■評価:★★★☆☆3.5
■読みやすさ:★★★★☆4
「変な家は面白い」
【小説】時計館の殺人のレビュー、批評、評価
『十角館の殺人』『霧越邸殺人事件』『Another』の綾辻行人による1991年9月1日刊行のミステリー小説。
【あらすじ】大手出版社・稀譚社の新米編集者である江南孝明は、友人であり駆け出しの推理作家でもある鹿谷門実を訪ねる。そこで彼は担当している超常現象を取り扱うオカルト雑誌『CHAOS』の取材のため、2人と因縁のある中村青司の建築した通称「時計館」に行くことを伝える。その館には10年前に死亡した少女の霊が出るという。江南はその霊について取材するため、3日間泊まり込みで霊との交信を行うこととなった。『CHAOS』の副編集長、稀譚社のカメラマン、霊能者、W**大学の超常現象研究会のメンバーらとチームを組み、彼らは「時計館」を訪れる。しかしそこで凄惨な事件が幕を開ける。(Wikipedia引用)
2026年に2月より、実写ドラマとしてHuluで配信されるので、先立って原作を読みに至った。
本作はミステリーだが、壮大な物理トリックによって読者に真っ向勝負を仕掛けている心意気が良かった。
そもそも私は勘違いしていたのだが、館シリーズはてっきり、島田潔(本作からミステリー作家となった島田潔はペンネームの鹿谷門実として記述される)の探偵による叙述トリックシリーズかと思っていた。
個人的に叙述トリックは、それ自体を、仕掛けるためだけ
にストーリーや文章、キャラクターを仕込んでいる印象があり、驚きはするけど小説としての読み応えが皆無で好みではない。
だが本作は叙述トリックではなく、どストレートに物理トリックをかましてくるのが好感を持てた。
あくまで私の偏見だが、叙述トリックはどこか読者をスカしている印象があって個人的には好みではない。
大変なのはわかるが、物理トリックのアイディアを練れないから叙述トリックに逃げる印象。
話を戻すが、本作はその物理トリックも斜め上を行き、読者の想像を超えてくるので楽しめた。
時計がコンセプトの時計館で事件が発生するとなると、小説を読み慣れてる者からするとトリックの予想がつく。
さすがのミステリーの巨匠である綾辻行人は読者の思考まで想定し、『きっとみんなこういうトリックを予想するよね』と作中で言及した上で一つ飛び越えたネタ明かしをするのがにくい。
性格の悪さが好き。
展開もめっちゃおもろい。
十角館でお馴染みの河南を含めた連中が、時計館の噂の真相を探るべく、ルールでがんじがらめの時計館に入る。
特に3日間外に出られず、出入り口が外から鍵にかけられている強制を敷いられるなかで、ルール外、つまり外から時計館に迫る視点もある。
十角館を彷彿とさせるこの展開はワクワクさせられる。
どういった流れで中と外が交わるのかまるで予想ができないので。
何となく、『HUNTER×HUNTER』のグリードアイランド編は本作の影響を受けたのかなとふと思った。
『HUNTER×HUNTER』の作者の冨樫さんはストーリー作りにおいて小説からも多くのインスピレーションを受けており、『レベルE』では小説家の名前が頻出する。
ネガティブな箇所について。
鹿谷(島田)が、中村青司が設計した建造物を把握していないのは引っかかった。
冒頭、河南が鹿谷門実のマンションの部屋を訪ねるシーンから始まる。
「鎌倉に時計屋敷を知っていますか」河南の質問に対して
「時計屋敷? まさか」
と鹿谷は狼狽する。
知らんかいと、ツッコミたくなる。
この話のあと、「中村青司が設計した建物は一度は見ておかないと気が済まない」と鹿谷は語ったり、物語後半でも自分は中村青司研究家と自称する。
そんなに興味があるなら、時計屋敷含む、中村青司が設計した現存する建物を把握しているのが、普通じゃないか。
なので、このセリフの正解って「鎌倉にあったのか!」といった方向じゃないか。
ミステリーは荒唐無稽なリアリティレベルのものも多いので仕方ないかもしれないが、細部が甘さが先のストーリーのクオリティへの不安となった。
ミステリーならではの犯人の動機の弱さやドラマ性の乏しさもある。
本作はさすがに命を落とす人物が多すぎる。
そのせいで、一部の命を落とした人物に対して、犯人の動機の甘さに首をかしげる。
驚きを最優先に描こうとするミステリー作家に対して、私はキャラクターの意表をつく変化に思考したいタイプなので、やっぱり私はミステリー読みにはなれないことを実感する。
とはいえ、スケール感は私が今まで読んできた綾辻行人作品の中では最大級だし、映像化されることも納得。
読みやすいし、散りばめられた謎も魅力的なので一気見した。
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