■評価:★★★☆☆3.5
「異類婚姻譚」

【映画】シェイプ・オブ・ウォーターのレビュー、批評、評価
『パンズ・ラビリンス』『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ監督の2018年公開の作品。
本作は、第90回アカデミー賞では作品賞など4部門を受賞。
1962年の冷戦下のアメリカ。発話障害の女性イライザは機密機関「航空宇宙研究センター」で清掃員として働いている。アパートの隣人であるゲイのジャイルズ、仕事場の同僚で不器用なイライザを気遣ってくれるアフリカ系女性のゼルダに支えられ、平穏な毎日を送りながらも、彼女は恋人のない孤独な思いを常に抱えている。ある日、宇宙センターに一体の生物の入ったタンクを運び込まれる。清掃のために部屋に入ったイライザは、初めてその生物を直視する。生物は「半魚人」と呼べる異形の存在だったが、独特の凛々しさと気品を秘めた容貌をもち、イライザの心を揺り動かす。
世界観が素晴らしすぎ。
舞台は第二次世界大戦後の冷戦下のアメリカ。
だが、ただの戦時中ではない、どこかダークファンタジーな雰囲気が漂っている。
主な舞台となる研究所も、ただの古い研究所といった感じではない味あるレトロ感がたまらない。
主人公イライザの家の内装も、普通の古いアメリカの家とは異なる装飾品が多く観られた。
そんな中で、研究所に連れて込まれる半魚人。
宇宙開発のため、敵国ソ連アを出し抜くために半魚人を利用しようといった目的。
作家性を感じさせる独特な雰囲気の中で物語が展開されるので、最高である。
さすがは、『パンズ・ラビリンス』でダークな世界観を評価されたギレルモ・デル・トロである。
イライザが美人すぎないのも良かった。
話すことのできない聾唖の女性が主人公だが、若干、癖のある顔立ち。
確かにしゃべれないとはいえ、美人すぎると、恐らく、ちやほやされる経験も多くあるだろう。
そうなると、人生に対する苦労が感じづらくなる。
イライザに扮したサリー・ホーキンスのような一癖あるルックスだと、人生において、分かりやすい美人と比べたら特別扱いされる機会は少なそう。
そのため、観客も感情移入しやすい絶妙な采配である。
マイナスな点といえば、もう少しテンションの抑揚が欲しかった。
シナリオ自体は悪くないのだが、割と物語が平坦に進む。
もう少しスリリングな展開を多く挿入してくれたほうが、エンタメとして面白くなったと思う。
特に後半、半魚人のとある秘密が明かされるシーンがある。
この秘密はもっと早く明かして良かったと思う。
この秘密を用いた面白そうな展開が作れるため。
あと、本作はアカデミー賞の作品賞を受賞しているが、作品賞を取るタイプとは思えない。
アカデミー賞の作品賞を取る作品といったら、もっとその時代が反映された重厚なドラマを描いた映画の印象がある。
例えば、富の格差を描いた『パラサイト 半地下の家族』など。
だが、本作はただの異類婚姻譚である。
異類婚姻譚=人間と違った種類の存在と人間とが結婚する説話の総称。
恐らく、この年(2017年の映画の映画が対象となった第90回アカデミー賞)は爆発力のある作品が少なかったんだと思う。
『ダンケルク』『スリー・ビルボード』『レディ・バード』『ゲット・アウト』など。
『ゲット・アウト』は個人的には爆発力のある作品で個人的には好きだが、ホラー映画なので、やはり作品賞向きとは言い難い。
『スリー・ビルボード』『レディ・バード』は個人的には好きだが、パンチが弱い。
『ダンケルク』は単純に面白くなかった。
とはいえ、私は『シェイプ・オブ・ウォーター』は一本の映画として好みである。
原作物の作品が多い中、本作は良質なオリジナル脚本で鑑賞価値は高め。
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■オアシス
シェイプ・オブ・ウォーターの作品情報
■監督:ギレルモ・デル・トロ
■出演者:サリー・ホーキンス マイケル・シャノン リチャード・ジェンキンス ダグ・ジョーンズ マイケル・スタールバーグ オクタヴィア・スペンサー
■Wikipedia:シェイプ・オブ・ウォーター(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):92%
AUDIENCE SCORE(観客):72%
シェイプ・オブ・ウォーターを見れる配信サイト
U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)、○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2021年6月現在