■評価:★★★☆☆3
■読みやすさ:★★★☆☆3.5
「ゲームSFは面白い」
【小説】スタートボタンを押してくださいのレビュー、批評、評価
2018年3月16日刊行のオリジナルSFアンソロジー。
◆リスポーン 桜坂洋 ★★★☆☆3
【あらすじ】男は深夜の牛丼屋で一人ぼっちで仕事をしていると強盗が現れる。最初に俺の脳裏に思ったことはめんどくせー、の文字だった。レジの金を盗んだら強盗は終わり。だが男は警察を呼んだり、本部に報告したり、書類を書いたり、もろもろ大変。包丁を振る強盗は男を促す。仕方なくレジを開け、現金を取り出そうとした時、次の客が入ってきた。190cm を超える大男は「お前何してるんだ!」と強盗を威嚇。強盗の持つ 包丁の刃先が震えている。大男の突進 に合わせて強盗が包丁を振り回す。俺はカウンターの陰に隠れようとする。俺の首に熱い 衝撃が走る。強盗の包丁で切られ、男は絶命した。次の瞬間、男は赤黒く塗れた包丁を握りしめ、 牛丼屋の店内に立っていた。カウンターで内側で倒れているのは毎日鏡で見ている風采の上がらない しょぼくれた俺。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』の作者の作品。
ゲーム好きならおなじみの言葉である『リスポーン』は、やられたキャラクターの復活ポイントを指す。
主にチーム戦のFPSやTPSと呼ばれるシューティングの対戦ゲームで見られる仕様。
私が大好きなニンテンドースイッチの人気ソフト『スプラトゥーン』もリスポーンは存在する。
基本的に自陣の最後尾に設置されているリスポーンは、敵にやられた際の復活ポイントなので、復帰するのに数秒のラグがあったり、やられることでリスポーンから前線復帰しないといけないので時間ロスのと大幅なリスクが生じる。
本作は、強盗に命を奪われたと思ったら、その瞬間に『オレ』の命を奪った強盗になっているという、リスポーンシステムを物語に落とし込んでいる。
最高にワクワク感がある。
個人的には『スプラトゥーン』を始めとするゲームファンの私からすると、ゲームモチーフ小説への期待通りの魅力的な設定。
もし自分だったら、何をやらかしてリスポーンから復活してやろうかと妄想を捗らせてくれる。
ただ、個人的にはこの設定、面白いんだけど、物語としては難がある。
本来、物語を楽しむ我々は共感し、たっぷりと感情移入したキャラクターが命の危機に瀕したり、最悪『命を落とす』という結果を目の当たりにして感情が揺さぶられる。
だが、本作は簡単に命を落とした瞬間に、近くにいる誰かとして復活できる。
命の危機に晒されることに対するスリリングさに欠ける。
そのせいであまり、先の展開が気になることはなかった。
最初に伝えた通り、小説ならではのリスポーンのリスクを提示してドラマを生み出して欲しかった。
寿命が縮んだ状態で復活するとか、何でもいいので。
仮想現実とか、夢を題材にした作品をたまに見るけど、命が軽い世界観はヒリヒリ感が皆無なので、どうも私はハマりきれない。
リスポーン設定自体は面白いから、誰かもっと魅力的な物語を作って欲しいところ。
◆救助よろ デヴィッド・バー・カートリー ★★★☆☆3
【あらすじ】メグはデボンと4ヶ月 話していなかった。デボンとは別れたが友達でいられる関係だと思っていた。デボンに会いに 彼の寮の前で車を止め、剣を掴んで腰にさす。デボンは大学 を辞め、ゲームをずっとやってる。ゲームの中ですごいものを見つけたと言ってたとルームメイトが教えてくれる。デボンの行方を知るため、メグはデボンが熱中する『エルドリッチの王国』をプレイする。
興味深い設定。
大学を辞めてまで熱中するゲームとは一体どんな内容なのか。
元ゲーマーの私からすると強い興味を持った。
