■評価:★★★★☆4
■読みやすさ:★★☆☆☆2
「異なる文明の発展を遂げる人類の謎に迫る」
【ノンフィクション本】銃・病原菌・鉄のレビュー、批評、評価
『文明崩壊――滅亡と存続の命運を分けるもの』『若い読者のための第三のチンパンジー――人間という動物の進化と未来』『危機と人類』の著者、ジャレド・ダイアモンドによる2000年10月2日刊行のノンフィクション本。
【あらすじ】なぜ人類は五つの大陸で異なる発展をとげたのか。分子生物学から言語学に至るまでの最新の知見を編み上げて人類史の壮大な謎に挑む。ピュリッツァー賞受賞作。朝日新聞〝ゼロ年代の50冊〟2000年~2009年に刊行された全ての本の第1位のに選定された名著。(Amazon引用)
2ちゃんねるの創始者、ひろゆきがYouTubeの配信で本書を勧めていたので読むに至った。
該当の動画は下記。
大して調べずに読んだのだが、ジャンル分けするならば世界史のサブジャンルである人類史に該当するか内容の本かと思われる。
人類はどのように進化し、どのように人口を増やし、どのように文明を築き、どのように他の国を征服していたったのか、といった文明を発展していく経緯を研究していく分野。
人類史本で最も有名なのは、ホリエモンを始めとする多くのインフルエンサーが勧める『サピエンス全史』だろう。
『サピエンス全史』は読んだことないのだが、『銃・病原菌・鉄
』はより、客観的な証拠に基づいた情報が書かれている。
そのため、情報量が凄まじく、およそ間違いない確信的な箇所においては断定口調で表現される。
証拠に乏しく、未確定な情報については、仮説立てはするが、『まだわかってはいない』と正直に記載しているので信頼出来る。
本の内容に話を戻す。
冒頭、アメリカ人の著者と交流のあるパプアニューギニアのヤリという政治家が放った質問が書かれる。
『あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜだろうか?』
今のアメリカ合衆国を築いた人種は、元々はアメリカ大陸を開拓したヨーロッパ人。
ニューギニアはほんの百年弱前まで、なんと石器を用いて生活する狩猟民族だった。
メソポタミア・エジプトでは石器を卒業し、青銅器の時代が突入したのは紀元前3000年。
つまり5000年ほどの開きが存在している。
今では宣教師等の助けがあって文明が発展していったが、なぜヨーロッパ人とニューギニアはここまで築きた文明に差が生まれたのだろうか。
ヤリの疑問を主たる命題とし、本著は狩猟を卒業し、自らの農耕を始めた肥沃の三日月地帯を持つユーラシア大陸や中国などや、あるいは文明の発展が遅れたニューギニアなど、あらゆる視点から原因を深掘り、答えを導き出していく。
めちゃくちゃ興味深く読めた。
確かにヤリの質問は分かる。
本著にも言及されているが、人種的によって知能の差があるから、文明の発展に差異が生まれた、といった差別的な考えを持つ者もいる。
(実際に白人や黒人やアジア人とでは、DNA的に知能に差があることを明かしている橘玲著による『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』もある。あなたが興味があれば手に取ってもらいたい)
だが、著者はそう言った短絡的な考えを疑い、徹底的に客観的な情報のみを駆使して真実を突き止めようとする。
実際に人種ごとに知能に差があっても、個体ごとに差はあるので、著者の行動はまともだと思う。
興味深かったのが、農耕という作業が最も重要だということ。
狩猟採集民族と農耕民族のうち、食料を安定的に生み出すには、農耕民族になるしかない。
食料がないと、人口が増やせないからだ。
狩猟採集民はその日に食べる動物を狩り、木の実や食べられる植物を得る。
対して食料を生産することで初めて余剰食物を持てる。
非食料生産者を食わせることができ、人口を増やして複雑な社会構造を構築し、大勢の人間を管理することができる。
狩猟採集民族は余剰食物を持つことが難しく、そうなると多くの住民が食料を取るための仕事に従事するので、子供をたくさん持つのは不可能に近い。
そのため、狩猟採集民族は人口は少ないし、社会構造もシンプル。
こういった情報を具体的な情報を提示し、細かく教えてくれる。
もちろんヤリへの答えもビシッと解答するし、タイトルの意味も割と早い段階で明かされる。
病原菌の役割はまるで知らなかったので驚かされる。
個人的には衝撃の内容だったので、本著を読んで直接、確かめてほしい。
本著の引っかかる箇所としてはとにかく読みづらかった。
英文をそのまま直訳したような内容で、否定形の言葉が多いのが辛い。
否定形が多いと、スムーズに読むことができずに引っかかりやすくなる。結果的に読了に時間がかかる。
1文で否定形が3つ入ったときは、ため息を吐いた。
また同じ情報が繰り返し提示される文章のかさ増し感も辛い。
しつこく言ってくれるから記憶に定着するのはあるが、あまりに繰り返しが多いので、若干うんざりする。
とはいえ、読む価値はある名著だった。
ひろゆきが本著をおすすめする理由に納得。
ぜひとも『サピエンス全史』も手に取りたい。
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