小説『死んだら永遠に休めます』ネタバレなしの感想。ブラック企業に勤める主人公のパワハラ上司が突如失踪する

エンタメ小説

■評価:★★★★☆4
■読みやすさ:★★★★☆4

「人は自分に対して盲目であり、客観的な視点を持つべきである」

【小説】死んだら永遠に休めますのレビュー、批評、評価

『ドールハウスの惨劇』『廃集落のY家』の遠坂八重による2025年2月20日のコメディ・ミステリー小説。

【あらすじ】無能なパワハラ上司に苦しめられながら毎日深夜まで働き詰めの生活を送る28 歳の主人公・青瀬。突然失踪したパワハラ上司・前川から届いたメールの件名は「私は殺されました」。本文には容疑者候補として「総務経理本部」全員の名前があった。限界会社員・青瀬と妙に頭の冴える派遣社員・仁菜は二人で真相解明に取り組むのだが……。(Amazon引用)

私が今、書いてる作品の参考図書として、『ブラック企業』が舞台の小説を探していた。
Googleで検索して本作がヒットしたので読むに至った。
もともとXでフォローしている読書垢の人たちがレビューをポストしており、何度も目にしたタイトルだった。

表紙が印象的。
ポップな女性のイラストに対して、強烈なタイトルは一度見ただけで頭に残る。
本屋で平積みされていたら、一度は手に取ってストーリーを確認する人は多そう。
装丁づくりが巧妙だと思った。

内容について、展開が最高に面白い。
本来ブラック企業ものといえば、厳しい環境下で、主人公は苦悩しながらも仕事をこなしたり、あるいは、ブラック企業そのものと対立する構造のストーリーが多い印象。
例えば、『地面師たちシリーズ』の原作者、新庄耕さんのデビュー作で、不動産売買のブラック企業に務める男を描く『狭小住宅』はそんな感じ。

本作でも冒頭、主人公の女性社員、青瀬はパワハラ上司の前川に罵詈雑言を食らうシーンから始まる。
ブラック企業物の雛形通りの展開かと思いきや、予想外の流れに向かう。
パワハラ上司の前川が突如、失踪し、会社から姿を消す。
苦悩の元凶だった前川が消え、青瀬は平穏が訪れるとかと思うとまるで違う。
前川がいなくなったことによるざまざまな影響を食らい、青瀬の置かれた状況が思わぬ方向へと舵を切る。
この先は本作の面白いところなので、ぜひ直接読んで確かめてもらいたい。

キャラクターの魅力的。
前川の極悪非道っぷりは、本当に最悪なので、追い込まれる青瀬に、読者は共感しやすい。
前川による休日強制参加イベント『蛍を見る会』も面白い。
職場は川崎にあるが、箱根の宿に泊まって、蛍を観るために箱根の山を登る大掛かりな前川主催のクレイジーイベントを断る権利がないのは最悪すぎて笑える。

また、本作のメインキャラクターの一人、若い女性派遣社員の三井仁菜が最高に魅力的。
「肩身が狭い」を「肩幅が狭い」と言い間違えたり、喋りの語尾が間延びしたりと、バカでノリの軽いキャラ。
しかし、前川が失踪すると、探偵ニナとなり、聡明キャラへと変身する。
もはや主人公を食っているレベルなのだが、仁菜が本作の顔となり、読者の意識を先へ先へと牽引する重要なキャラクターになってた。

クライマックスにもどんでん返しを畳み掛ける。
こんな展開、誰が予想できるというのか。
あまりに想定外なので、後半は呼吸も忘れてのめり込んで読んだ。

面白いし満足度が高いが、気になる点もあった。
青瀬にひたすら尽くす、佐伯というエリート男性社員がいる。
なんでそこまで冴えない青瀬に食いついてるのか意味がわからない。
私が見逃したかもしれないが、違和感が強烈だった。
また佐伯の存在意義も分かりづらい。
佐伯がいなくても成立しそうなストーリー。

あと、最終的な結末のインパクトが強烈すぎるせいか、その動機部分がさすがに無理がある。
詳細を語るとネタバレになるので表現が難しいが、その動機で、その行動を起こすのは無理がある。

気になる点はありつつも、ミステリーとしてもブラック企業のお仕事小説としても満足度は高かった。

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死んだら永遠に休めますの作品情報

■著者:遠坂八重
■Amazon:こちら

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。小説の添削でボコボコに批判されて凹みがち。

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