子供の頃からゲーム漬けだった私はよく理解できるのだが、一部のクオリティの高いゲームは本当に中毒性が高い。
千回遊べるローグライクRPGの『不思議なダンジョンシリーズ』TPSの『スプラトゥーン』などはゲームデザインが優れており、やめ時を見つけるのが難しい。
生活のために仕事する必要ない世界で生きてたら、私はずっとプレイしてると思う。
また、この設定でクズ芸人でお馴染みの岡野陽一の『人生が破滅するほど面白いゲーム』の存在を、やりすぎ都市伝説という番組で話していたのを思い出した。
岡野陽一がかつて働ていた工場で、トランプゲームの『バザ』というのが流行っていたそう。
ただあまりの中毒性の高さに、今では距離を置いているとのこと。
当時、調べたが、ルールはよくわからなかった。
しかしこのエピソードは記憶に強く刻まれていて、定期的に思い出す。
話を戻すが、冒頭であまりに自然な流れで主人公メグが剣を持っているのが違和感を覚える。
車を運転するという現代的な存在と、剣というファンタジー感の強いアイテムの共存は嫌でも引っかかる。
更にこの世界には人間に味方してくれるドワーフも存在する。
困った時に唐突に現れてヒントをくれるらしい。
私も会いたい。
結論からいうと、オチは、とある有名なSF映画的な設定。
既視感は強めなので、こんなものか、といった読後感だった。
◆1アップ ホリー・ブラック ★★★★☆4
【あらすじ】ネットゲーム仲間のソレン(ソリー)が亡くなり、キャットは葬儀に参加する。同じゲーム仲間のデッカー、トードと共に。みんなリアルでは初対面。彼の家族の家へ足を運ぶ。ソリーは病気で高校に行けず、3年間引きこもっていた事実を知る。ソリーの部屋のパソコンの電源を入れる。ペアレンタルコントロール(保護者が制限をかける機能)が がっちりかかっていた。ネットにも繋がっていない。この数週間ほとんどソリーはメッセージを残さず、 ゲームにもオンラインで参加してこなかった原因はこれだと思うキャット。すると、トードがパソコン上のゲーム画面を起動させた。インタラクティブフィクション。つまり、テキストアドベンチャーゲーム。
『ラザロのゲーム』ソレン・カープ作。
『きみたちは悲しんでいる。_』
と表示されている。
ソリーはゲームを作っていた。
本短編集で最も好きな作品だった。
主人公の女子、キャットは陰キャでリアルな友達はおらず、ネット上の顔も知らないゲーム仲間とばかり交流していた。
しかしキャットの母は否定する。
『ネット上の友達は本当の友達じゃない。リアルに会って初めて知り合ったことになる』と。
ふーん、あっそ、といった具合に聞き流すキャット。
実際にキャットは初めて2人のゲーム仲間と会う。
キャットはそれまでとは2人の見方が変わる。
2人はスタバで何を頼むのか。誰のゲップが一番大きいかも分かった。
そして、顔も知らない友人のために遠くからはるばるやってくることも知る。
キャットの価値観の変化は胸に染みた。
物理的に接する距離が近づけば近づくほど、多くの発見がある。
物理的に近づけば、内面にも触れる。
気に入らない面も見えてきてケンカすることもあるかも知れない。
でも相手のことを多くするからこそ、友人や恋人としての距離は縮まる。
2020年はコロナで大変だったけど、人類はコロナに打ち勝つ運命だったんだろうなと思う。
ソーシャルディスタンスでは育めない関係性というものがある。
シナリオも良かったけど、キャラクターの描き方が良かった。
本作はゲームモチーフの短編集。
だけど、世界観より何より、物語はキャラクターが重要。
私の好きな漫画家に『ハンターハンター』の冨樫義博さんがいる。
彼の対談記事で、『ファンタジー世界をリアルに描くための方法』という読者からの質問への回答は印象に残ってる。
