小説『アンドロイドは電気羊の夢をみるか?』ネタバレなしの感想。本物の羊を飼うためアンドロイド狩りに出る

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■評価:★★★☆☆3.5
■読みやすさ:★★★☆☆3.5

「人間とは何か、人間と精巧なアンドロイドとの違いは何か」

【小説】アンドロイドは電気羊の夢をみるか?のレビュー、批評、評価

『高い城の男』『マイノリティ・リポート』『ユービック』のフィリップ・K・ディックによる1968年刊行のSF小説。

【あらすじ】第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では生きた動物を持っているかどうかが地位の象徴になっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた〈奴隷〉アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りをはじめた! 現代SFの旗手ディックが、斬新な着想と華麗な筆致をもちいて描きあげためくるめく白昼夢の世界!(Amazon引用)

原作よりも名前が知られている印象のある映画『ブレードランナー』は、映画好きの私ももちろん鑑賞済であり、そこそこ好きな作品。

退廃的な近未来の日本のような世界観は、一度観たら忘れられないインパクトがある。
アカデミー賞では視覚効果・美術賞を受賞したのも納得の゙クオリティ。
シリアス一辺倒な重厚感のあるシナリオが字幕鑑賞に耐えられず
、わざわざ日本語吹き替え版が収録されている製品版Blu-rayを、購入してようやく最後まで観られた。

実際に見終わると、世間の評判が良いだけあって、尾を引くテーマが良かった。
レプリントと呼ばれる人型ロボットたちの由々しき存在感は心を掴まれるし、敵である彼らには強く感情移入した。
 
映画版は大幅に脚色されていて、原作はまるで違った内容になっているとの話を聞いていたのと、SF好きの中では原作ファンが多く存在しているので、今回、手に取った。

主人公のデッカード(リック)は今の生活に悩みを抱えている。
妻との関係があまり良くないのと、電気羊しか飼えない経済力のなさにうんざりしている様子。
核戦争後、放射能で汚染された地球ではほとんどの動物が絶滅、または大幅に数を減らしている。
そのため本物の動物を飼うことがステータスとされている。
そんな時に、火星からアンドロイドが脱出したので、賞金稼ぎのデッカードは狩りに出向く。

デッカードはとにかく可愛い。
映画版ではハリソン・フォードが扮したデッカードは常に眉間にシワを寄せる神経質そうな男。
原作のデッカードはアンドロイド狩りに出向くモチベーションが、本物の動物を飼うため、というのが愛おしくなる。
いつ放射能で頭がやられるのか分からない、危険な退廃した世界でも、人間らしく承認欲求を満たそうとする姿勢は共感できる。

意表をつく展開で驚かせてくれるのも良かった。
本作の最新型のネクサス6型の人型アンドロイドは一見、人と見分けがつかない精巧な人造人間。
そのため、ひっそりと人間社会に潜り込み、人間にまぎれて生活している。

デッカードはフォークト=カンプフ感情移入度検査法を用いて、疑わしき人物をアンドロイドが、人間かを判別する。
だが、冒頭、ネクサス6型に対してこの判別法が有効かは定かではないため、ネクサス6型を開発したローゼン協会に出向いて実験する。

ローゼン協会のスタンスはちょっと分かりづらかったのだが、実験の一連のシークエンスは緊迫感があって面白かった。
この後も生き延びるために巧妙な手を駆使するアンドロイドたちの攻防は先の展開の予想がつかめなくて面白い。

本作は古い本だが、読みやすいのも良かった。
Amazonレビューでは読みづらい、なんて口コミもあったが、本作よりも読みづらい古典SFはある。
例えば『タイタンの妖女』『異星の客』『月は無慈悲な夜の女王』『エデン』など。
読書慣れしている人であれば問題なく楽しめる。

後、大枠の流れや描くテーマは、意外と映画と一致していた。
本作の方がデッカードの可愛らしさがあったり、後は放射能の脳がやられたイジドアも知能が低いながらも必死に生きる人間味が描かれていて、映画より幅が感じられて楽しみやすい。

原作と映画版はどっちが良いというか、どちらもそれぞれの良さがあった。
映画版が好きな人なら絶対に楽しめる良作。

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アンドロイドは電気羊の夢をみるか?の作品情報

■著者:フィリップ・K・ディック
■Wikipedia:アンドロイドは電気羊の夢をみるか?
■Amazon:こちら、映画版はコチラ

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。小説の添削でボコボコに批判されて凹みがち。

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