■評価:★★★☆☆3.5
「怪物」

【映画】怪怪怪怪物!のレビュー、批評、評価
日本でもリメイクされた『あの頃、君を追いかけた』のギデンズ・コー監督の二作目となる。
いじめられっ子の少年、リン・シューウェイは、いじめっ子3人とともに、教師から独居老人の生活の手助けをする奉仕活動を命じられる。そこでリンらは2匹のモンスターに遭遇する。リンらは小さい方のモンスターを捕まえて、独自の「調査」と「実験」を始める。やがて、大きい方のモンスターが街で暴れ出すようになる。
青春ドラマ全開の『あの頃、君を追いかけた』に対して、真逆とも思える血みどろの青春ホラーとなる。
私は鑑賞前のイメージとして、てっきりシンプルなモンスター・パニック的なホラーかと思った。
実際に本作は、怪物が出てくるし、容赦なく人間の命を奪っていく。
だが、本作は思っていた以上に作家性の強さ(テーマ性の強さ)を感じた。
どういうことなのか。
本作のテーマは、『本当の怪物は誰なのか?』といった問題提起である。
主人公のリンはいじめられっ子の少年。
担任の先生に叱られ、リンはいじめっことともに、独居老人の面倒を見る。
その過程で怪物を見つけ、捕獲する。
人の命を奪いまくる怪物ではあるが、いじめっこたちは、怪物を拷問にかけるのだ。
怪物の歯を抜いたり、弱点である太陽光を浴びせて弄んだりなど。
こうなってくると、誰が本当の怪物(悪)なのかが不明瞭となるのだ。
まったく同じテーマで、真っ先に連想した映画は『凶悪』。
獄中のサイコ・キラーを取材していく山田孝之扮する主人公だが、どんどん自分自身の欲を満たすために悪に染まっていく流れ。
かなり見応えがある史実に基づいたノワール物。
『怪怪怪怪物!』のテーマに関心の強い人には強くお勧めしたい。
『怪怪怪怪物!』に関しては、違和感を覚えた箇所がいくつかある。
本作には、ディストピア的な世界観を覚えた。
違和感を覚えるくらいに、いじめっこや担任先生までもが醜悪に振り切った、狂った人間性を持っている。
こんな狂った人間たちの中で生きているという違和感が強烈だった。
さらに、警察があまり機能していない点も違和感を覚える。
凶悪な怪物(こちらはいじめっこではなく、実際の怪物のほう)は、普通の街の地下のようなところに住んでいる
腹が減ったら、老人たちを襲っている。
なのに、警察がぜんぜん事件として取り上げていない。
監督が狙っているのかは不明だが、ディストピア感を覚えた最大の理由が、この治安維持の不安定さ。
なので、漫画的な印象が強かった。
実際にこの監督は日本の漫画が好きらしく、本作はもちろん、前作『あの頃、君を追いかけた』でもドラゴンボールなど、少年ジャンプ漫画のネタが見られる。
個人的には、もっと治安維持などの設定は徹底して、リアルに描いて欲しかった。
とはいえ、学園物×モンスターパニックといったジャンルの組み合わせは新鮮で良かった。
モンスター・パニックものの傑作はコチラ。
■バード・ボックス
怪怪怪怪物!の作品情報
■監督:ギデンズ・コー
■出演者:トン・ユィカイ ケント・ツァイ ジェームズ・ライ タオ・ボーメン
■Wikipedia:怪怪怪怪物!
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):79%
AUDIENCE SCORE(観客):50%
怪怪怪怪物!を見れる配信サイト
U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2021年1月現在