小説『成瀬は天下を取りにいく』ネタバレなしの感想。今日も全力で我が道を突き進む成瀬あかりを描く

未分類

■評価:★★★★☆4
■読みやすさ:★★★★☆4

「赴くままの人生を送ろう」

【小説】成瀬は天下を取りにいくのレビュー、批評、評価

宮島未奈による2023年3月17日刊行の青春小説。
2024年の『本屋大賞』受賞。

【あらすじ】2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。
コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。
M-1に挑戦したかと思えば、自身の髪で長期実験に取り組み、市民憲章は暗記して全うする。
今日も全力で我が道を突き進む成瀬あかりから、きっと誰もが目を離せない。
発売前から超話題沸騰! 圧巻のデビュー作。(Amazon引用)

『ゴットタン』『トークサバイバー』『あちこちオードリー』等の演出を、手掛ける佐久間宣行さん等、多くの読書好きの著名人が、本作を勧めていた。

言及動画は下記。(間違っていたらすみません)

また2024年の『本屋大賞』を受賞しており、約束された傑作本のイメージが定着していた。

ただ、私はどうも本作に生理的な抵抗があった。
本作の著者である宮島未奈が、本屋大賞を受賞した直後、本屋大賞の発表会場らしい場所で、大勢で人差し指を斜め上に上げるポーズをしており、苦手意識が湧いてしまった。

私は陰キャ寄りの人間なので、陽キャ感全開の空気感を出されると引いてしまう。
(ワンピースの尾田栄一郎も何となく苦手。長期休載するとき、わざわざ、ポップな長文のメッセージを提示するところが特に)

また本作の主人公の成瀬も果てしない陽キャで、落ち込んでる人を元気付けるヒーローのようなキャラクターなんだろうも何となく勝手なイメージが膨らんでいて、敬遠していた

だが、小説家を目指すものなら、本屋大賞を受賞した作品をスルーする選択は悪手だと思い、思いきって手に取った。

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」の一言から物語は始まる。
西武といっても西武ライオンズの応援をする、という意味ではない。
成瀬が住む滋賀県大津市の唯一のデパート、西武大津店が一ヶ月後に閉店することとなったのだ。
中学生の成瀬は、コロナ禍で多くのイベントがなくなり、貴重なモラトリアム期を持て余していた。
また、地元のローカルテレビが閉店まで、毎日取材するらしく、成瀬は毎日テレビに映り込み、感謝を表現する計画を立てる。
視点人物である同級生の島崎は成瀬と同級生。
成瀬は人には理解できない変わった言動で周りを混乱させたり、びっくりさせることが多いとのこと。
またスケールが大きいビッグマウスであり、小学校の卒業文集では「200歳まで生きる、書かれていた。
そのため、凡人である島崎は成瀬の行く末を見届けることを決めていた。

私が興味深かったのは同級生の反応である。
成瀬は小学校の頃から絵や歌や勉強など、ある程度のことなら難なくこなせる能力がある。
そのため小学校の頃はクラスメイトから無視されていたのだ。

私は読む前は何もかもが完璧なキャラクターだと思いこんでいた。
成瀬はいわゆるコミュ障であり、島崎と比べると会話が大して上手くない。
隙があるところに親近感が湧き、成瀬に対する興味を持つようになった。

話を戻すが、島崎は成瀬に頼まれ、できるだけ毎日、テレビをチェックするようになる。
西武ライオンズのユニフォームを着た成瀬は野球の応援用のプラスチック製のミニバットを持って仁王立ちでテレビに映る。
不審者でしかないので、テレビのレポーターはインタビューはせずにスルーする。
だが、成瀬は懲りずに毎日、同じスタイルで西武デパートに姿を見せテレビに映り続ける。

すると徐々にリアクションが返ってくるのだ。
Twitterで成瀬に言及する人が現れたり、何となく島崎も参加してみると、翌日に同級生に声を掛けられたり。
あるいはテレビを見てきた人から西武ライオンズの帽子をもらったり。
成瀬の何気ない継続行動によって、周囲が変化し巻き込まれていく様がすごく面白い。
「次はどんな変化があるんだろう」とワクワクしながらページをめくった。

生理的に苦手かと思っていた成瀬にハマるのに、大して時間は掛からなかった。

次のエピソードの成瀬がM−1グランプリを話も最高だった。
他にも成瀬が坊主になったり、あるいは恋模様が描かれる話もある。
個人的にはM−1グランプリの回が一番良かった。
なぜなら、試行錯誤で漫才のネタを育てていったり、島崎との距離がより縮まったり、あるいは思わぬアクシデントを見せたりと、ストーリーが魅力に溢れていた。

悔しいけど、約束されたされた傑作だった。
すでに刊行されている続編も間違いなく読む。

学生主人公が活躍するおすすめはコチラ。

■でぃすぺる

■裏世界ピクニック

成瀬は天下を取りにいくの作品情報

■著者:宮島未奈
■Wikipedia:成瀬は天下を取りにいく
■Amazon:こちら、続編はコチラ、コミカライズ版はコチラ

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。小説の添削でボコボコに批判されて凹みがち。

【オールタイムベスト】小説
■プロジェクト・ヘイル・メアリー
■三体
■永遠の0
■ガダラの豚
■容疑者Xの献身
■煙か土か食い物
■クリムゾンの迷宮
■玩具修理者(酔歩する男)
■バトル・ロワイアル

【オールタイムベスト】ノンフィクション本
■母という呪縛 娘という牢獄
■墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便
■殺人犯はそこにいる

柴田をフォローする
未分類
柴田をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました