■評価:★★☆☆☆2
「地球外生命体の恐ろしさ」
【映画】エボリューションのレビュー、批評、評価
『ゴーストバスターズ』シリーズ、『Gガール 破壊的な彼女』のアイヴァン・ライトマン監督による2001年11月3日公開のSFコメディ映画。
【あらすじ】アリゾナ州の砂漠に隕石が墜落する。翌日、近くの大学で生物学を教えるアイラと地質学を教えるハリーの二人が現場へ出向き、そこで採取した不思議な液体から地球上に存在しない構造を有したDNAを発見する。
『おすすめ コメディ映画』でGoogle検索したところ、本作を挙げるブログ記事があったので鑑賞に至った。
2000年代初頭に『虎ノ門』という生放送のバラエティ番組があった。
演技派の俳優、沢尻エリカを見出しブレイクさせた映画『パッチギ!』の井筒監督が、自腹で映画鑑賞し、辛口でコメントするコーナー「こちとら自腹じゃ」を目玉としていた。
他にも「うんちく王」「しりとり竜王戦」などのお笑い企画も多く、当時のお笑いファンの多くが観ていた伝説的番組。
当時の私は、毎週、「こちとら自腹じゃ」を楽しみにしていた。
というのも、それまでの私は映画館で上演される映画は楽しいか、つまらないか、の単純な二択の感想を述べるのが普通だと思いこんでいた。
両親や兄貴や周りの友達たちに特別な映画ファンはおらず、映画について深い語ることはなかった。
だが、井筒監督は映画監督としての視点から、自腹で鑑賞した作品に対し、面白い理由やつまらない理由を、過去の名作と比較したり、あるいはモチーフとなる実際の事件やその背景を元に語る所謂「批評」と呼ばれる行為を披露していた。
初めて目の当たり文化に無知の私は知的好奇心が刺激され、興奮したした。
また井筒監督の忖度無用の歯に着せぬ物言いはパンチがあり、格好良い大人、といったイメージもあった。
本作は当時の「こちとら自腹じゃ」で取り上げられ、井筒監督には特に酷評されていた作品なので、鑑賞リストから外していた。
正直、罵詈雑言を食らわす作品には「何をそこまで目の敵にするのか」と、逆に興味が湧いたりもする。
だが、当時の私は駆け出しの映画ファンで、鑑賞したい旧作も多かったので、酷評まで鑑賞する暇がなかった。
映画ファンを長くやっていると、井筒監督は主観が強く、やや偏りのある批評をしていた事実に気づき始まる。
『ブラックホーク・ダウン』など、井筒監督が酷評して面白く感じた作品もあったため。
ただ、『ブラックホーク・ダウン』を井筒監督が酷くけなした理由は納得できる。
戦争映画なのだが、様々な事情から発生する戦争はどちらが悪でどちらが正義かを判断することはほぼ不可能。
にも関わらず、『ブラックホーク・ダウン』は敵側のソマリア兵の心情が一切描かれず、アメリカ軍賛美のような内容になっていた。
両陣営を対等に描けなかった監督のリドリー・スコットに、井筒監督は腹を立てていた。
だが、スリラー映画として観ると緊迫感が強烈で、ついBlu-rayまで購入するほど個人的には好きな作品。
脱線したので戻すが、色んな理由が相まり、2024年現在ようやく本作を手に取った。
地球外生命体と聞くと、色んなイメージが浮かぶ。
見た目でいえば、人型のグレイと呼ばれる映画『ET』にも出てきたタイプ。
あるいは目視の難しい微生物タイプも存在する。
作品でいえばジェイク・ギレンホール主演の『ライフ』が該当する。
また、性格や孕む欲望も作品によってそれぞれ。
地球人に対して友好的の場合もあれば、地球を乗っ取ろうとする悪の地球外生命体パターンもある。
本作は微生物タイプの悪の地球外生命体と戦うコメディ作品となる。
地球外生命体が恐ろしく描かれていて、先の展開を期待させてくれた。
特に怖いと思ったのが、増殖速度と成長速度の速さが挙げられる。
本作の地球外生命体微生物は、主人公の生物学の大学教授が顕微鏡でしばらく観察しているだけで次々と分裂し、増殖していく。
更に進化の速度もえげつない。
地球が誕生したのは46億年前で、人類が誕生したのは20万年前とされている。
つまり、46億年弱かけて、微生物は人類へと進化を遂げている。
だが、本作の微生物はわずかな時間で鳥類やら霊長類に進化を遂げていく。
あっという間に人類は制圧されそうで怖すぎる。
そもそも速い存在って怖くないだろうか。
代表格は、名前も口にしたくないG。
あと『水曜日のダウンタウン』という番組がある。
様々な説を検証する癖のある人気のバラエティ番組。
2023年頃の放送だったと思うのだが、『メシ屋で提供が早すぎたらそれはそれでおっかない説』が放送された。
芸人コンビのかみなりのまなぶがドッキリのターゲットに仕掛けられる。
仕掛け人の先輩は遅れている体で、「適当に頼んでおいて」と電話で頼まれ、まなぶが注文する。
すると注文している最中に、今注文したばかりの「ビール」や「チキン南蛮」などのメニューが運ばれてくる。
ビールは分かる。
だが、「チキン南蛮」とか、一体どうやって調理しているのか。
あまりの恐怖にまなぶの顔がみるみるうちに蒼白していく。
最近、改めて見て、最高に面白かった。
話は逸れてしまったが、速いって怖い。
本作は敵の恐怖を見事に描いていた。
だが、結論から言うと、本作はまったく楽しくなかった。
そもそも期待していたコメディ要素が弱い。
キャラが随所に繰り出すボケが弱くて破壊力に乏しい。
少し前に記事にした、アイヴァン・ライトマン監督の息子のジェイソン・ライトマン監督が手がけた『ゴーストバスターズ/アフターライフ』はユーモアな会話劇が遥かに面白く、本作と比べると天と地の差だった。
そのため、キャラクターの魅力も皆無。
お調子者だったたり、あるいは無能なおバカキャラも出てくる。
だが、一つ一つのボケが笑えるレベルに達していないので楽しさはない。
20年越しに、本作における井筒監督の批評の正しさを実感した。
ユーモラスな会話劇が最高なコメディ作品のおすすめはコチラ。
■ゴーストバスターズ/アフターライフ
エボリューションの作品情報
■監督:アイヴァン・ライトマン
■出演者:デイヴィッド・ドゥカヴニー
ジュリアン・ムーア
オーランド・ジョーンズ
ショーン・ウィリアム・スコット
■Wikipedia:エボリューション(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):44%
AUDIENCE SCORE(観客):48%
コメント