■評価:★★★★☆4
「恋」

【映画】花束みたいな恋をしたのレビュー、批評、評価
『東京ラブストーリー』『Mother』『Woman』『最高の離婚』『問題のあるレストラン』『それでも、生きてゆく』などのTVドラマの脚本を多く手がける坂元裕二によるオリジナル脚本の2021年公開の恋愛映画。
2015年の東京。大学生の麦と絹は、ともに京王線明大前駅で終電を逃したことをきっかけに知り合う。ほかの終電を逃した人々を交えて深夜営業のカフェで語り合った二人は、その場に押井守がいることに自分たちだけが気付いたことで共感し合い、好きな文学や映画、音楽などのカルチャーにおける趣味の傾向がまるで合わせ鏡のようにマッチし似通っていると知る。
これは面白い。
ストーリー自体はものすごく平凡なのに面白い。
趣味の合う男女がたまたま駅で出会い、仲良くなり、付き合い、そんな中でもいざこがあり……といった、何の新しさのない展開である。
なのに面白いのだから不思議。
とはいっても理由は明白。
キャラクターが魅力的すぎる。
本作は、脚本家の力によるところが非常に大きい。
もちろん、演出した監督や、役者も素晴らしい。
だが、脚本家のキャラクター造形が本作のキモとなっている。
例えば、二人の仲良くなるきっかけは、「押井守」というマニアックな映画監督を見つけたこと。
この二人が出会った場には、もう1組、他の男女コンビがいる。
だが、二人だけは押井守を認知し、興奮していたのだ。
何なら女性のほうがその場では己の気持ちを隠し、後で男と二人きりになったときに、興奮したことを告白する流れが何だか良かった。
少し話は逸れる。
『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の「押井守」という監督は、映画ファンなら誰もが知る名匠。
だが、作家性の強い監督なので、興行収入を多く獲得できるタイプではないため、特に映画やアニメに興味がない人は知らないだろう。
あの、宮崎駿が唯一、知識量などを踏まえ、対等に話せる相手が「押井守」と発言したほどの存在感のある人物である。
他にも本作では、『ゴールデンカムイ』だったり『舞城王太郎』、ニンテンドースイッチの『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』など、小説家や漫画、ゲームのタイトルなど、多くのサブカルチャーの具体名が頻出する。
こういったサブカルの趣味が合ったため、二人は距離が縮まる。
このサブカルのチョイスが良い。
どこか万人が好むようなものとは異なる、「センス」が感じさせるようなものが多い。
(ゼルダなど、例外もある。だが、ゼルダは間違いなく名作)
押井守や舞城王太郎作品を好む人なんて、私は今まで生きてきて出会ったことがない。
あと、個人的に良かったのが、一般的に行われることを批判する理由の一致、といった感性の一致による距離の縮まる流れも良い。
例えば、カップルがイヤホンを片方ずつ耳につけて同じ曲を聴いていたら、「あのカップルは音楽が好きじゃない。なぜなら、イヤホンのLとRはそれぞれ他の音が流れている。つまり片方だけ聴いたら、それはもう別の曲だ」といった具合。
こういった二人の感性の造形、演出などが素晴らしい。
本作はキャラクターの魅力をひたすら見せる2時間、といっても過言ではない。
ここまで魅力的にキャラクターを造れる脚本家は凄いと思う。
シナリオを作る人には特におすすめしたい。
しかし、この手のストーリーのコンセプトが弱い映画って、売り方に困る気がする。
よく、この映画の企画が通ったものだなあと感心させられる。
普通の量産型キュンキュン系ではなく、変わった恋愛映画を見たい人はおすすめ。
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■オアシス
■劇場
花束みたいな恋をしたの作品情報
■監督:土井裕泰
■出演者:菅田将暉
有村架純
清原果耶
細田佳央太
オダギリジョー
戸田恵子
岩松了
小林薫
■Wikipedia:花束みたいな恋をした(ネタバレあり)
花束みたいな恋をしたを見れる配信サイト
U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2021年8月現在