■評価:★★★★☆4
「育児放棄」

【映画】子宮に沈めるのレビュー、批評、評価
本作は、2010年に発生した大阪市西区のマンションで2児(3歳女児と1歳9ヶ月男児)が母親の育児放棄によって餓死した事件『大阪2児餓死事件』をモデルとしたフィクション映画。
夫から一方的な別れを告げられた由希子。離婚後、由希子は娘の幸、息子の蒼空とアパートでの新生活を始める。学歴や職歴もない由希子は、医療資格受験の勉強をしながら長時間のパートをし、2児を養う。だが経済的に余裕はなく、友人からの誘いで夜の仕事を始める。帰宅が深夜になる機会が増え、次第に家事や育児が疎かになっていく。
最後まで鑑賞し続けるのが辛かった。
退屈って意味じゃない。
画面上で行われている内容がとにかく残酷すぎて、鑑賞に堪えられない。
猟奇的なシーンがあるわけでもないのに。
印象的な箇所は、非常に多かった。
第一に、ナレーションや説明っぽいセリフが一切ない。
キャラクターの言動のみで内容が語られる。
例えばオープニング。
主人公である母親の由希子がパンツを脱ぎ、こびりついた血を洗うシーンから、本作は始まる。
生理を忘れるほどに、家事に忙殺されている悲惨な現状を、このシーンは示している。
次に、由希子が家に帰ってきた夫に夜の営みを求め、拒絶されるシーン。
つまり、夫婦仲が冷めきっていて、離婚間近を描いている。
他には、夜遅くに派手な風貌の高校時代の女友達が遊びに来るシーンも気分が悪かった。
この女友達は子供が寝ているにも関わらず、声は大きくてやかましい。
結果的に長女の幸が起きて由希子に甘える。
子供が目の前にいるのに、タバコを吸ったりと、自分本位で最悪な性格。
そんな女友達が「夜のお店で働いたら?」と誘う。
こんなクソみたいな女友達の紹介した仕事なんてろくなものじゃない。
だが、この日を境に、由希子は見た目が徐々に派手になっていく。
こんな感じで、説明をせずに描かれる。
もはや音声を切って、映像を眺めているだけで理解できるレベル。
そのため、ドキュメンタリックで異様なほど生々しい。
リアルすぎる上に、辛いシーンの連続でうんざりである。
特に辛かったシーンは、何日も母が帰ってこないのに長女の幸は一切、泣かない。
赤ん坊である下の子・蒼空が泣くのは仕方ない。
対照的に長女は、淡々と蒼空の世話をする。
恐らくだが、幸は信じているのだ。
いつかひょっこり母が帰ってくる未来を。
恐らく幸が泣くときは、限界を感じて、家の外の人に助けを求めたりするための時などだろう。
だが幸は絶対に泣かない。
この泣かない幸の強さや、母に対する期待が辛い。
できることなら、映画をこのまま中断して観た記憶を消したかった。
もう、この映画を二度と観ることはないだろう。
逆を言えば、そう思わせるくらいに観客の感情を動かしたということ。
映画として優れているという証拠でもある。
とんでもない映画。
トラウマになること必須である。
ただ、子供を産もうとしている夫婦には、観てもらいたい気持ちはある。
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子宮に沈めるの作品情報
■監督:緒方貴臣
■出演者:伊澤恵美子 土屋希乃 土屋瑛輝
子宮に沈めるを見れる配信サイト
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※2020年12月現在