■評価:★★★☆☆3.5
「ヤングケアラーの苦しさ」
【映画】Pearl パールのレビュー、批評、評価
『インキーパーズ』『サクラメント 死の楽園』のタイ・ウェスト監督による2023年7月7日公開のサイコホラー映画。
【あらすじ】孤立した家族の農場で、厳しい母の監視のもと、病気の父の世話をする少女・パール。自分の生活と対象的である映画のような華やかな生活に憧れる彼女は、やがて野望、誘惑、抑圧のすべてを残酷な形でぶつけていく。
本作は映画『ニンフォマニアック』のミア・ゴスが主演。
タイトルと同名のパールというイカれた女性を描く、サイコスリラー映画の三部作のうちの二部作目となる。
一作目『X』では、主人公グループが大人な映画を撮影するために田舎にある、高齢夫婦が営む農場の離れの部屋を借りる。
実はこの夫婦がイカれたコンビで、主人公グループは一人ずつ、着実に命を奪われていくストーリー。
私は一作目がとても好みだった。
命を奪いまくるごく平凡な見た目の老夫婦なんて怖すぎだし、アイディアとしても鮮度を感じた。
安全人物というか、潜在的に下に見てしまう人が実は怖いよね、って設定は好み。
世間的には前作より、本作のほうが高い評判を獲得している印象があり、強い関心を持って鑑賞に至った。
二十代の若いバールは鬱屈した毎日を過ごしていた。
住まいは田舎町で、地味な農場を営んでいる。
高圧的な母によって自由は制限され、敷かれたレールを仕方なく歩んでいる。
娯楽は何もないが、たまに町に出かけて見る映画がパールの唯一の楽しみ。
またパールはダンサーになるのを夢見ており、いつか農場を飛び出す野望を抱えている。
本作は『X』で老夫婦の女性パールの若かりし頃が描かれる、いわゆるエピソード0とかビギニング的な内容。
平凡な女の子がいかにして狂っていくのか、が生々しく、不幸な境遇のパールにはすぐに感情移入できる。
母が厳しいだけではなく、車椅子で体が不自由な父の面倒を押し付けられているのが特に可哀想に思えた。
ヤングケアラー(若年介護者)なんて言葉もあるくらい、現代では社会問題になっている。
ヤングケアラーを題材としたテーマの作品もいくつか存在するし、私も何本か観たことがある。
邦画では『誰も知らない』『子宮に沈める』『市子』、洋画ではアカデミー賞を獲得した『コーダ 愛のうた』あたり。
『コーダ 愛のうた』はポジティブな映画ではあったが、ヤングケアラーを題材とする作品の大体が不幸で陰惨な結果になることが多い。
そのため個人的には、心は動かされるけど、内容が重すぎるせいで繰り返し試聴したいとは思えない。
ヤングケアラーを解決するって難しい。
家族の問題だし、第三者が力を貸せるにも限りがあるから。
話を戻すが、野心家のパールからすると、何もかもが不遇なので、観客はすぐに彼女を応援するようになる。
しかし、パールは生まれつき、精神に異常をきたしているのか、あるいは毒親が狂わせたのが、どこかズレた感性を持っている。
簡単に相手にバレるようなウソを平気だついたり。
そのため、やってはいけないアプローチで解決を試みる。
個人的には、『X』のが好みだった。
やっぱり老夫婦が凶悪なヒールというアイディアはインパクトがあった。
アイディアでいうと、明らかに前作には遠く及んでいない。
しかし本作はキャラが分かりやすい。
ミア・ゴスのかわいいんだけど、どこか不穏さを醸す独特のルックスがパールのキャラと一致していて魅力的だった。
本作に出てくるキャラは、パール以外も誰もがキャラ立ちしているので、ホラーやスリラー映画好きなら万人受けすると思う。
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Pearl パールの作品情報
■監督:タイ・ウェスト
■出演者:ミア・ゴス
デヴィッド・コレンスウェット
タンディ・ライト
マシュー・サンダーランド
■Wikipedia:Pearl パール(ネタバレあり)
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):93%
AUDIENCE SCORE(観客):83%
Pearl パールを見れる配信サイト
Hulu:○(有料)
Amazonプライムビデオ:○(見放題)、○(Blu-ray)、前作はコチラ
Netflix:-
※2024年10月現在
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