■評価:★★★★☆4
■読みやすさ:★★☆☆☆2
「革命という偉業はおそろしく大変」
【ノンフィクション本】コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だったのレビュー、批評、評価
コンテナによって物流に革命をもたらした実業家マルコム・マクレーンの自伝的内容で、2007年1月18日刊行のノンフィクション本。
【あらすじ】20世紀最大の発明品の1つといわれるのがコンテナ。コンテナの海上輸送が始まったのは1956年3月のことだ。アメリカの陸運業者マルコム・マクリーンは、コスト削減と交通渋滞回避のため運賃の安い沿岸航路に目をつけ、トラックから「箱」だけ切り離して船に載せるアイデアを思いつく。
日本最大の掲示板ウェブサイト『2ちゃんねる』を作ったひろゆきがYouTubeの配信で、おすすめ本として本作を挙げてきたので読むに至った。
切り抜きだけど、該当の動画は下記。
私が尊敬してやまないアニメ、映画評論を得意とする岡田斗司夫も勧めており、一本の動画でたんまり解説しているので、ついでに記載しておく。
タイトルの通り、物流の歴史において、コンテナの登場がとんでもない革命をもたらしたことを書いた本となる。
私は物流については仕事での関わりなく、まるで無知。
コンテナといえば、海外に輸出したり、あるいは輸入したりする荷物が詰め込まれた金属製のでっかい箱で、船で運んでいるといった程度は知っている。
生まれた頃から存在しているので、コンテナ以前の物流や我々の生活はどうだったのかは、考えたこともなかった。
コンテナが登場する1950年代以前は沖仲士という、海を越える荷物を船に載せたり降ろしたりする職業の人がたくさんいた。
大量の沖仲士が大量の荷物を運ぶのだから、とにかく時間がかかる。
また人件費もかかるので、当時は輸入品は輸送費だけで、とんでもない高額だったそう。
余談だが、沖仲士は雇用が不安定で、仕事を得るのは苦労がかかる。
中には次回の仕事を得るために、賄賂を渡す者までいたそう。
求人情報が無数に存在する今の時代からすると考え難い。
話を戻すが、コンテナが登場すると、無数の沖仲士は不要となり、一人のオペレーターによってコンテナの積み下ろしが行えるようになる。
時間、人件費、ともにぐっと下がったため、我々はコンテナの登場により、格安で輸入品を購入できる恩恵を得られた。
今の時代、輸入品の野菜や肉は、むしろ国産よりも安く買える。
近所のスーパーでは国産の豚肉の細切れは100㌘、138円で売っているが、『肉のハナマサ』で売っているカナダ産は100㌘、88円という破格。
海外ファッションサイトの『SHEIN』でも、ちょっと商品を買えばすぐに送料は無料になる。
またユニクロやGUなどのファストファッションは、製品のすべてが東南アジアで安い人件費で作られ、格安の輸送費で日本に運ばれるので、僅かな金額で服を買えるようになった。
世界で初めてコンテナを物流の世界に持ち込んだマルコム・マクリーンのお陰で、先進国に生きる我々は便利に過ごせるようになった。
マルコムは1934年に、ガソリンスタンドのオーナーから譲り受けたおんぼろトレーラーを使って小さな運送会社を立ち上げる。
野心に溢れるマルコムは次々と新たな契約を取り付け、会社の規模を拡大していく。
創意工夫の天才であるマルコムは新たなルートを手にするために邪魔になる規制を上手くくぐり抜けたり、コスト削減においても妥協することなく徹底的に行う。
1954年にはマルコムの会社はトラック運送業界において、全米最大級の1つに数えられるようになる。
すでにビジネスで大成功を収めたにも関わらず、マルコムは満足しない。
次第にトラックとはまるで無関係な海運に目をつける。
本作はもはや、コンテナを通じたマルコムの成り上がりの物語となっている。
海運の世界に入り、革新的なアイディアだと確信を持ってコンテナを持ち込んでも簡単には輸送費は安くならない。
多くの既得権益があの手この手で規制をかけ、マルコムの壮大な野心を阻む。
だが、マルコムは決して諦めることはない。
競争を歓迎するイカれた男はとんでもない手法を次々と繰り出して、コンテナの可能性を世界に見せつける。
詳細は伏せるが、マルコムの大胆な決断がすごすぎる。
またマルコムに関心させられるのは、マルコムが最も関心があるのは個人的な収入を追い求めるのではなく、あくまで社会の発展。
だからこそ会社が成功し、莫大な富を得ても野心が衰えることはない。
時には、かつて自分を痛めつけた連中の頼みにも、社会が豊かになるためならと、歯を食いしばって呑むこともある。
立派な、人間だと思う。
確個人的な利益のことだけを追う人間なら、ある程度、稼げたら引退するから。
マルコムがいたから、我々は海外の商品を気楽に購入することができる。
なぜマルコムの物語が映画化されないのだろう。
確かにコンテナは多くの仕事を奪った。
沖仲士側につく組織は、あの手この手を使って沖仲士の仕事を、守るためにコンテナを拒絶した。
まるで今の時代のAIの台頭である。
マルコムの物語は今の時代に制作するにも十分な理由があるので、アカデミー賞も狙えるテーマを含んでいる。
まるで無知なジャンルなので、読みづらさは否めなかった。
ひろゆきが好むだけあって、客観的なデータによる数字も多く登場する。
だが、説得力はあるし、好奇心が上回って次へ次へとページを捲らされる。
次はひろゆきのもう一冊のおすすめ本『銃・病原菌・鉄』を読もうと思う。
ノンフィクションのおすすめ作品はこちら。
■語られなかった皇族たちの真実
コンテナ物語 世界を変えたのは「箱」の発明だったの作品情報
■著者:マーク・レヴィンソン
■Wikipedia:マルコム・マクリーン
■Amazon:こちら
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