■評価:★★★☆☆3
■読みやすさ:★★★☆☆3.5
「怠惰を突き詰めると道が開かれる」
【小説】BOXBOXBOXBOXのレビュー、批評、評価
坂本湾による2025年11月17日刊行の純文学小説。
2026年1月14日発表の第174回芥川賞候補作。
【あらすじ】宅配所に流れる箱を仕分ける安(あん)。ある箱の中身を見た瞬間から次々に箱が消えていって――顔なき作業員たちの倦怠と衝動を描き、新時代の〈労働〉を暴くベルトコンベア・サスペンス。(Amazon引用)
本作は、小説系YouTuberの何人かがおすすめとして挙げていたのと、タイトルのインパクトがあったので妙に記憶に焼き付いていた。
芥川賞候補ということと、ちょうどKindleが50%ポイント還元セールしていたのも相まって読むに至った。
メタファー全開の純文学ならではの独特の世界観だった。
主人公の青年、安は宅配所で働いている。
宅配便の荷物をトラック運転手に振り分ける単純作業で、振り分けられる5桁の英数字(NS-●●●)のレーンに立ち、日々、叱咤する社員からレーンナンバーを浴びていた。
宅配所は立地条件のせいなのか、霧が立ち込めており、時には荷物をさばくのが難しいぐらい濃霧に包まれる日もある。
安をはじめとしては個性的なキャラクターたちは、みんな、仕事にうんざりしている。
足が悪く、常にに椅子に座りながら作業をしている稲森はことあるごとにレーンを蹴る。
斉藤は酒を飲みながら仕事をしないとやっていけない精神状態で、入院する奥さんの執拗なメールにうんざりしてる。
安をはじめとする派遣社員たちを仕切る宅配所の契約社員である神代もまた、正社員ではないにも関わらず、同じく正社員ではない安たちを責任を持って管理することに疑問を抱いている。
霧。
つまり彼らの人生は濃霧に包まれ、行くべき方向を見失っている。
次第に、荷物を振り分けるというIQ不要の単純作業のループに限界を感じ、暴発を始める。
恐らく作者の葛藤を、宅配所から成る世界によってメタファーとして描いているのだろう。
私も理解できる。
小説家を書く時間を確保するため、定時に帰れる派遣社員として勤務している。
だが、仕事は責任の薄い単純作業が主なので、『俺は貴重な時間を消費して一体、何をしてるんだ』と葛藤を覚えることがある。
なので頻繁にトイレに向かい、暗い中、便座に座って本を読んでいる。
なぜか、従事する企業が入ってるビルのトイレは10分ぐらいすると個室の電気が消えるので。
私はトイレで読書をするという、社会へのささやかな反抗を、安は小説らしいもっと過激なやり方で示す。
特に新しさを感じる題材ではなかった。
例えば、少し前にコンビニ人間は新しさの塊だった。
マニュアルで、がんじがらめのコンビニで従事するしか、社会への繋がりを持ってないサイコパスの女性の話。
まるで共感できない彼女の取る次の一手が興味深くて、先へ先へとページをめくらせる。
しかし本作は題材はもちろん、この題材で描くと結末は容易に想像できる。
特に意表をついた結末を迎えるわけでもないので、新しさで突き抜けて欲しかった。
そして難解さもある。
正直、本作が描きたいのは何か別にあるようにも思える。
文庫になったときの解説で理解を深めたい。
独特の空気感を作ることに成功はしているので、この日常とファンタジーが融合したような世界観に触れてみたい人にはおすすめ。
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■小銭をかぞえる
【h4】BOXBOXBOXBOXの作品情報
■著者:坂本 湾
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