『ゲーム世界を物語に持ち込む人が多いけど、ゲームは参加型で、物語は共感して楽しむもの。物語において、魅力的なキャラを作って感情移入させられれば、世界観は関係ない』のような回答をした。
冨樫さんの考えが見事に反映された一作だった。
◆NPC チャールズ・ユウ ★★☆☆☆2.5
【あらすじ】彼はイリジウムを探し収集装置で収集する。年に4と1/4チットの100万年 契約 か何かで働かされる一介のイリジウム最終作業員、つまりNPCだった。
まるでついていけない話だった。
冒頭、宇宙基地で淡々とイリジウムとやらを採掘する人物が描かれる。
ちょっとした事件があり、主人公の彼はNPCを卒業し、ステータスやHPが与えられる。
そもそもNPCは比喩なのか、それともこの世界はゲームの中なのかが分かりづらかった。
人間は寿命を超越した100万年 契約を交わされているので、恐らく後者なのだろう。
だとしたら、もっと分かりやすいゲーム内描写が欲しい。
NPCならではの同じ言葉を発するしかできないとか。
他に行きたい場所があるけど、体は勝手に同じルートのみを歩き続けるとか。
あと、主人公がNPCという尖った設定だからなのか、共感も感情移入もできないので、まるで世界に入り込めなかった。
◆猫の王権 チャーリー・ ジェーン・アンダース ★★☆☆☆2
【あらすじ】猫の顔の形をした被り物と一体型のゲーム『猫の王権』を同性パートナーであり、認知症を患うシェアリーに用意する私。このゲームは認知症患者が一定の認知能力を維持するための効果があるとのこと。数日後、シェアリーはゲームにはまる。シェアリーはゲームの王宮に住む、膨らんだ袖とレースの衣装の猫たちと対人関係を築いていた。現実世界の彼女は自分がどこに住み、今が何年で大統領が誰かも知らないのに。
本作も面白みを理解できなかった作品だった。
煩わしいと思っていたゲーム『猫の王権』にシェアリーはハマり、次第に不穏な変化の兆しを見せる。
主人公に対して命令口調になったりするのだ。
私が好きな『スプラトゥーン』は対戦型のゲームのせいか、ハマると性格が悪くなる、なんて言われている。
温厚だった人の口が悪くなったりなど。
競争要素が強いFPSやTPSでは良くある現象。
『猫の王権』もオンラインゲームっぽいので、シェアリーは過剰な変化を見せる作品なのかなあ、と半ば期待しつつ読み進めた。
だが思っていた展開とは異なるベクトルで話が進む。
結末も良く意味が分からなかった。
作者が何を伝えたくて本作を執筆したのか、誰か解説して欲しい。
◆神モード ダニエル・H・ウィルソン ★★☆☆☆2
【あらすじ】僕は20歳 。オーストラリアのメルボルン大学に留学し ビデオゲーム制作を学んでいる。今日は混んだ路面電車に乗って南のセントキルダ・ビーチへ向かっている。路面電車が停留所で止まる。サラが僕の目の前で失神する。意識を失ったのはほんの数秒。 すぐ 瞬きして茶色の目が開く。この日から空の星が消え始める。
冒頭からSF感満載で期待させてくれる設定。
東京は空が明るいからあんまり見えないけど、夜空を見上げると当たり前のようにある大量の星が、ある日、突然消えたらどうなるのか。
ただ、本作はシナリオを追うことが難しかった。
主人公の僕がいる世界は現実ではなく、ゲームの中っぽい。
でもゲームの世界だから何なのか、といった結論が結末に向かうにつれて提示されないので、どう面白がっていいのか分からなかった。
(提示されていたのかもしれないけど、私の知能が乏しくて理解できなかった)
あと、新海誠からコメディ要素を削った過剰なロマンチック空気感がどうも苦手だった。
確かに星が消えていくことで世界が荒廃に進む儚さはあった。
でも主人公に感情移入する瞬間がないので、ただただ照れくさい世界観だった。
◆リコイル! ミッキー・ニールソン ★★★☆☆3
