■評価:★★★★☆4
「メディアの残酷さ」

2017年にマレーシアのクアラルンプール国際空港で起こった、北朝鮮の朝鮮労働党委員長・金正恩の実兄・金正男暗殺事件の真相に迫った2020年公開のドキュメンタリー。
2017年、マレーシアのクアラルンプール国際空港で北朝鮮の最高指導者、金正恩の実兄・金正男が殺された。暗殺者として捕まったのは、二人の若い普通の女性。暗殺の様子は空港の監視カメラにすべて納められ、そのいたずらのような“ドッキリ”映像は世界を駆け巡ることとなる。なぜ彼女たちは北朝鮮の重要人物を暗殺したのか?そもそも彼女たちはプロの殺し屋なのか?どのように暗殺者に仕立てあげられていったのか?
めちゃくちゃ面白いドキュメンタリー。
金正男(キム・ジョンナム)とは、現在、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の最高指導者である金正恩の実の兄貴である。
2017年2月13日午前9時頃、マレーシアのクアラルンプール国際空港で、金正男は何者かに暗殺された。
当時、日本のテレビでも、この事件に関するニュースで溢れかえっていた。
暗殺の実行犯とされるのが二人の女性。
当時の報道の印象からして、この二人の女性はとんでもない暗殺者、といった印象を受けた。
空港の監視カメラの映像も、命を奪ったあとの飄々とした女たちの様子が流されていた。
北朝鮮は心底恐い国だなあ、と思ったもの。
だが、本作を観ると、二人に対する印象ががらっと覆される。
あまりの衝撃の事実に、開いた口が塞がらなかった。
事実は小説より奇なり、なんて言葉があるが、まさにそれである。
何ならこの事件のためにこの言葉があるんじゃないかってレベルである。
まさか、こんな想定外な背景があったなんて。
この事実を知らない人は多いのではないだろうか?
私のような能動的にこの手の犯罪者のドキュメンタリーを見る人間は、事件の真実を知ることができる。
だが、ほとんどは事実を知らずに誤解したまま、生涯を終えてしまう。
なんて残酷な世の中なんだろうか。
メディアの闇に触れた気分である。
影響力のあるメディアは、毒にも薬にもなりえる。
内容はネタバレになるので伏せる。
本作は実行犯となる二人の犯行動機や、二人に関わった暗殺を指南した人間たち、そして、二人の裁判の様子が描かれる内容。
多くの国や人間の思惑が複雑に絡み合う。
登場人物も十人以上いるので、状況を把握しながらついていけるか心配だった。
だが、とても鑑賞しやすく編集してくれたのが嬉しい。
私は本作を観て、何だかどんよりとした気持ちになってしまった。
私にとって、夢を叶えるということは、法律に触れなければどんな手段でも取るべきだと考えていた。
だが、本作を観て、この考えを否定された気がしてしまったからだ。
実際の事件の結末って、あんまりハッピーでポジティブな結果にはならないなあと痛感させられる。
暗殺を題材とした作品のおすすめはコチラ。
■ゼロ・ダーク・サーティ
■哀しき獣
■ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦
■レッド・スパロー
わたしは金正男を殺してないの作品情報
■監督:ライアン・ホワイト
■Wikipedia:わたしは金正男を殺してない(英語)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):98%
AUDIENCE SCORE(観客):83%
わたしは金正男を殺してないを見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2021年9月現在