■評価:★★★☆☆3.5
■読みやすさ:★★★☆☆3.5
「本格ミステリの可能性」
【小説】屍人荘の殺人のレビュー、批評、評価
第27回鮎川哲也賞を受賞した今村昌弘のデビュー作。
ほかに「このミステリーがすごい!2018年度版」「週刊文春ミステリーベスト10」「2018 本格ミステリ・ベスト10」において第1位を獲得、そして第18回本格ミステリ大賞を受賞し、国内ミステリーランキング4冠を達成。
刊行日は2017年10月13日。
2019年には神木隆之介、浜辺美波、中村倫也らによる映画化もされている。
【あらすじ】神紅大学ミステリ愛好会のメンバーである葉村譲と、「神紅のホームズ」を自称するミステリ愛好会会長の明智恭介は、同じ大学に通っていて警察にも協力して難事件を解決している「探偵少女」剣崎 比留子に誘われ、映画研究部夏合宿に参加することになる。しかし、その映画研究部の夏合宿は「男子部員たちが女子部員を襲っている」という噂があった。
本格ミステリといえば、外界との通信が取れない孤島や、山奥にある豪邸のような建物で、名探偵が殺人事件のトリックを暴くジャンル。
多くは密室下でおこなれるような不可能犯罪によるトリックが用いられることがほとんどで、『いったい誰が、どんなトリックで、なぜ行ったのか』の謎の追究を楽しむことに主眼が置かれている。
有名な作品を挙げると、『十角館の殺人』『占星術殺人事件』など。
そもそもの読者ターゲットは一般人ではなく、本格ミステリオタクに向けて作られているジャンル。(漫画では『名探偵コナン』や『金田一少年の事件簿』など、一般人向けに作られる本格ミステリ作品もある)
本作は内容の斬新さが話題を呼び、鬼のようにメディアミックスされ、一般層まで広まった。
デビュー作にも関わらず、今をときめく豪華な俳優陣によって実写映画化されたのは凄いと思う。
いったいどんな内容なのかと気になって読んだ。
読了して納得である。
前代未聞の特殊設定が素晴らしく、先の展開が気になって仕方なかった。
本作は密室下に置ける事件を、探偵役の女子学生と主人公の男子学生が一緒に推理していく流れ。
とくに印象的だったのが密室の構築方法。
普通ではないにもほどがある。
ネタバレにはならないのだろうが、これから読む(あるいは映画を鑑賞する)人の楽しみを削ぎたくないので、詳細は伏せておく。
オリジナリティに富んだ作者の才能を存分に楽しんで貰いたい。
他に印象的だった箇所はポップなキャラクター。
本格ミステリといえば、大体が、頭の回転が速い青年、もしくはオッサンである。
だが、本作は今時の可愛らしい女子大生である。
口調は女性らしさに欠ける、男っぽさ特徴。
やけに人懐っこく、主人公をやたらと、ワトソン役(ミステリ小説において探偵の助手役)にスカウトをする。
この親しみやすい探偵の女の子が、マニアなジャンルである本格ミステリの本作を、一般層が受けた要因の一つだろう。
本作は面白い小説ではあったが、本格ミステリ感全開のパズル感は少し苦手だった。
事件が起こった際の状況がかなり細かく、パズルのピースの一つ一つがとても小さい感じである。
そのため、ミステリーとしては面白味はそこそこといったところ。
とはいえクリエイティビティを刺激されるいい小説で今後、私の記憶から消えることもないだろう。
チャンスがあればこの作者の他の作品も手に取りたい。
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■此の世の果ての殺人
屍人荘の殺人の作品情報
■著者:今村昌弘
■Wikipedia:屍人荘の殺人(ネタバレあり)
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