■評価:★★★☆☆3
■読みやすさ:★★★★☆4
「底辺劇団でしか味わえない刺激的な日常」
【小説】下北サンデーズのレビュー、批評、評価
『池袋ウエストゲートパーク』『娼年』『4TEEN』『北斗 ある殺人者の回心』の石田衣良による2006年7月1日刊行のコメディドラマ小説。
【あらすじ】東京都下北沢が舞台。主人公・里中ゆいかは千葉大学進学の為に山梨県から上京。上京したはいいものの、幼い頃から旅館を経営する両親から欲しいものを何でも買い与えられていたため、欲しいものも、希望も無くなってしまっていた。大学説明会でゲリラ的に劇団員勧誘を行った「下北サンデーズ」という貧乏小劇団に興味を持ち、公演を鑑賞したゆいかは感銘を受け、入団を決意する。(wikipedia引用)
私が今執筆している小説の主人公が元劇団出身の俳優の設定。
執筆の手助けになればと、劇団を題材とした小説を探していた。
ネットで調べ、気になった3冊のうちの1作が本作となる。
読む予定の残り2冊は恩田陸『チョコレートコスモス』と有川浩の『シアター!』。
本作の作者の石田衣良さんは、ロマンチックで品のある描写で、魅力的なキャラクターによるスリリングな展開を得意とするエンタメ小説家の印象が強い。
また『池袋ウエストゲートパークシリーズ』ではタイムリーな社会問題を扱ったりと、テーマも明確に設定している。
本作は、石田衣良さんならではの美しい描写はなりを潜め、テーマも不在のライトノベル的な軽い読後感の作品だった。
自分を殺して編集者の求めるものを作りました、的な一歩引いた印象があり、調べてみた。
Wikipediaによると、アーティストの藤井フミヤさんのとある曲の作詞を担当した石田さんは、藤井さんとプロモーションビデオ監督を務めた『ケイゾク』『SPEC』の監督、堤幸彦さんの3人で共同プロジェクトのドラマを作る企画の立ち上げた。
ドラマの原作用に本作を執筆したそう。
キャラクターは相変わらず魅力があった。
主人公は平凡な女子大生ゆいか。
なんとなく観劇した下北サンデーズに魅了されて、入団志願し、一員となる。
ゆいかは目立った特徴のない普通のキャラだが、下北サンデーズの面々が濃すぎる。
ちょっと売れたら女遊びしまくるコメディ役者のサンボ。
遅筆すぎし、遊びまくるし、おちゃらけた雰囲気だが、演技指導になると鬼のように罵詈雑言を浴びせる座長のあくたがわ翼。
入団早々、ゆいかの若さに嫉妬し、敵意をむき出しにするヒロインの千恵美。
少年ジャンプの『HUNTER×HUNTER』のような、まともな主人公に対して周りが異常なキャラばかりというのがいい。
まともであるゆいかが、個性的な劇団員たちに振り回される姿に読者は感情移入するので、読みやすい話になっていた。
読後感はイマイチ。
作者が主張したいメッセージ性はなく、キャラクターの内面描写も最低限でサクサクとストーリーが進む。
読みやすいだけで、読んだ後に何も残らない作品は個人的にツボではない。
ドラマ版は1話繰上げて完結した実質打ち切りという残念な終わり方をしたらしいが、納得。
日々の仕事などの生活に消耗し、休息のための読書くらいは軽くてサクッと楽しみたい層もいるとは思うので、ライトノベルが好きな人には向いていると思う。
とはいえ、当初の目的だった劇団や俳優については、知らない情報も多く書かれていたので良い勉強になった。
個人的には、劇団にまつわる人間心理がより深い話が描かれていそうな『チョコレートコスモス』に期待したい。
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