【あらすじ】ジミーはゲーム会社フルメタル・エンターテイメントで働く親友の ロスに推薦状を書いてもらい、ゲームデータに適切なテクスチャを作成して貼る職を得た。午前2時。当社の次の製品、FPSの『リコイル』のテストをジミーは行っている。そろそろ帰ろうとするとビルの警備員がちかづいてくる。ジミーはこのオフィスに入るための正規の資格を持っていない。隠れるため、 小さなテストプレイ室に戻る。警備員が離れて行き、ジミーは安堵する。「確認したぜ。入りな」と、声が聞こえる。警備員と、悪役然としたロシア人2人組の男たちが入ってくる。3人はサーバー室に向かう。直後、警備員はロシア人の1人にサイレンサーの鉛玉を食らう。コンクリートに穴を開ける大型ドリルの回転音が鳴る。ジミーは部屋からの逃亡を企てる。
冒頭はなかなか興味深い展開。
主人公のジミーはゲーマーでもあるので、最新のFPSのテスト・プレイについつい深夜まで没頭する。
すると、武器を持った凶悪な連中が突然、オフィスに侵入してくる。
つまり、今さっきまで楽しんでいたゲームの世界が現実に侵食してきたのだ。
この地続き感が妙に生々しくて、一気に恐怖を覚えるジミーに感情移入していった。
まだジミーのキャラクターも魅力的。
中盤辺りで犯人が持ち込んだボストンバッグを見つけて探る。
するとまさかの武器を見つける。
普通のキャラならビビるだろうが、FPS大好き男のジミーは血が騒ぎ、それを手に持つ。
ジミーの選択に、私はついつい胸が躍った。
ただオチが肩透かしを食らう。
もう少し捻りのあるオチで楽しませて欲しかった。
あんまり物語の世界では良しとされないタイプのオチなのでげんなりした。
◆サバイバルホラー ショーナン・マグワイア ★★☆☆☆2
【あらすじ】従兄弟の男・アーティの家で、アニーは漫画を読んでいる。アーティはノートパソコンで新しいゲームのインストールをしている。「サバイバルホラー系のパズルゲーム。パズルを解かないと、クトゥルフのパクリっぽい 化け物が空間の裂け目から出てきて 食い殺される」とアーティ。アーティは起動ボタンを押すと、突然、部屋の照明が消える。アニーは動こうとすると足が動かない。粘度の高いタールの中に足を突っ込んでいるみたい。バランスを失ってよろける。アーティも同じく立ち上がれずにいた。パソコンのモニターが明るくなる。背景に文字がスクロールしてきた。『道化の牢獄。ゲームを開始しますか?』
ゲームを起動すると、現実にまで干渉してくる、どファンタジー。
入り込むのがなかなか大変だった。
パソコン画面の中のゲームが現実を侵食してくるのはまだいい。
本作の世界は人間以外にも色んな種族が存在している。
そのため本作の現実自体もファンタジーなのだが、作者の国では当たり前の存在と思われる空想上の生き物が何の説明もなく言及される。
日本人の私からすると、馴染みづらい世界観だった。
(例えば日本で言う鬼とか天狗が何の説明もなしに絡んでくる物語を外国人が読むイメージ)
世界観を理解するために数ページ読んでは頭に戻って読み直し、を3、4回、繰り返して少しずつ理解を深めていった。
そこまで労力を割いた割りにはパンチのあるオチがあるわけでもないので、評価はだいぶ低め。
本短編集で一番苦手な作品。
◆キャラクター選択 ヒュー・ハウイー ★★★☆☆3.5
【あらすじ】娘のエイプリルが寝た後 こっそりゲームをする私。すると、夫のジェイミーが戸口に 立って目を丸くしていた。
「俺のゲームを、やってるのか」と驚く。だが「すごいじゃないか」と内心は喜んでいた。私はほとんどのゲームを一通り 試していた。この FPS のゲームだけはハマった。「デスマッチをやるか。 お前がやるところを見たい 。面白そうだ」ジェイミー。私は、ジェイミーに見られながらプレイするストレスを覚える。
