映画の海

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ドキュメンタリー

映画『娘は戦場で生まれた』ネタバレなしの感想。女子大生が撮影する、シリア内戦のドキュメンタリー

投稿日:

■評価:★★★★☆4

「子供という希望」

【映画】娘は戦場で生まれたのレビュー、批評、評価

シリアにおける内戦は、2011年から始まるバッシャール・アル=アサド政権派のシリア軍と反政権派勢力の民兵との衝突と主となる。
その後、混乱に乗じてISIL(イスラム国)なども参戦している。

さらに、アサド政権の打倒およびISIL掃討のためにアメリカ合衆国やフランスをはじめとした多国籍軍、逆にアサド政権を支援するロシアやイランもシリア領内に空爆などの軍事介入を行っており、内戦は泥沼化している。

結果的に多くのシリア難民を生んでいる。
2019年公開映画の『存在のない子供たち』では、隣接国であるレバノンに逃げたシリア難民の子供たちが直面する問題を描いている。

ジャーナリストに憧れる女子大生ワアドは、デモ運動への参加をきっかけにスマホでの撮影を始める。だが、内戦は激化の一途を辿り、美しかった都市は独裁政権によって破壊されていく。ある日、ワアドは医師を目指す青年・ハムザと出会う。ハムザは仲間たちと廃墟の中に病院を設け、日々繰り返される空爆の犠牲者の治療にあたっていく。だが、多くは床の上で命を落としていく。非情な世界の中で、二人の間に新しい命が誕生する。ワアドは自由と平和への願いを込めて、アラビア語で“空”を意味する“サマ”と名付けた。

すごい映画だった。
見ている最中はずっと胸がキリキリと削られる思いで苦しかった。

本作で最も素晴らしかった点は、撮影者が二十歳そこそこの女子大生であるということ。
内戦が激化し、シリア最大の都市・アレッポは荒廃が進む。
ジャーナリスト志望の女子大生ワアドは、自身の住むアレッポの現状を伝えるため、居座って撮影し続ける。

映像は酷い有様である。
独裁政権による強権の弾圧に対抗しようと、反政権派勢力の国民はデモを行ったりする。
だが、アサド政権は国民を武力で容赦なくたたきつぶすのだ。

ロシアの後押しによって、アレッポに居座る反政権派勢力らは毎日、空爆され、命が奪れ続ける。
意味がわからない。
自国民の命を奪うとか頭がおかしい。

国民がいるから国家が成り立つのである。
なのに国民の命を奪う行為には、観ていて怒りが覚える。

こんな激戦地帯でワアドは何と、子供を宿すのだ。
でも気持ちはわかる。
ワアドらは毎日毎日、死と隣り合わせの日々を乗り越えてる。
心臓がいくらあっても足りない。
精神が狂ってしまいそうである。
ちょっとしかきっかけでモチベーションが崩れ、命を投なげうってもおかしくない異常な状況。
あるいは思想転換して政権寄りになるなど。

戦い続けるワアドには希望が必要なのだ。
明るい未来の灯、そのためにサマを生んだ。
サマを守るために、必死に戦い続ける。
サマがいるから頑張れる。
サマの笑顔を守るために、サマが安心して過ごせる日常を取り戻すため、政権に屈服しない強靭な精神力を保てるのだ。
人間の底力を見せつけられた気がした。

この映画の素晴らしいところは、ドキュメンタリーなのに、ちゃんと起伏のある構成で作られているところ。
サマが生まれたりする瞬間はすごくハッピーだ。
だが、次のシーンでは、政権の被害者となった大量の遺体の映像が映されたりする。
目を覆いたくなる悲惨さ。

こういう絶望を目の当たりにしても、反政権派勢力やワアド、ワアドの夫らが戦い続けるのは敬服の想いである。
ワアドの夫は医者。
病院は、政権によって標的にされる。
だが、病院を空爆されても、夫は決して逃げない。
ずっとワアドと共にアレッポの滞在し続け、新しい病院となる建物を探す。

そんな夫のもとには毎日300人の患者が送られてくる。
悲惨である。
すでに脈を失った娘を必死に心臓マッサージする親。
弟の亡骸の前に涙する兄。
辛い。本当に辛い。
この文章を書いているだけでも、映像が蘇って泣けてくる。

夫は約20日間で890件の手術をこなしている。
とんでもない現状。

自分の悩みがちっぽけに思える惨劇さだった。
刺激的な映像の多いドキュメンタリーだが、多くの人に見てもらいたいと思う。

しかし、本作の映画のジャケット画像はすごいインパクト。
片手は子供に添え、もう片方には自身のアイデンティティであるカメラを持つ。その背景は荒廃したアレッポの街。
カッコ良さすら覚える。

戦争の被害を被った子供を描く傑作はコチラ。

■ヒトラーの忘れもの

娘は戦場で生まれたの作品情報

■監督:ワアド・アル=カデブ エドワード・ワッツ
■出演者:ハムザ・アル=カデブ サマ・アル=カデブ ワアド・アル=カデブ
■Wikipedia:娘は戦場で生まれた
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):99%
AUDIENCE SCORE(観客):92%

娘は戦場で生まれたを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2020年12月現在

-ドキュメンタリー

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。