■評価:★★★★☆4
■読みやすさ:★★☆☆☆2
「皇族の尊さ、保守の価値の高さ」
【ノンフィクション本】語られなかった皇族たちの真実のレビュー、批評、評価
旧皇族、竹田宮家出身の竹田恒泰による2005年12月1日刊行のノンフィクション本。
【あらすじ】若き末裔が明かす「皇族論」、電子版で登場曾祖母は明治天皇の第六皇女昌子内親王。祖父はスポーツの宮様として知られた竹田恒徳。祖母は三条実美の孫娘。著者は、明治天皇の玄孫として、旧皇族・竹田家に生まれた。 (Google Books引用)
個人的に皇族について少し知識をつけたかったので、本著を手に取った。
私は皇族の知識はまるでなかったので、初心者向けの本を探していた。
Amazonで検索をかけたところ、本著は自分が確認した限りだと、皇族関連の書籍でレビューの数が最も多く入っていた。
また著者の竹田恒泰は明治天皇の玄孫で、過去に歌手の華原朋美と交際は報道があったりと、テレビ等のメディアで知っていたのも購入の決め手にもなった。
2024年現在、『推し』といった言葉が広まっている時代のせいか、多くの人が推し活を楽しんでいる。
漫画のキャラやアイドル、韓国人歌手など、推される対象は多岐にわたる。
以前『恋人たち』という映画に出てくる冴えない日々を送る中年女性が皇后の雅子様を推している人もいる事実を知り、個人的に皇族に対する見方が変わった。
確かにメディアにも日々登場し、日本の象徴として外交活動を行う皇族も、推される対象になるのかと。
また推す人がいる以上、何かしら魅力があるはず。
皇族について、好奇心が強くなっていたので、期待して本著のページを捲った。
冒頭、著者は本著の主題の一つである、天皇には男系継承が重要である旨を強く主張している。
本著は2006年1月に刊行されている。
執筆していたときには、皇族には男性の子供が四十年生まれていなかったそう。
そのため皇族のルールについて話し合う皇室典範改定議論の中で
、当時の小泉首相をはじめとして『女系天皇』を認めるべきではないか、といった議題が上がった。
男系継承とは、男性天皇の血を引き継いだ男性が皇位を継承する、というもの。
実際には女性天皇が立てられた特例の過去もある。
だが、まだ幼い男系皇太子の成長を待つため、などの中継ぎ的立ち位置だったそう。
そのため、今のところ皇族の2000年の歴史の中で、男系継承は途切れることなく行われている。
確かに、小泉首相が女系天皇を推奨する意味はわかる。
私も皇族に詳しくないので、別に天皇の娘が継承しても良いじゃん。と思える。
今の時代でいうなら、愛子さまが継承するなど。
しかし筆者は、男系継承の尊さ、凄みを多くのページを割いて解決する。
すべて読んでみて、男系継承にこだわる理由に納得した。
過去の皇族の歴史を遡ると、男系継承の困難に3回、直面している。
当時の政府や皇族関係は頭を捻り、ギリギリのところで男系継承を達成している。
例えば、現在の天皇からかなり遠い、2代前の天皇まで遡り、その孫の男子を時期天皇にし、血を濃くするために現在の天皇の娘と結婚させるなどの、もはや人権を無視するような方法でクリアをしていた。
凄くないだろうか。
過去にはみんな一丸となって、しきたりに拘り、大きな関門を突破している。
本著を読んで改めて実感する。
皇族に人権なんてない。
生まれてからずっと、日本国民の象徴として生きなければいけない運命を背負った特殊な集団。
そのため、私は心から皇族ではなく、一般人として自由を謳歌できる一般人として生を受けて心から良かったと思う。
皇族には自由なんてないのだから。
さらに印象的だったのは、著者は皇族という存在に関しては革新ではなく、保守の価値の高さを強く訴えている。
確かに今の時代の生き方として、新しいことにチャレンジすること良しとしている。
新しいテクノロジーであるAIなどを積極的に取り入れるからこそ、他の人を出し抜く成果が得られる。
だが皇族は例外だ。
過去に作られた男系継承をはじめとしたルールを守り続けるからこそ、価値が生まれる。
イギリスなど、ヨーロッパの王室では早いうちに男系継承を断念しており、普通に女王が誕生している。
男系を2000年以上も守って継承しているのは日本だけなのだそう。
ここまで来たら何千年、何万年と、ずっと保守的に過去のルールを守り、継承し続けてほしい。
本著は専門的な内容を平易な文章で作られているとのことで、
山本七平賞という栄誉ある賞を受賞している。
初心者向けにしては専門用語も多く、やや難解だった。
説明もないのでKindleの辞書を駆使しながら読み進めていった。
読書慣れしていない人には読了は厳しい印象があるが、皇族の見方ががらっと変わるので、日本国民には勧めたくなる。
特に後半に、描かれる太平洋戦争時の皇族たちの勇敢な動きには目頭が熱くなる。
しかし、巻末に書かれている参考資料の量に驚かされるが、めちゃくちゃ調べて丁寧に作り上げたんだろうなと思う。
賞を取るのも納得の素晴らしい本だった。
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