6人組の敵と対峙する。私は走るボタンを押す。少しでも早く走るため 武器を捨てる。「ゲームの目的は スコアを稼ぐことだったら分かってるのか」ジェイミーは私のプレイを批判する。「私は生きてお店にたどり着きたいだけ」私は反論。
面白い。
私もゲームは好きなので、歴代の恋人たちとほとんどゲームを楽しんできた。
『マリオカート』『スプラトゥーン』などの平和なゲームもいいが、ゾンビとの命をかけた戦いを繰り広げる『バイオハザード』は刺激が強いので特に盛り上がる印象がある。
主人公の夫ジェイミーは、自身が好きな過激なゲームジャンル、FPSを、妻がこっそりやっているのを知って興奮し、喜ぶシーンが冒頭に描かれる。
夫に強く共感した。
ついつい、彼女のプレイを見て口うるさくアドバイスをこぼしてしまうのはあるある。
自分の好きなものをパートナーがハマってくれたら最高だ。
同じ熱量で話せるようになったら尚更。
しかし、主人公の私は夫ジェイミーがイメージするのとは異なるプレイをする。
妻はただ、殺伐とした戦いが繰り広げられる世界で『とある店』に向かう。
まさかの意表を突く展開で面白かった。
まるで予想はできなかったし、実際にこんなことがあったら面白いのになあと思った。
都市伝説で聞いたことのある内容ではあるけど、妻が求めることがすごく可愛くて愛しい。
本当に争いは下らないし、平和とは無縁の野蛮な行為。
◆ツウォリア アンディ・ウィアー ★★★☆☆3
【あらすじ】ジェイクは電話でコース違反の反則金を払おうとす
「申し訳ございません コナーズ(ジェイクの苗字) さん。その名前で出頭命令はありません」と、言われる。パソコンの電源を切ろうとした時 メッセージのウィンドウが開く。『ゲイだ』。挑発的な言葉にジェイクは眉をひそめる。送信者の名前は表示されていない。『ふざけるな』『何かお困りごとは』『どこかのバカがメッセージを送ってくること』『それ違う何かお困りごとは』
『相手にしてる暇はない』ジェイクはブロックしようとする。
だがエラーメッセージ。『この操作は実行できません』新しいメッセージが表示。『ブロック不可だよん』
キャラがめちゃくちゃ魅力的。
かつてジェイクが作ったツウォリアと名乗る自律型AIは、やたらと主であるジェイクに高圧的。
ジェイクをゲイ扱いして挑発したと思ったら、困りごとを聞いてくる。
口が悪い癖に主従関係を守っており、ジェイクの力になろうとする。
ジェイクの子供みたいな存在なのに、やたらと自由な言動が目立つツウォリアがすこぶる魅力的。
作者のアンディ・ウィアーの2025年時点での最新長編小説、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が頭を掠める。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の主人公は、宇宙船で目を覚ます。
記憶喪失状態で、なぜ宇宙船にいるのか分からない。
主人公は謎にベッドの上で手足を拘束されている。
どうやら宇宙船のAIが実施したらしく、主人公はこのAIと言い合いながら、手足の自由を得ようとする。
アンディ・ウィアーはユーモラスな会話劇がめちゃくちゃうまい。
延々と読んでいられるので素晴らしい才能だと思う。
話を戻すが、本作はたった10ページのショートショート。
短すぎて一瞬で終わるので、盛り上がってくる前に終わった印象。
せめて一般的な短編、50ページくらいの分量で読みたかった。
◆アンダのゲーム コリイ・ドクトロウ ★★★☆☆3
【あらすじ】アンダは太っちょの冴えない少女はオンラインゲームが大好き。ある日、勧誘者のライザによって、みんなが憧れるファーレンハイト・クランに加入する。クランでしばらくゲームをプレイしていると、相棒の軍曹が『アンダ、金を稼ぎたくないか?リアルマネーで報酬を受けるミッションがある 』と誘われる。
