■評価:★★★☆☆3.5
■読みやすさ:★★★★☆4
「非日常に身を放るからこそ、生を実感できる」
【小説】デュラララ!!のレビュー、批評、評価
2009年7月にテレビアニメ化もされた2004年4月10日刊行のライトノベル。
【あらすじ】東京・池袋。そこにはキレた奴らが集う。非日常に憧れる少年、喧嘩上等のチンピラ、ストーカーもどきの電波娘、趣味で情報屋を営む青年、ヤバイ患者専門の闇医者、魔物に魅せられた高校生、そして漆黒のバイクを駆る“首なし(デュラハン)ライダー”。そんな彼らが繰り広げる物語は痛快な程マトモじゃない。だが、彼らは歪んでいるけれども―恋だってするのだ。(Amazon引用)
東京の3大繁華街の1つ、池袋を題材にした青春スリラー小説。
他の2カ所、新宿、渋谷とともにこれら繁華街を舞台にした物語は多く存在する。
例えば新宿なら、ホストを題材とした漫画『夜王』、夜の仕事のキャッチを生業とする主人公の奮闘を描く漫画『新宿スワン』。
渋谷では、細田守監督のアニメ映画『バケモノの子』、サウンドノベルゲームの『428 〜封鎖された渋谷で〜』などが挙げられる。
池袋を題材とした作品で真っ先にイメージするのは、テレビドラマ版が社会現象にもなった小説『池袋ウエストゲートパーク』だろう。
『デュラララ!!』の作者も池袋ウエストゲートパークに影響されて本作を執筆したのか、作中では度々、言及されている。
個人的にラノベはほとんど読んでいないので知識は皆無。
私は小説を書いているのだが、自分の作品を添削してくれる先生が本作を引用して解説することが過去に何度かあったので読むに至った。
結論から言うと予想以上に面白かった。
タイトルの由来にもなっている池袋に頻繁に出没する都市伝説的存在、首なしライダーが魅力的に描かれてた。
冒頭、チンピラ 視点で、首なしライターが初めて登場する。
4、5人のチンピラたちが池袋で、今で言う 闇バイト的な 怪しい仕事をしていた。
仕事が終わり、チンピラ たち が解散しようとすると、突然首なしスライダーが現れる。
まるで魔法のように 首無しライダーは闇の中から具現化した鎌でチンピラ たちに襲いかかる。
次に、パソコンのチャット視点にシーンに移る。
何人かがチャットで、首無しライダーや最近の池袋にまつわる噂を話し合う。
この第三者たちによって語られる首なしライダーが魅力的に映るのだ。
読者からすると、首なしライダーの正体を知りたくなる欲求を煽ってくる。
首無しライダーの描き方こそ、添削者の先生が指摘していたポイントであり、確かに引用されるほどの存在感はあった。
『噂話』の魅惑の正体ってなんだろうか。
直接見るよりも、噂話で聞いた方が興奮した経験をあなたもないだろうか。
噂話を題材に作品を作りたいと思わさせられた。
話を本作に戻すが、ミステリー 要素が強く、魅力的な謎が散りばめられている。
首無しライダーはもちろん、『ダラーズ』という誰も観たことのないカラーギャングの存在。
また、池袋では関わってはいけない人物とされる折原臨也、平和島静雄。
他にも謎の生きている首とか、気になる情報が てんこ盛り。
どんでん返しもあり、満足感はある。
ただ読後感はかなり軽い。
作者なりの考えを訴えてくるようなテーマ(メッセージ性)は皆無なので、ラノベを読んだなって感じ。
あと、やっぱり一般文芸に対して、ラノベは解像度が低め。
本作には、首なしライダーの協力者として 闇医者が登場する。
しかし、どんな闇医者でどういった経緯で闇医者になったのか、ディテールが描かれない。
私が先月読んだ『テスカトリポカ』に出てくる心臓密売ビジネスに手を染める闇医者は、その犯罪に踏み込む動機や経緯が事細かに描かれる。
そのためキャラクターの実在感が半端なく、世界観にのめり込む。
とはいえ、キャラもストーリーも魅力的なので、ジェットコースター的なサクッと楽しく読める作品を求めてる人にはちょうどいい。
『池袋ウエストゲートパーク』の存在を逆手に取ったような華麗なドンデン返しもたまらなかった。
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■火花
■アキハバラ@DEEP
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