映画『福田村事件』ネタバレなしの感想。関東大震災の混乱の中で発生した実際の事件を描く

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■評価:★★★☆☆3

「人の危うさ」

【映画】福田村事件のレビュー、批評、評価

『A』『A2』『FAKE』『i-新聞記者ドキュメント-』の森達也監督による、2023年9月1日公開のドラマ映画。

【あらすじ】1923年9月、関東大震災から5日後の千葉県東葛飾郡福田村。朝鮮人に対する悪意ある流言飛語を信じた村人たちによって、香川からやって来た行商団9人が殺害される事件が発生する。

1923年(大正12年)9月6日に実際に起きた人の命が大量に奪われた事件を元にした映画化となる。

本作はものすごく期待していた。
私は、本職がドキュメンタリー作家・ノンフィクション作家である森達也のファン。

1995年3月20日に多くの人が命を落とした地下鉄サリン事件を起こした麻原彰晃率いるオウム真理教の広報副部長に密着したドキュメンタリー映画『A』。

2013年に世間の賑わした「交響曲第1《HIROSHIMA》」などを作曲した音楽家・佐村河内守のゴーストライター問題があった。
新垣隆という音楽家が佐村河内守の代わりに多くの曲を作ったとの告白を週刊文春上で行う。
当時、新垣隆は時の人となり、情報番組のみならず、音楽番組やバラエティ番組にまで引っ張りだこの存在。
ドキュメンタリー映画の『FAKE』は、当時、息を潜めていた当事者、佐村河内守に密着し、映画ファンの間で話題になった。

官邸記者会見で鋭い質問を投げかける東京新聞社会部記者望月衣塑子に密着する『i-新聞記者ドキュメント-』。

私は上記、3本のドキュメンタリー映画を鑑賞している。

41才のおじさんである私、オウム真理教の事件とゴーストライター事件はタイムリーでニュース等で知っているので、めちゃくちゃ興味深く鑑賞した。
内容も良くて今も尚、記憶に焼き付いている。

そんな森達也監督のドキュメンタリーではない劇映画ということなので、興味深く鑑賞に至った。

本作は、大正時代の空気感が良かった。
服装や建造物はもちろん、喋りまで当時を再現したのか、古い言葉が使われている。
現代とは大きく異なるレトロな世界観にすぐに惹き込まれる。

ただ本作は非常に楽しみづらい作品だった。
メインは福田村が舞台。
だが、主人公は、瑛太演じる沼部新助率いる薬売りの行商団。
新助たちが今いる場所は福田村なのか、それとも別の村なのかよく分からない。
現代とは異なり、みんな似たような格好をしているので、人の見分けも付きにくいし、現状を把握することが難しかった。

また事件が全然起きないのもしんどい。
本作の上映時間は2時間17分
2時間弱、まるで目立った事件が起きないのはさすがに集中力が途切れる。
中盤で関東大震災が発生するシーンがあるが、家屋が壊れたりなど、福田村自体に大きな損害があるわけではない。
のんびりとした福田村の空気感が急に殺伐とすることもない。

キャラクターもあまり感情移入できなかった。
特に視点人物である澤田夫婦は、何の役割で本作に出てくるのか良く分からない。
澤田の夫のほうは成長する見せ場は用意されているが、いなくても作品は成立する。
奥さん扮する田中麗奈は妖艶で色気ムンムンでたまらん。

とにかく、魅力的なキャラが皆無なのも退屈に思えた理由の1つ。

さすがにクライマックスは衝撃的だった。
現代とは異なり、正しい情報を手に入れるのが難しく、また戦時中特有の歪な思想を持った人間は、きっかけさえあればこうもバカになるのかと、同じ日本人としてショックを受けた。
あまりに愚かすぎて真実とは思い難い。
恐らくフィクションだと加害者の異常な行動には説得力に欠ける気がする。
実際の事件を描いているからこそ生々しさが生まれた気がする。

情報化社会の代名詞ともいえるSNSは負の側面がかたられがちたが、SNSのない世界もまた残念な事件を産む。
人は愚かだ。

実際の事件を描いたおすすめ作品はコチラ。

■ゴリラ裁判の日

■地面師たち

福田村事件の作品情報

■監督:森達也
■出演者:井浦新
田中麗奈
永山瑛太
■Wikipedia:福田村事件

福田村事件を見れる配信サイト

Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
Netflix:-
※2024年12月現在

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。休みの日は映画、読書を楽しみつつ、エンタメ小説を書いています。腹括って執筆しているので、応募した新人賞に落ちると絶望してます。

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