■評価:★★★☆☆3.5
「身近な人との交流」

【映画】二重生活のレビュー、批評、評価
直木賞作家の小池真理子の同名原作小説『二重生活』の実写映画化となる。
心理学を専攻する大学院修士課程の白石珠は、大学のゼミで知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「何の目的もない、知らない人の尾行」の実行を思い立ち、近所に暮らす男性・石坂の後をつける。そこで石坂の不倫現場を目撃し、尾行を続ける。
導入部分が完璧すぎるほど面白い。
理由もなく、見知らぬ人を尾行する。
何だかわからないけど、無茶苦茶、ワクワクさせられた。
ワクワクさせられた理由の一番は、幸せそうだから。
珠が尾行相手に選んだ石坂史郎は、分かりやすい豪邸に住んでいて、美しい妻と娘の3人で幸せそうな日々を送っている。
この何不自由のない、「人生の成功者」みたいな人をターゲットとして選択したのが良い。
幸せに見えるからこそ、裏側がブラックであればあるほど、傍観者である観客はワクワクさせられるから。
観客によっては、石坂の裏の顔を知ることで、ほくそ笑んだりもするかもしれない。
ただし、腑に落ちないところもある。
珠は尾行をして、論文を書くことで、成長したような描かれ方をしている。
果たして尾行をするだけで、人間は本質的な成長を遂げられるのだろうか?
私、個人の意見としては、死線をくぐれ、とまでは言わないが、成長にはある程度のリスク(痛みや苦しみ)が伴うと思っている。
筋トレと一緒で、負荷がかかるから成長する。
肉体的にも精神的にも、負担が軽いままで成長できるほど、人って甘くない。
だから、人を尾行するという、何のリスクもない行為が成長に繋がるとは思えないのだ。
人を尾行することで、何かしらの困難に巻き込まれ、その困難を突破したことで成長を描くなら納得できる。
だが、珠にはそれほどハードな展開を迎えたとは思えない。
あとは、テーマが難解。
物語自体は分かりやすいし、誰が観ても理解はできる。
だが、本作は、何を語りたいのかが、いまいち分かりづらかった。(私がアホなだけかもしれないが)
色々調べた結果、語りたいのは「身近な人との交流」だと思われる。
テーマを理解すると、冒頭が印象的に見える。
同棲相手の彼氏に求められて性行をする際、珠は「ゴムつけて」と言い放つ。
普通ではあるんだが、どこか温かみに欠ける冷徹さがある。
つまり、二人は同棲はしているが、心が通い合っていないのだ。
真に人と交流をするって難しい。
果たしてあなたは、隣にいる人と心を通じた交流ができているだろうか?
私は30代後半だが、この年になって、ようやく人との接し方の触りがわかってきたほどである。
身近な人との交流をテーマとする作品はコチラ。
■レスラー
■岬の兄弟
■スウィート17モンスター
■ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん
■万引き家族
二重生活の作品情報
■監督:岸善幸
■出演者:門脇麦 長谷川博己 菅田将暉 リリー・フランキー
■Wikipedia:二重生活
二重生活を見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2021年2月現在