ぽっちゃり体型のアンダは自信がない。
ある日、アンダが通う学校で、突然、全校集会が開かれる。
ゲーム界隈で有名なクランの勧誘者のライザが自分のクランに参加する者を探しているとのこと。
ライザも見た目はアンダのようにぽっちゃりしている。
唯一、アンダとの違いは自信に満ち溢れていること。
アンダはライザに憧れを抱き、クランへの参加を決意する。
不思議な世界観。
学校にオンラインゲームのクランのメンバーが勧誘しに来るのは、ファンタジー感満載。
この世界ではプロゲーマーは社会的に信用されているのかと思った。
とはいえ、アンダは両親に「ゲームばっかりやるな」と、我々が住む現実のような批判を食らう。
つまり、この世界でもゲームの社会的な立場は変わらない。
違和感だらけの冒頭だった。
ただ、ゲームの世界が現実に干渉してくるのは面白い。
ゲームの中でリアルマネーを稼ぐ、という妄想はゲーマーなら誰もが一度は夢想する。
まるで2024年末にテレビで放送された『水曜日のダウンタウン』の名探偵津田 第3話を思い出した。
ダイアンの津田が水曜日のダウンタウンの番組収録に参加していると、突然、同じ参加者のアンガールズの田中が弾丸を食らい、命を奪われる。
津田は探偵役として犯人探しを強いられる、という内容。
現実にフィクションが侵食してくる設定は、めちゃくちゃワクワクさせられる。
話を戻すが、アンダののリアルマネー稼ぎには思わぬ罠があった。
結論、良く分からない話だった。
作者はゲームを肯定したいのか、否定したいのか、あるいはゲームを通じて何を伝えたかったのか。
テーマが掴みづらくて、あまり乗れなかった。
◆時計じかけの兵隊 ケン・リュウ ★★☆☆☆2.5
【あらすじ】賞金稼ぎの女アレックスは、捕らえたライダーを逃がす。数時間前。アレックスはライダーを捕まえる。アレックス がライダーを捕まえようとしたのは、ライダーの父親が怪我をさせないようにライダーを捕らえてくれ、と依頼してきたから。アレックスはライダーが作った短編アドベンチャーゲームをプレイする。操作する主人公は王女。ベッドの脇にあなたの時計仕掛けの兵隊 スプリングがいる。
むちゃくちゃ入り込みづらい話だった。
バウンティハンター(賞金稼ぎ)と女アレックスが、金持ちで父親に捜索されてる男ライダーを捉えるシーンから話は始まる。
アレックスの職業や金持ちというライダーの立場が、あまりに平凡な生活を送る私とかけ離れすぎていてまるで感情移入も共感もできない。
せめて、一般人の私にも共感できる悩みとか、何かを早めに提示して欲しい。
キャラに感情移入しやすく、物語にも入り込めるので。
だが、それもない。
まるで興味を持てないキャラクター同士の交流を見せられるのは退屈、極まりなかった。
内容については、意表をつく結末を迎えて楽しませてくれる。
ただ、すでに他のロボット系のSF作品で観たような既視感があるので、そこまで驚くところはない。
SF界隈で有名で、まだ一度も読んだことのない作家、ケン・リュウの作品だったのでかなり期待したのだが、肩透かしとなった。
作品全体を通しては、当たり外れが激しかった。
ゲームという題材を、各々の作家があらゆる切り口で描いていたので、豊かなバリエーションは楽しかった。
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■著者:ケン・リュウ、桜坂洋、アンディ・ウィアー、アーネスト・クライン、ヒュー・ハウイー、コリイ・ドクトロウ、チャールズ・ユウ、ダニエル・H・ウィルソン、チャーリー・ジェーン・アンダース、ホリー・ブラック、ショーニン・マグワイア、デヴィッド・バー・カートリー、ミッキー・ニールソン
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