小説『ぼぎわんが、来る』ネタバレなしの感想。幸せな新婚生活を送る男の元にとある存在が訪れる

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■評価:★★★★☆4
■読みやすさ:★★★★☆4

「パートナーへの立ち振舞の繊細さ」

【小説】ぼぎわんが、来るのレビュー、批評、評価

澤村伊智著による2015年10月30日刊行のホラー小説。
第22回日本ホラー小説大賞の大賞を受賞。

【あらすじ】幼少期に謎の怪物“ぼぎわん”に遭遇した田原秀樹。 社会人になって、家庭を持った彼の元に謎の訪問者が現れて以来、彼の周りで不可思議な怪奇現象が起こる。(Amazon引用)

第22回(2015年) 日本ホラー小説大賞で大賞を受賞したため、関心を抱いた作品。
日本ホラー小説大賞は、私の認識が間違いではなければ、国内において最も格式の高いホラーのジャンルにおける新人賞となる。
※2019年度からは「横溝正史ミステリ&ホラー大賞」へ移行。

『新世界より』などの貴志祐介の『黒い家』、恒川光太郎の『夜市』など、多くの有名ホラー作家は本新人賞にてデビューを果たしている。
私が初めて小説にハマった当初も、当賞を主催する角川のホラーレーベル、角川ホラー文庫ばかりを貪っていたので、個人的には思い入れのある賞である。

また、当時、審査員を務めた貴志祐介が大賞を獲得した『ほぎわんが、来る』及び、同年の優秀賞を受賞した『二階の王』を絶賛するネット記事を観て、読もうと思った経緯がある。

色々あって9年後の2024年、ようやく手に取ることが出来た。

主人公は一人娘のいる幸せな家族を築く旦那、田原秀樹。
彼の幼少期から物語は始まる。
子供の頃のある日、寝たきりの祖父と一緒に家で留守番をしていると、謎の女性が訪問してくる。
「ごめんください、シヅさんはいますか」と尋ねてくる。
祖母の名前がシヅなので、「今、出かけてます」と回答する。
「ヒサノリさんはいますか」と次に尋ねられる。
祖母の長男で、母の兄に当たる人物なのだが、すでに交通事故で命を落としている。
不審に思っていると、突然、女性が変な声を出し始める。
すると「帰れ!」と寝たきりの祖父が奥から叫ぶ。

すぐに判明するのだが、この女性の正体こそ、ぼぎわん。
突然訪ねてきて、対応するとお山に連れて行かれてしまう、最悪の怪物。
すっかりぼぎわんの存在が薄れ、大人になり、仕事をしていると、部下が「知沙と名乗る女性が訪ねてきていますよ」と声を掛けられる。
まだ生まれてもおらず、決めてはいるものの誰にも教えていない娘の名前を名乗る女性。
以降、主人公の身に様々な悲劇が舞い降りる。

冒頭の流れからして面白すぎる。
ぼぎわんは一体、何なのか。
なぜ、今になって再び訪れるのか。

本作はホラーとしての強さはもちろん、魅力的なミステリー要素が冒頭から投げかけられる。
あまりに先が気になりすぎて、なりふり構わず読み進めた。

キャラクターも魅力的。
ぼぎわん退治として主人公の協力者として登場するのがピンクの髪色のパンキッシュな見た目の女の子、比嘉真琴。
巫女兼除霊師らしからぬぶっ飛んだ見た目なのだが、心優しい子で子供が大好き。
人見知りの知沙も彼女には懐いて、すぐに田原家と打ち解ける。

彼女以上にインパクトがあるのが、真琴の姉の琴子。
真琴以上の除霊能力を持つ凄腕らしいのだが、忙しいらしく、電話でのみ、サポートする。
一体、いつになったら助けに来てくれるのか。
読者の期待をいい感じに煽ってくれる。
まるで漫画のようなキャラ立ちした連中と共に化け物退治する流れがシンプルに面白い。

また、展開も最高。
本作は視点人物が切り替わりながら話が進む。
視点人物が変わるにつれて、キャラの裏の顔が明かされ、展開が大きく動く。
エンタメとしての面白さが抜群過ぎる。

また描かれるテーマもシリアスで良い。
本作を読んだ世の夫婦は間違いなく、過去の自分の行いを見つめ直すだろう。

本作がなぜ大賞を受賞したのか納得でしかない。
ホラー小説ではあるが多くの人に勧めたい傑作。
『来る』というタイトルで実写映画にもなっているので、鑑賞したいところ。

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ぼぎわんが、来るの作品情報

■著者:澤村伊智
■Wikipedia:ぼぎわんが、来る
■Amazon:こちら

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。小説の添削でボコボコに批判されて凹みがち。

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