■評価:★★★☆☆3
■読みやすさ:★★★☆☆3.5
「ギャンブルの魔力に絡め取られろ」
【小説】赤・黒(ルージュ・ノワール)池袋ウエストゲートパーク外伝のレビュー、批評、評価
『池袋ウエストゲートパーク・シリーズ』『娼年』『4TEEN』の石田 衣良による2001年の小説となる。
【あらすじ】ギャンブルにはまって借金をかかえる映像ディレクター・小峰渉のもとに、池袋最大のカジノの売上金を狂言強盗する計画がもちかけられる。計画は成功、時給の1億円が手に入ると思った鼻先で金が奪われる。氷高組のサルが小峰と組んで、池袋を拠点にするヤクザたちの巧妙な罠から起死回生を狙う。
あらすじにも『ギャンブル』『カジノ』のワードがあるため、ギャンブルをメインとしたひりつく展開を期待していた。
実際は普通のノワール物のサスペンスだった。
主人公の小峰を陥れ、1億に近い借金を抱えることとなった元凶の人間を探したり。
絶体絶命の困難を突破するため、とある人物を探したり。
ギャンブルとは無関係のプロットで展開される。
コンセプトであるギャンブルで問題解決していくドキドキを体験させてほしかった。
本作は『池袋ウエストゲートパーク外伝』という副題が付与されているだけあって、小峰の一味に、池袋ウエストゲートパークの登場人物の一人、ヤクザのサルが出てくる。
(ドラマ版では妻夫木聡が演じる)
でも別に、サルがいてもいなくても、本作の物語の見所は変わらない。
サル自身が物語の展開のために、役に立ったような展開があまり見られない。
池袋ウエストゲートパーク外伝じゃなくても良かったと思う。
Gボーイズのキングも出てくるが、友情出演程度である。
恐らく販促のために、池袋ウエストゲートパークのブランドを使った企画制作を依頼されたのだろう。
不満点が多くなってしまったが、ワクワクさせられた箇所もある。
冒頭で、小峰らは池袋最大のカジノの売上金を盗む、狂言強盗を行う。
(狂言強盗:自分が金品を着服したうえで、強盗に襲われてその金品を奪われたようにふるまうこと)
成功したと思いきや、仲間である冴えないオッサンが「ごめんなさいごめんなさい」と、小峰らに銃を向けてくるのだ。
その後、分け前をすべて奪って逃亡する。
本作の起承転結の起にあたるシーンだが、このオッサンのキャラが良かった。
オッサンは誰かの命令によって、仕方なく分け前をすべて奪った。
オッサンの「ごめんなさいごめんなさい」と謝罪しながら、結構ぶっとんだことをしでかすのだ。
結果的に、この起となる部分はあっさり消化されるので、私としては不完全燃焼ではあるのだが。
でもこのオッサンのような口と行動が不釣り合いなキャラには不気味さを感じるので好みだった。
石田衣良は文章表現が綺麗。
作家は子供時代から本の虫だった根っからの小説好きと、あまり読んでこなかった2種類いる。
東野圭吾のような後者の作家は、文章表現に拘りを持たない印象がある。
無味無臭の読みやすさで、淡々と物語を紡ぐ。
一方で、石田衣良みたいな前者の作家は、文字が主食と言わんばかりの小説好きで、文章表現でも読者を楽しませようとする気概が感じられる。
もちろんそれぞれ長所や短所があるし、私はどっちのタイプの作家の本でも、中身さえ良ければ問題なく楽しめる。
ただ気分次第で、美しい表現に身を浸らせてしっとりしたい心細い夜もある。
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