■評価:★★★★☆4
「青春」

【映画】チワワちゃんのレビュー、批評、評価
1980年代から1990年代にかけて、優れた多くの作品を発表するも、作家活動の頂点にあった1996年に交通事故に遭い、作家生命を絶たれた漫画家・岡崎京子の原作漫画に基づいた実写映画となる。
岡崎京子の代表作は、『リバーズ・エッジ』『ヘルタースケルター』。
東京でパリピを行っていた若者グループがいた。その中のマスコット的存在であった女性が、東京湾でバラバラになった状態で発見された。残された仲間たちは、彼女との思い出を語りだす。しかし、その誰もが「チワワちゃん」と呼ばれた彼女の素性も、本名さえも知らなかった。
めっちゃ面白い青春映画だった。
青春映画の中でも、ユニークなアプローチだったし、最後は目頭が熱くなった。
最初はパリピのノリがかなりキツい。
私自身、パリピではないフツピ。
そのため、彼らがクラブで酒飲んで踊ってはしゃいでる世界観が、まるでハリウッド映画の学園物を見ているような、異世界感を覚えた。
私と同じように、ノリが良すぎる映画に距離を感じる人も多いのではないだろうか?
だが、図らずも、その距離感は一気に狭まることになる。
本作は、冒頭でパリピの中心にいたチワワが命を落とす。
雑誌記者から取材を受けたチワワとそこそこ距離の近い位置にいた主人公・ミキ。
ミキが、かつての友達たちを訊ね、チワワとの過去についてを回想する流れとなる。
本作は現在と過去の時間軸を交互に映していく。
本作で注視すべきポイントはチワワの描き方。
チワワ=青春の象徴として描いている。
チワワは仲間たちとの出会った日、クラブで600万もの大金を強奪する。
その金で、仲間たちみんなでパーティ三昧なのだ。
ものすごく楽しそうである。
だが、彼らの青春の絶頂期はここがピーク。
誰だって時の流れとともに、環境が変わる。
ヤンキーだって子供が生まれたら落ち着くし、遊び人も落ち着く日がいつか来る。
チワワはインスタを始めたことがきっかけで、有名人になる。
だが環境の変化によって人間関係で衝突が生まれる。
一瞬で昇ったスター街道だが、チワワはみるみるうちに奈落へと落ちて行く。
ここが切ない。
だって青春はそういうものだろう?
青春は永遠じゃない。
だから、青春時代は輝かしく、我々の記憶に刻まれる。
青春の象徴であるチワワは、映画が進むにつめて破滅に突き進む。
まるで、青春時代の終わる様を可視化しているのだ。
だからすごく辛かった。
見ていて切ない。
つまり、本作は冒頭で青春時代を卒業し、大人になった主人公等が、青春時代を回想するという内容となっている。
パリピという強烈なアッパー描写で青春を描いているから、青春時代の終わりがより切なく描かれる。
すばらしい脚本である。
個人的な好みではあるが。こういう、実態の内ものをユーモラスに可視化して描く話は素晴らしいと思う。
例えば、タイムスリップを可視化したテネットも素晴らしかった。
あるいはジョジョも超能力を可視化したスタンド描写が評価されている。
実態のないものを可視化して描く傑作はコチラ。
■TENET テネット
チワワちゃんの作品情報
■監督:二宮健
■出演者:門脇麦 成田凌 寛一郎 玉城ティナ 吉田志織 村上虹郎 仲万美
■Wikipedia:チワワちゃん