■評価:★★★☆☆3.5
「金で得られるかりそめの幸せ」

【映画】紙の月のレビュー、批評、評価
『八日目の蝉』『愛がなんだ』の著者・角田光代原作、『パーマネント野ばら』『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督作品。
バブル崩壊直後の1994年。夫と二人暮らしの主婦・梅澤梨花は、銀行の契約社員として外回りの仕事をしている。細やかな気配りや丁寧な仕事ぶりによって顧客からの信頼を得て、上司からの評価も高い。何不自由のない生活を送っているように見えた梨花だったが、自分への関心が薄い夫との間には、空虚感が漂いはじめていた。そんなある日、梨花は年下の大学生、光太と出会う。光太と過ごすうちに、ふと顧客の預金に手をつけてしまう梨花。最初はたった1万円を借りただけだったが、その日から彼女の金銭感覚と日常が少しずつ歪み出し、暴走を始める。
胃がきりきりするようなストーリー。
真面目な主婦・梨花の、ちょっとした出来心でお客様のお金を1万円、拝借してしまう。
タガが外れ、横領を繰り返すのだが、金額がどんどんと膨れあがっていくという絶望的な展開。
しかも梨花の豪遊っぷりが容赦ないのだ。
出会った若い男の借金を返済してあげるわ、毎週末高級ホテルで豪遊するわ。
何なら男と密会用のマンションまで借りる始末。
いくらなんでも破天荒すぎる。
観客かしたら「いつバレてしまうのか」とヒヤヒヤしながら鑑賞することになる。
私はこの手の絶望一直線的な映画がどうも苦手。
というのも、私は共感性羞恥がある。
聞き慣れない言葉だろうが、この特徴を持っている人はかなり多いと思う。
共感性羞恥は、人より共感力が強い人を指す。
そのため、テレビ越しだろうと、恥ずかしい行動や緊張感のある場面に身を投じた人を見ているだけで、私の心臓がドキドキしてしまう。
例えば、バラエティのドッキリが分かりやすい。
仕掛け人に共感してしまって、観るに耐えられなくなってしまう。
つまり、サイコパスとは真逆である。
そのせいで、この映画はかなり心臓に悪かった。
幸せに向かうのならまだしも、絶望しかない未来の物語は救いがなくて辛いだけ。
だが、役者の演技は素晴らしかった。
宮沢りえの幸薄そうな雰囲気が絶妙。
真面目な彼女が豪遊するひとときの幸せを味わう姿は、痛々しくて仕方ない。
テーマが少し難解なのも引っかかる。
結局、この物語は何が言いたかったのかが、わからない。
恐らく「金ではかりそめの幸せしか手に入らない」といったことだろうが、もっと深いことを語っているようにも思える。
鑑賞後もテーマの詳細がわからず、もやもやが残る。
とはいえ、映画としてのクオリティは素晴らしい。
『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督作品なだけあって、作りが丁寧で、引き込まれる物語に仕上がっている。
観て損はないレベルの良作。
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紙の月の作品情報
■監督:吉田大八
■出演者:宮沢りえ 池松壮亮 大島優子 田辺誠一 小林聡美
■Wikipedia:紙の月(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):-
AUDIENCE SCORE(観客):66%
紙の月を見れる配信サイト
U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)、原作はコチラ
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2021年6月現在