■評価:★★★★☆4
「古い家の怖さ」
【映画】劇場版 ほんとうにあった怖い話 変な間取りのレビュー、批評、評価
今年、劇場版が制作されて世間的にも、かなり話題になった小説『変な家』がある。
もともとは『オモコロ』というエンタメWEBサイトに、作者の雨穴が『【不動産ミステリー】変な家』というホラーミステリー記事をアップした。
URLは下記。
パッと見ると何の変哲もない間取りが、よく見ると実は奇妙だよね。
といったコンセンプトで謎解きしていく内容。
この記事が評判が良かったのが、雨穴自身が運営するユーチューブに映像版の変な家が公開され、話題となる。
URLは下記。
2024年10月時点では2347万回再生されているモンスター動画。
映像版の続きが描かれた完全版とも言える小説版『変な家』も大ヒットし、劇場版まで制作されるに至った。
話を戻すが、本作はタイトル詐欺であり、『変な家』とはまるで関係ない。
私は知らなかったのだが、『劇場版 ほんとうにあった怖い話 事故物件芸人』シリーズという作品群があるらしい。
一般投稿で寄せられた恐怖体験をもとに描くオムニバスホラーで、本作は続編的な立ち位置となる。
売れた変な家に図々しく便乗する商売っ気たっぷりのタイトルで、正直、舐めて鑑賞した。
地にめり込むハードルの低さが功を奏したのか、意外と面白くてかなり好みだった。
◆エピソード1 禁じられた部屋 ★★★★☆4
【あらすじ】2002年の出来事。ある民宿へ旅行に訪れた若い姉妹、エミとサエは、古びているものの広々とした宿で心躍っている。持ち込んだビデオカメラで撮影しながら室内を探索していると、2階の奥の部屋が立ち入り禁止になっていることに気づく。間取り図にも記載されていないようで、どうやら物置として使われているのだろう。テープで目止めがされているその部屋は不気味で、エミは少し恐怖を感じている…。(公式サイト引用)
いわゆるフェイクドキュメンタリー形式のホラーである。
ドキュメンタリータッチで作られたフィクションで、姉妹が撮影したホームビデオをそのまま流した設定の映像。
冒頭から不気味。
築年数が経った古い家の民宿に泊まるのだが、家の中は暗いし、家具などの調度も古い。
いかにもおじいちゃんおばあちゃん家、といった不気味さがある。
おじいちゃんおばあちゃん家って怖くなかっただろうか。
私は別に恐怖体験はなかったのだが、便所は和式だったし、風呂も古いタイル張りの、いかにも昭和初期に建てられた感じ。
2階にあった和室はやけに暗くて、物置のように物に溢れていた。
何かやばいものが潜んでいるような不穏さがあって、あまり2階には近寄りたくなかった記憶がある。
話を戻すが、そんな古い家を姉妹は探索していると、障子がガムテープで密閉された開かずの間を見つける。
本当に最悪の家。私なら即帰宅。
二人は日中、バーベキューを楽しむのだが、嫌なものがチラチラと映り込んでくる。
姉妹は気づかず。
マジで泊まってたまるか。
そして夜を迎える。
いやー、たった10分ちょっとの作品だったけど、かなりクオリティの高いホラー作品に仕上がっていた。
特に最後に登場するあの鏡はどうなってんだって感じ。
ネタバレになるので詳細は伏せるが、あの理解不能な怖さは個人的には新鮮だった。
誰か意味を教えてほしい。
◆エピソード2 話し相手 ★★★☆☆3
【あらすじ】2023年の出来事。妻を失った亮太は、深い悲しみと孤独の中、或る一軒家で暮らしていた。ある日、ふと見たテレビ番組でAI(人工知能)と会話するアプリの存在を知り、試しに使ってみることに。AIに妻の名前と同じ“みすず”と名付ける亮太。最初は抵抗があったものの、みすずとの会話は次第に彼にとって唯一の慰めとなっていく。しかし、それは悲劇の始まりだった…。(公式サイト引用)
エピソード1から20年が経過する。
広い一軒家で寂しそうに暮らす男が、亡くした妻の名前で登録したAIと会話をし、孤独を紛らわす様が描かれる。
何気なく始まったストーリーだが、さりげなく、あくまで自然に前話とのつながりが描写される。
「結婚しよう」とか、男がAI相手にのめり込んでいく不気味な様でミスリードしてくるので、唐突に後頭部を叩かれたようなちょっとした衝撃があった。
また、演出も不気味。
どうやら男には過去に子どもがいた様子。
回想シーンの子どもが異様な描かれ方をしていて目が離せなくなる。
何でこんな気持ち悪く描くのだろう。
