのレベルの差を感じた。
音楽も微妙だった。
本作は色んなシーンで陽気な音楽を耳にする。
陽気な音楽を流すことで、そのシーンの不穏さを強調したいのかもしれない。
が、いかんせん音楽が陽気すぎて、軽薄に見える。
もう少し音楽に関しても拘って作ってほしかった。
70年代の映画なので仕方ないが、現代の映画のレベルとの差を感じてしまった。
とはいえ脚本自体は面白い。
展開は想定内ではあるが、クライマックスには驚かされる。
まさかこういう流れになるとは。
そして姿を見せる、Blu-rayのパッケージにもなっている人型の檻。
この映画、子供のころに見たらトラウマになっただろうなあと思う。
演出こそは微妙だが、古い映画の割には楽しめた。
特にパブの娘の異様な色気が良かった。
私だったらホイホイと娘の誘いに乗って、痛い目に遭いそうである。
ニコラス・ケイジ主演の2006年に公開されたリメイク版もあるので、もしかしたらいずれ鑑賞するかもしれない。
ウィッカーマン(1973)の作品情報
■監督:ロビン・ハーディ
■出演者:エドワード・ウッドワード クリストファー・リー ダイアン・シレント
■Wikipedia:ウィッカーマン(1973)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):89%
AUDIENCE SCORE(観客):82%
ウィッカーマン(1973)を見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2020年12月現在