配信ドラマ『ブラック・ミラー season1』ネタバレなしの感想。近未来の希望と絶望がユーモラスに描かれる一話完結SFドラマ

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■評価:★★★☆☆3.5

「近未来の希望と絶望」

【配信ドラマ】ブラック・ミラー season1のレビュー、批評、評価

Netflixで配信されている『おすすめドラマ』をネット検索すると、多くのドラマ・映画ファンが本作を挙げている。

内容としては、一話完結のSFドラマ。
我々が住む現代より少し先の近未来の希望や絶望がユーモラスに描かれている。
イメージとしては『世にも奇妙な物語』のSF版、といった感じ。

本作は2024年の時点でシーズン6まで制作されているが、一話完結なので、軽い気持ちで鑑賞できた。
ストーリーがすべて繋がっている場合、次のシーズンが配信される頃には、それまでの内容を忘れてしまったりと色々と面倒なので。
しかもシーズン1は全3話と短めなのも良い。

■1話 国歌 ★★★☆☆3.5

【あらすじ】国民に人気抜群のスザンナ姫が誘拐された映像を見せられた英国首相。ツイッター文化を背景に犯人探しが始まる。 犯人は誰なのか、そしてその目的は?

個人的にはシーズン1の中で一番好みの話だった。
誘拐犯からは「スザンナ姫を返して欲しかったら、首相が豚と1つになる様子を地上波、衛星の全チャンネルで生放送しろ」とイカれた交換条件を提示される。

犯人は大きなリスクを負うのだから、普通は金とか、誘拐犯側にメリットのある要求をするもの。
だけど、豚と1つになる映像の公開なんてばかげてる。
現実離れしていて、いかにもドラマらしいというか、ユーモアに長けていて心を掴まれた。

当然、首相周りは「首相にそんなことをさせられない」といった意見の一致に至る。
ネットの民意も首相に同情的な感情を持つ人が多く、政府は生放送を切り抜けるため、様々なアプローチを検討、実施していく。

だがしかし、とあるトラブルによって民意が逆転する。

本作を観ていると、民主主義国家の政治のトップって民意によってこうも振り回されるのか、といった滑稽さや、民主主義の欠陥を感じさせられる。

日本でもネットの民意の声の大きさが政治はもちろん、特に芸能界は大きな影響を及ぼすことがある。
本当に民意に従うことが正義であり、正しい行いなのだろうか。

シリアスなテーマがユーモラスに、また短い時間でコンパクトに描かれていたので非常に見やすかった。
本作シリーズの特徴であるSF感は、本作は最も乏しいが、特に問題なく楽しめた。
あまり細かいところは説明されないので難易度は高め。

■2話 1500万メリット ★★★☆☆3

【あらすじ】極度の管理社会で暮らす人々の唯一の脱出手段はオーディション番組に出演しスターになること。しかし優勝者には 予期せぬ残酷な状況が待っていた。

冒頭、モニターの壁に囲まれた3畳程度の小さな部屋で、主人公の黒人の男が目を覚ます。
閉塞的な空間ではあるけど、何も無い空間で手を振ったら壁に映される目覚まし時計として鳴くニワトリが姿を消したり、テクノロジーの進化で便利になっている世界観は強く興味を惹かれた。
いくつか気になるウチの1つが、何かをするたびに、モニターに表示されている約1500万ある数字が減ること。
例えば洗面所で蛇口のようなところから出てくる歯磨き粉を使うと10くらい減る。
頻繁に消費を煽ってくる画面に流れる広告をスキップすると500程度減る。

どうやらこの世界では【メリット】と呼ばれる数字(金のようなもの)を、謎のエアロバイクで漕いで稼ぎつつ、生活のためにメリットを消費して日々を過ごしているよう。

主たる娯楽も部屋やエアロバイクに表示されるモニターから提供されるゲームや謎のバラエティ番組。
食事もリフレッシュルームで自動販売機で購入できるもののみ。
ひどく退屈そうで、やっぱり閉塞的で退屈そう。

この世界ではテレビ番組が主催するオーディションに合格すると、どうやら今の暮らしから解放され、さらに自由度の高い生活が送れるそう。
しかし、参加には高額なメリットを消費する。
一体、主人公はどんな未来が待っているのか。

世界観が分かりやすいので、興味深く鑑賞できた。
でもツッコミどころが多いというか、あまりにディティールの描写が甘すぎる。
何で、人類はこんな閉塞的な生活を強いられているのか。
なぜ、ドルではなくメリットなのか。
外の世界はどうなっているのか。
テレビ番組を持っている連中は権力を持っているのだが、テレビを作るための金はどうやって手に入れているのか。
何で権力を持つのがテレビ側の人間なのか。
なぜ、メリットを稼ぐ手段がエアロバイクなのか。(何で電力が価値をもたらしているのか)

世界観自体はユニークで良いんだけど、設定の脆弱な部分が気になって、どうも楽しみきれないところがあった。

主人公もあんまり魅力的には見えなかったので、結末を見ても特に感情が動かされることはなかった。

■3話 人生の軌跡のすべて ★★★☆☆3

【あらすじ】時は近未来、自分の記憶をすべて録画再生できるチップを体に埋め込み、他人との交流にも利用する人々。しかし過 去の思い出がもたらす悲劇とは…?

最も万人受けする分かりやすい話だった。
記憶の録画再生のイメージとして、登場人物達は五百円玉程度のサイズの小さなリモコンを操作し、モニターに出力して自由に記憶映像を観ることができる。
日付で自動でチャプター分けされている感じ。

2話目の『1500万メリット』と比べて、近い未来が描かれているし、一度見たものがすべて動画として録画される世界なんて想像しただけで希望に詰まってる。

この世界観を成立させるには多くの問題がある。
真っ先に思いついたのが、異性との営みである。
劇中内でも「誰だって過去のベスト営みを再生して楽しむことはあるだろう」と、ジョナスという男のキャラが言及している。
しかし、反対する連中はいないのだろうか。
相当な変わった人間でない限り、自分の営みを相手に録画されるのは抵抗を示すだろう。

何でも録画される世界は、現実には倫理的に許されないだろうな、と思う。
例えば記憶動画は1週間で自動削除される、といったルールが制定されても、必ず外部記憶領域に保存する連中も出てくるだろうし。
秘密を抱えられないプライバシーが存在しない世界は、現実的に考えると、実現が難しい。
このぶっ飛んだ世界観を受け入れるには、観客は少しバカになって付き合ってあげる必要がある。

すべてを享受した上で鑑賞したが、結末は概ね予想通りだった。
言わずもがな、希望を得るからには絶望の代償を払わなければならない。
ただ、敢えて物語にしなくても、多くの人はこの話で描かれるテーマに一度は直面したことがあるだろう。

つまり、恋人の浮気を暴いたって、不幸な結末しか待っていない。である。
やっぱりある程度の秘密は人が生きる上で重要だと思う。
忙しない生活の中で、自分の世界に浸る一時は最高の愉悦だから。

とはいえ、ドラえもん的なライトなSF世界はユニークではあるので、そこそこ楽しめた。

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ブラック・ミラー season1の作品情報

■Wikipedia:ブラック・ミラー
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):98%
AUDIENCE SCORE(観客):93%

ブラック・ミラー season1を見れる配信サイト

Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
Netflix:○(見放題)
※2024年10月現在

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。休みの日は映画、読書を楽しみつつ、エンタメ小説を書いています。腹括って執筆しているので、応募した新人賞に落ちると絶望してます。

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