■評価:★★★☆☆3.5
■読みやすさ:★★★★☆4
「巨木は怖い」
【小説】暗闇坂の人喰い木のレビュー、批評、評価
本作は、探偵役の御手洗潔を玉木宏、相棒役である石岡和己を堂本光一が演じでドラマ化もされている、ミステリー小説シリーズ『御手洗潔シリーズ』の長編4作目で1990年刊行。
著者は同じく御手洗潔シリーズの『占星術殺人事件』『斜め屋敷の犯罪』の島田荘司。
【B】【あらすじ】さらし首の名所だった「暗闇坂」にそそり立つ樹齢二千年の大楠。この巨木が次々に人間を呑み込んだのか。近寄る人間たちを狂気に駆り立てる大楠の謎とは。とうてい信じられない怪事件に名探偵・御手洗潔が敢然と挑む。しかしながら真相に迫る御手洗も恐怖にふるえるほど、事件は凄惨を極めるものだった。
御手洗シリーズの中でも評価の高い作品。
私はこのシリーズの大ファンである。
もともと「東西ミステリーベスト100」の国内編でのミステリー小説ランキング2012年版では、3位に選出されていたきっかけで著者のデビュー作で御手洗シリーズの第一作『占星術殺人事件』を読んだ。
これがまたとんでもない傑作で驚いた。
以降、マイペースに御手洗シリーズを読み続けている。
話はまだ反れてしまうが、私は伊坂幸太郎も好きで、結構読んでいる。
伊坂幸太郎自身も島田荘司の大ファンで、島田荘司のベスト5の1作に本作『暗闇坂の人喰い木』を挙げていた。
相変わらず、御手洗の一挙手一投足が面白い。
主人公である語り手の、石岡の想像の斜め上を行く言動を幾度も見せてくれる。
例えば、表題にもなっている樹齢二千年の大楠が登場する。
この大楠の経つ場所に、かつては処刑場があったのだ。
そのせいで大楠は何かしらの呪いを纏ってしまったのか、大楠に喰われるようにして、命を奪われた人間が過去に存在している。
現在の時間軸で発生する事件も、まるで大楠に呪われたり、あるいは喰われたような命を失い方をしている。
誰もが呪いを信じ、恐れている大楠に対して、御手洗がとんでもない行動を仕掛ける。
詳細はネタバレになるため伏せておくが、随所に、相棒で本作の主人公である石岡や、読者の想像を裏切る行動を見せてくれるのが面白い。
このシリーズが長く続いている理由に納得。
もはや御手洗が出てくるだけで、「次はどんな言動でびっくりさせてくれるのか」とわくわくさせてくれる素晴らしいキャラクター。
残念だったのが、作中で、作者の姿が見えてしまったシーンがあるということ。
この作品は、いくつかのトリックによる謎解きシーンが存在する。
その中の一つのトリックが、明らかに過去作を引きずった内容だったのが残念。
嫌でも、作者の姿がちらついてしまうので、物語に対する没入感が激しく削がれてしまった。
もっと軽いトリックでもいいから、作者の姿が見えない類いで描いて欲しかった。
長い作品だが、文体自体は読みやすいし、ミステリー要素も魅力的であるので、あっという間に読めてしまう。
大楠という自然がミステリーの対象となっているのが興味深い。
まったく結末は読めず、見事に予想を裏切る結末を迎えてくれた。
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