小説『異常【アノマリー】』ネタバレなしの感想。何の繋がりもない11人が遭遇する異常

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■評価:★★★★☆4
■読みやすさ:★★☆☆☆2

「●●と遭遇するそれぞれの人間心理や言動の面白さ」

【小説】異常【アノマリー】のレビュー、批評、評価

フランス人小説家のエルヴェ・ル・テリエによる2022年2月2日刊行の小説。

【あらすじ】殺し屋、ポップスター、売れない作家、軍人の妻、がんを告知された男……なんのつながりもない11人だったが、ある飛行機に同乗したことで、運命を共にする。飛行機は未曾有の巨大嵐に遭遇し、乗客は奇跡的に生還したかに見えたが――。ゴンクール賞受賞作( Google Books引用)

私が尊敬する『メタルギアシリーズ』『デス・ストランディングシリーズ』のゲームクリエイター、小島秀夫監督が本書の帯等で本作を勧めていたので読むに至った。

小島秀夫監督は映画、小説に造詣が深い。
小説に関してはゲーム制作等で忙しいときでも年間100冊は読む筋金入りの読者家。
彼の小説愛については下記の動画で確認できるので、ぜひ鑑賞してもらいたい。

また、小島秀夫は独特の作家性による尖ったゲーム作品を多く生み出している。
彼の作家性・精神性を形作ったエンタメたちを紹介した書籍『創作する遺伝子―僕が愛したMEMEたち―』は非常におすすめ。

彼のゲーム作品や、おすすめするエンタメはびっくりするほどに外れがなく、また接触する価値の高さを感じさせる傑作ばかりなので、私は彼の言葉に絶大な信頼を寄せている。
そのため、本作も期待して読ませていただいた。

本作の感想に話を戻す。
結論から書くが、最高だった。
命を奪う裏稼業に従事する男、ブレイクの一人語りから物語は始まる。
仕事に対して、あるいは好きなコーヒーについて等、あらゆる物事に徹底した拘りを持つ男で、ブレイクがいかに一流の仕事人であるかがひしひしと伝わってくる。
特にブレイクの信念には哲学的な深みがあり、キャラクターとしても魅力的に映る。

次にミゼルという小説家の視点に変わる。
どうやら、ミゼルは自ら命を絶とうとしている様子。

シングルマザーのリュシーが、年上彼氏であるアンドレに対して不満を語るシーンが描かれるのはその次。

性別、年齢、国籍等がまるで異なる視点人物たちが矢継ぎ早に描かれるのだが、まるで関連性が不明瞭。
強いて挙げるなら、どうやら全員、二〇二一年三月二十一日、パリからニューヨーク行きの飛行機に乗った模様。
上空で乱気流に見舞われたが、無事にニューヨークに辿り着いている。
同じ便の飛行機に乗った以外の目立った共通点はないし、当然、直接的な関係性もない。

あまりに先が読めない展開のため、若干ページを捲る手は遅かった。
だが、1/3ほど読み進めた辺りで、唐突にとんでもない展開に頭をぶん殴られる
あまり異常な状況に襲われており、理解が追いつかず、3回、読み返して何とか整理できた。

本当に凄いアイディアだ。
一体、ここからどんな結末を迎えるのか全く予想できず、ここから、読むスピードは加速させられる。

本作は斜め上を行く展開が多いので、あまり調べずに読むことをおすすめする。
ただ、すごいことが起きる、と私がどれだけあなたの期待値を上げても必ず乗り越えてくる。
そのくらい衝撃が強い。

強いていうなら、『アイアムアヒーロー』の一巻を思い出した。
個人的には漫画史に残る演出だと思っており、後に影響下にある漫画はいくつか読んだ記憶がある。

ネタバレしないように語るとすれば、純文学として書かれているのが意外だった。
エンタメに舵を切ることも可能な展開だが、文芸寄りにしたのも良かった。
あらゆる状況下の人間を緻密に描いているので、それぞれのキャラクターが各々どんな選択、決断をするのか、興味深く読めた。

久しぶりの純文学も悪くないなと思った。
ただ、エンタメ作品とは異なり、知的で哲学的な描写がかなり多いので、読み応えはありつつも、改行の少ない詰まった文字と相まって読むのにかなり時間がかかった。
400ページの作品だが、読了まで丸々2週間かかった。

ただ、純文学が苦手な人にも手に取ってほしいおすすめ作品。
またしても小島秀夫監督おすすめに外れがない証明がされた。

斜め上を行くシナリオが面白いおすすめの傑作はコチラ。

■プロジェクト・ヘイル・メアリー

異常【アノマリー】の作品情報

■著者:エルヴェ・ル・テリエ
■Wikipedia:エルヴェ・ル・テリエ
■Amazon:こちら

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。休みの日は映画、読書を楽しみつつ、エンタメ小説を書いています。腹括って執筆しているので、応募した新人賞に落ちると絶望してます。

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