■評価:★★★☆☆3
■読みやすさ:★★☆☆☆2.5
「独立を勝ち取らなければならない」
【小説】月は無慈悲な夜の女王のレビュー、批評、評価
『夏への扉』、『異星の客』『宇宙の戦士』のアメリカのSF作家、ロバート・A・ハインラインの1969年刊行のSF小説。
【B】【あらすじ】2076年7月4日、圧政に苦しむ月世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した!流刑地として、また資源豊かな植民地として、月は地球から一方的に搾取されつづけてきた。革命の先頭に立ったのはコンピュータ技術者マニーと、自意識を持つ巨大コンピュータのマイク。だが、一隻の宇宙船も、一発のミサイルも持たぬ月世界人が、強大な地球に立ち向かうためには…。
YOUTUBEでのジブリ映画などの解説動画に定評があり、アニメなどのサブカルに異様なほど造形が深い岡田斗司夫が、おすすめしていたSF小説として、本作を挙げていた。
当該動画のリンクは下記。
1966年に本国アメリカで刊行された海外小説で(日本では1969年に刊行)、文庫本のページ数がなんと約680ページ。
私自身、SF小説は難解な用語にまみれた難しそうなイメージもあり、腰が重かったが、勇気を振り絞って本書を手にとってみた。
第一印象としては、超高性能コンピュータAIであるマイクのキャラがとにかく魅力的だった。
主人公をマン、と呼ぶ彼? だが、ほんのわずかな時間で、世界中に刊行された本の中身を記憶することができる最強のAI。
特に好きなエピソードは主人公と「笑い」について談義するシーン。
物語の冒頭で、マイクは底辺職につく人間に、何兆円というとんでもない莫大な給料を振り込む。
それに対して、「おもしろくないですか?」とマイクは主人公は訊ねる。
「面白い。だが、冗談には2種類あって、永久に面白さが続く冗談と、一度だけ面白くて二度目はつまらない冗談。今回のは後者だ。だから繰り返すなよ」と主人公は警告する。
「わたしは憶えておきます」とマイクは素直に了承する。
この会話がやたらとツボにはまってしまった。
高性能で、人間より遥かにすぐれた知能を持つマイクだが、冗談というちょっとした概念が良くわかっていない。
しかも、自分より馬鹿である人間の命令を素直に聞いてしまう可愛げもある。
このやりとりで、一気にマイクを好きになってしまった。
他に良かったのが世界観。
主人公らは月に住んでいるのだが、いろいろと面白い設定がある。
例えば主人公は結婚をしている。
普通の我々のような一夫一妻ではなく、家系型(ライン型)という形態を取っている。
複数の男と複数の女の完全合意によって、次々と新しい婿や嫁を取り入れていくという、ユニークな家族形態である。
この設定一つで物語が書けそうな斬新さ。
他にも無重力のため、地球に暮らす人間と比べて老化が遅かったり。
空気を吸うのに金が発生したり。
流刑地のため、法律はなかったり。
我々の常識や価値観に収まらない特殊設定にまみれている。
本作で一番、ワクワクさせられた箇所である。
ただ、全体的には冗長で、若干、読むのが大変だった。
臨場感のある描写が少なく、8割がた説明調で展開される。
昔の小説の形態だからなんだろうけど、物語を読んでいるというより、ブログを読んでいる感覚に近い。
世界観に入り込みづらいので、読むのにかなり時間がかかった。
あとはとにかく冗長で、なかなか物語が進行しない。
クライマックスも思ったりより地味だった。
不満点も多い内容ではあるが、読んで良かったと思える内容。
本作のようなハードSFは、世界観がぶっ飛んでいるのにワクワクさせてくれる。
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月は無慈悲な夜の女王の作品情報
■著者:ロバート・A・ハインライン
■Wikipedia:月は無慈悲な夜の女王(ネタバレあり)
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