■評価:★★★★☆4
■読みやすさ:★★★☆☆3
「虐待」
【小説】ある少女にまつわる殺人の告白のレビュー、批評、評価
TVドラマ『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』の原作者、佐藤 青南のデビュー作。
2011年5月に刊行されたミステリー小説。
【あらすじ】長崎県南児童相談所の所長が語る、ある少女をめぐる忌まわしい事件。10年前にいったい何が起きたのか―。小学校教師や小児科医、家族らの証言が当時の状況を明らかにしていく。さらに、その裏に隠されたショッキングな真実も浮かび上がる。関係者に話を聞いて回る男の正体が明らかになるとき、哀しくも恐ろしいラストが待ち受ける。
ミステリー小説の新人賞の1つ、『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞に選ばれた作品。
毎年、年末に『別冊宝島』から刊行されているミステリー小説ランキングのムック本『このミステリーがすごい!』と同じ名前の賞だが、すでに活躍している小説家の作品が対象なのに対し、『このミステリーがすごい!』大賞は新人賞版である。
過去には『チーム・バチスタの栄光』シリーズの海堂尊、中山七里、『彼の遺言状』の新川帆立など、多くの著名な作家たちがこの賞よりデビューを勝ち取っている。
私は本作の著者、佐藤青南が小説に執筆について語るYouTubeを良く見ているので、どんなデビュー作を書いたのか気になって読んだ。
クオリティの高い物語で驚いた。
とても新人が書いたとは思えないレベルの高さで、優秀賞の受賞に納得。
まずシナリオが面白い。
虐待を題材としており、インタビュー形式で様々な人物がとある少女とのエピソードを語る。
読み進めるうちに、少女の周りの誰かが命を落としたらしい。
どうやら少女の父親代わりの男が、少女を虐待をしていたらしいなど。
少しずつ彼女自身や、彼女の周りで起きた事件が明瞭化していく。
じわじわと、真実に近づいて行く展開が面白くて、ついついページを捲る手が捗った。
『このミステリーがすごい』レーベルの作品なので、ミステリーならではのどんでん返し的なものが用意されていることを期待させられたし、色んな方向の結末を予想しながら読み進めた。
結果として、予想はことごとく外れたし、想定外の展開を迎えてくれてかなり楽しかった。
文章表現も良かった。
佐藤青南は読書にハマるのが遅かったと、YOUTUBE上で語っていた。
だが、そうは思わせないほどに文章がうまかった。
シナリオの組み方も素晴らしいし、小説講座などを受けずにこの作品を作ったらしいので凄いと思う。
あと、佐藤青南は長い下積みを経験しているが、本作を執筆後、新人賞を受賞できる自信があったそう。
理由としては、今までの作品は専門知識が必要な題材があっても調べたりせず、すべて想像で作っていたそう。
だが本作に関しては、児童虐待について徹底的に調べて執筆したそう。
確かに虐待される児童の精神状態やそれに基づく行動も生々しく描かれている。
唯一の欠点は読みづらさ。
文章自体は平易だが、全編、口語体のため、読みづらくて仕方なかった。
とはいえ、そんな欠点をふっとばすほどの面白さである。
虐待を題材とした作品のおすすめはコチラ。
■禁忌の子
■母という呪縛 娘という牢獄
ある少女にまつわる殺人の告白の作品情報
■著者:佐藤青南
■Wikipedia:ある少女にまつわる殺人の告白
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