全体的には不気味で興味深い内容なんだけど、話が入り組んでいて、状況がよく分からないまま終わった印象。
監督の意図としては、分かりやすく描くより、謎を残し、本作の不気味さを、鑑賞後も観客に継続させたかったのだと思える。
謎がすべて解けると怖さはなくなるため。
ただ、知能が低めな私が理解できなかっただけかもしれないが。
主人公を演じるお笑い芸人コンビ、マユリカの阪本の狂った演技がうますぎる。
もともと卑屈な芸風なので今回演じたキャラはしっくり来すぎているし、他の演技ももっと見たくなる。
話はそれるが、私はマユリカ阪本のフリートークのキレは凄まじいものがあると思っており、いずれは天下を取ってもおかしくないと思う。
中谷もイジられるの上手いし。
◆エピソード3 林に埋まった映像 ★★★☆☆3.5
【あらすじ】2018年の出来事。これはある林道に半分埋まった状態で見つかったHDDとカメラに収められていた映像である。それは心霊スポット探索で人気を集める配信グループ<かげろう調査団>の配信用に編集された映像素材とその後の映像であった。ある視聴者から届いた依頼により、過去に一家心中があった家を探索することになった<かげろう調査団>の栗田たちは、依頼者・Kにコンタクトを取り、推理を重ねながらその一家心中についてレポートするという企画を進めていくのだが…。(公式サイト引用)
最後のエピソードは、フェイクドキュメンタリーの一種でファウンド・フッテージものとなる。
通常のフェイクドキュメンタリーとは大きな違いがある。
個人的な解釈ではあるのだが、通常のフェイクドキュメンタリーは撮影者によって映像が公開された、といった設定が多い。
ホラー作品のフェイクドキュメンタリーは、通常の劇映画の演出と比べると、ドキュメンタリー風なのでリアリティが強く、臨場感が得られる。
その代わり、『撮影者はどんな怖い目に遭ったとしても、映像が公開されている以上は生存している』という意味となる。
『これは私が高校生の頃の話だ』といったナレーションから始まるホラーの実録ものもそうなのだが、撮影者は必ず生き延びる、という結果は、ホラーとしてやや怖さが軽減される。
そんなデメリットを解消するために生み出された手法がファウンド・フッテージだ。
ファウンド・フッテージは撮影者が行方不明になり、第三者が見つけた映像フィルムを公開する、といった設定となる。
そのため、撮影者の生存は不明。
(概ねすでに命がないような含みがある)
話を戻す。
前2話の流れから、配信グループのかげろう調査団が調査する対象は間違いなく、あの家となる。
早速、芸人のみなみかわが演じる依頼者Kに案内された家にいく。
早々にポルターガイスト的な怪奇現象が多発し、かげろう調査団に恐怖を与える。
更にはKの言動もどこかおかしい。
最初は普通に会話が成立しているのだが、時折、意味不明な発言をこぼし、観客に不安を煽ってくる。
この絶妙なズレによる怖さが生々しくていい。
そして急に登場するKの姉であり、まともそうなMと距離を縮めるかげろう調査団。
少しずつ、謎が解けて怖さも軽減されていく。
しかし、本当の悲劇はここから始まる、といった感じ。
かげろう調査団は恐らく、YouTubeでホラーチャンネルを運営する『ゾゾゾ』辺りをモチーフにしている。
カメラを持つドSなディレクターに、「ここでこっくりさんしましょう」とか、無茶ブリされてメンバーは困惑する様子が『ゾゾゾ』っぽくて、何だか可哀想で微笑ましい。
しかし、楽しい撮影にはならず、本物のヤバい家による恐怖のギフトは、中盤以降、加速的に投げ込まれ続ける。
良かったのが、あまり解決されない謎が多いので、嫌な怖さが鑑賞後も持続する。
恐怖の正体の謎が解けると、恐怖そのものがすっかり晴れてしまうもの。
でも、本作は良く分からない。
家族がやばいのか、家そのものに呪いが降りかかっているのか。
なぜ家に関わることで人間が狂うのかが不明瞭なので、体の奥底まで恐怖に蝕まれる感覚。
全3話、ハズレがなく、思わぬ掘り出し物となった。
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■近畿地方のある場所について
■でぃすぺる
劇場版 ほんとうにあった怖い話 変な間取りの作品情報
■監督:寺西涼
■出演者:阪本(マユリカ)
みなみかわ
木村有希(ゆきぽよ)
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