小説『宝島』ネタバレなしの感想。米軍統治下の沖縄で英雄と呼ばれた少年が消える

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■評価:★★★★☆4.5
■読みやすさ:★★★☆☆3

「戦争というものは、開戦した以上は勝利しなければならない」

【小説】宝島のレビュー、批評、評価

真藤順丈による2018年6月21日刊行の青春ノワール小説。
第160回直木賞、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞を受賞。

【あらすじ】しのびこんだ米軍基地で突然の銃撃。混乱の中、故郷(シマ)いちばんの英雄が消えた。英雄の帰還を待ち望みながら沖縄(ふるさと)を取り戻すため立ち上がる、グスク、ヤマコ、レイ。長じて警官となり、教師となり、テロリストとなった幼馴染たちは、米軍統治下の時代のうねりに抗い、したたかに生き抜こうとする。(Amazon引用)

結論から言うが、最高のストーリーだった。
直木賞受賞作品なのでかなり期待して読んだが、期待を大きく上回る読後感で大満足。

2025年、読む本に当たりが多く、小説という歴史ある物語メディアは、まだまだ元気に溢れている実感があった。
本屋が次々となくなっている悲観的なニュースもあるが、だからこそなのか、野心的で挑発的で挑戦的でユニークな作品に多く遭遇した。

本作は、そんな良作たちに匹敵、何なら超えるくらいの傑作だった。

本作は終戦直後の沖縄が舞台。
(描かれるのは1952年~1972年)
日本に返還される1972年まで、戦後の沖縄は日本ではなくアメリカだったのは初めて知った。
私は歴史に無知なのでよく分かっていなかったのだが、第二次世界大戦後、沖縄は戦勝国のアメリカに統治されていた。

統治時代の沖縄人が強いられた屈辱の日々が惨たらしい。
そして、なんとなく可愛くて、お笑い的にもいじられる方言の印象がある『なんくるないさ(何とかなるさ、の意味)』は、南国に住む沖縄人の穏やかさを象徴すると思っていた。
だが、この言葉が生まれた経緯は壮絶だった。

沖縄の基地に住むアメリカの軍人たちは占領下の沖縄人を人扱いしない。
飲酒運転で沖縄人を撥ねて命を奪っても、加害者の軍人は無罪の判決が下る。
成人女性に暴行するのはもちろん、その卑劣でキモい悪意は幼女にまで伸びる。

当時は戦果アギヤーと呼ばれる若者たちがいた。
貧困を強いられ、まともに食うことのできなかった人たちのため、沖縄の若者たちがアメリカの基地に忍び込んで、物資をかっさらう。
体の悪い老人たちには薬を与え、腹を空かした連中には食い物を分ける。
彼らにとって戦争はまだ終わっていない。
だからアメリカから奪ったものを『戦果』と呼び、沖縄人の多くに愛される若い義賊が誕生した。

犯罪をしないとまともな生活ができない。
普通に生活していても米軍に傷つけられたり、尊厳を踏みにじられたり、命を奪われたりする。
不遇を押し付けられた彼らが可哀想すぎて、読んでいて何度も胸が締め付けられた。

謎が魅力的だった。
本作は英雄と呼ばれた戦果アギヤーのオンちゃんと呼ばれる少年が登場する。
オンちゃんとその弟のレイ、親友のグスク、恋人のヤマコが本作のメインキャラクター。
物語冒頭で、沖縄で最も大きい基地、カデナ・キャンプをオンちゃん、グスク、レイ、その他の戦果アギヤーたちで侵入する。
隠密で行ったにも関わらず、なぜかアメリカに情報が筒抜けで、武装した米軍が待ち構えていた。
グスク、レイは命からがら脱出することに成功するが、オンちゃんは行方不明となる。
オンちゃんは仲間の3人以外の島民たちにも多大な影響力を持つ当時の沖縄にとって重要人物。
一体、彼に何が起きたのか、なぜ消えたのか、今は生きているのか。
消息不明となったオンちゃん周りの謎が気になりすぎて、先へ先へとページをめくらされた。

詠みづらさが終戦直後の沖縄の雰囲気を作る助けとなっている。
パッと見じゃあ意味が理解できない難解な沖縄の方言が、主にセリフでよく見られる。
また現代の関東産まれの私からすると、『戦果アギヤー』を始めとする聞き馴染みのない当時の沖縄用語もいくつか登場する。
読んでいくと、慣れてはくるのだが、最初は意味を調べたりと、引っかかりながら読み進めた。
そのため、読書慣れしていない人には恐らく読み切るハードルになるので、本作は勧めづらい。
当時の沖縄の空気感を生々しく感じられる文体として成立しているので、個人的にこの読みづらさは歓迎ではある。

ネガティブなところとしては、途中、中だるみするくらい。
中盤より少し前、テンポが落ちる。
レイが又吉という那覇派の当主と会うあたりと、ヤマコが信頼するユタおよびグスクが交流するあたり。

このあたりでは、オンちゃん探しの手がかりがなくなり、どうしようって、感じのシチュエーションで、先に物語を進めるための新規の情報が、少しずつ投入されているところ。
本作は700ページちょっとある大長編なので、ストーリーの進行速度が停滞する時があるのは仕方いかなあと思う。

読書慣れしている人には勧めたい傑作。
直木賞受賞小説ってやっぱり凄い。

当時の沖縄の不遇を知れたのもいい勉強になった。
つくづく戦争というものは、開戦した以上は勝利しなければならないことを痛感した。

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■乱歩と千畝―RAMPOとSEMPO―

■虚の伽藍

宝島の作品情報

■著者:真藤順丈
■Wikipedia:宝島 (真藤順丈の小説)
■Amazon:こちら

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。小説の添削でボコボコに批判されて凹みがち。

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