■評価:★★★☆☆3
■読みやすさ:★★★★☆4
「変な館はワクワクする」
【小説】人形館の殺人のレビュー、批評、評価
『十角館の殺人』『Another』の綾辻行人による1989年4月5日刊行のミステリー小説。
【あらすじ】父が飛龍想一に遺した京都の屋敷――顔のないマネキン人形が邸内各所に佇(たたず)む「人形館」。街では残忍な通り魔が子供の命を奪う事件が続発し、想一自身にも姿なき脅迫者の影が迫る。彼は旧友・島田潔に助けを求めるが、破局への秒読み(カウントダウン)はすでに始まっていた!?(Amazon引用)
変な館を舞台とする叙述トリックミステリーシリーズ、『館』シリーズの第4作目。
叙述トリックは、映像作品とは異なり、イメージして楽しむ文章の特性を利用した小説ならではのトリックなので、映像化が難しい。
例えば一人称が『私』で女言葉を使うキャラクターが実は男だったなど、読者の先入観を利用して文章でだます手法。
映像化不可能とされていた本シリーズ1作目の『十角館の殺人』がまさかのHuluでドラマ化され、かなり視聴回数を稼いだらしく、本シリーズで評価の高い5作目の『時計館の殺人』が続編として制作され、2026年2月より配信される。
私は3作目の『迷路館の殺人』まで読了済みだったので、ドラマ化に先立って、7〜8年積読していた4作目の本作に加え、5作目を読むに至った。
元祖『変な間取り』だと私は理解している本シリーズならではの、相変わらずの異形な館の間取りにはワクワクさせられる。
主人公である飛龍想一は、色々あって育ての母とともに、亡き父親が所有していた京都の洋館に移り住む。
彫刻家である父親は異常な最期を迎えており、その思念がこびりついているかのごとく、洋館もまた不思議な様相を呈している。
母屋となる洋館と、繋がってる賃貸アパートの緑影荘の廊下や玄関など計6箇所にそれぞれ女性のマネキンが配置されている。
いずれも顔がないのっぺらぼうで、6体は各々、体の一部が欠損している。
右腕がなければ、左足がない、頭部がないマネキンが迎える緑影荘には、新規の入居者を弾くに充分な不気味さを醸してる。
更には亡き父の意向により、マネキンの撤去ができない状況にある。
私はミステリー小説は門外漢。
昔は好きだったんだが、今は直木賞系の重厚なドラマが描かれるエンタメ作品を求めており、ミステリー小説は世間で話題になったもののみ読む程度。
そんな私でもこの気持ち悪い世界観は最高に惹かれた。
私はホラーが好きなので、本作のややホラー混じりの空気感には先の展開が気になってページをめくるスピードがかなり早くなった。
ただ、個人的に面白がれるのは設定・世界観くらいだった。
古い本なだけあってテンポが遅い。
私は文庫本で読んだのだが、本篇が約450ページに対して、物語が動き出すのが、約100ページ辺りから。
導入が長すぎて、冒頭は読み進める速度はかなり遅かった。
怪しいキャラはいつつも、魅力的な人物は皆無。
そのため、読み進める原動力がマネキンの謎くらいなのは、今のコンテンツ飽和時代からすると乏しく感じる。
キャラクターでいえば、シリーズの探偵役である島田潔の扱いが残念。
核心部分に触れるので詳細は控えるが、もっと存在感を示してほしかった。
何よりもオチが首をかしげる。
これもネタバレになるので言えないが、私がミステリーを読まなかった理由の一つにある、ただ読者を驚かせるだけに特化しただけの叙述トリックが炸裂する。
ドラマ性は皆無だし、本作で用いられる叙述トリックは、過去にはミステリーの重鎮が御法度とした手法が取られている。
確かに驚くけど、悪く言えば驚くだけ。
エンタメに驚きは必要だが、驚きが強すぎてリアリティとしての不自然さが勝るとドラマ性は失われる。
それを良しとして楽しむジャンルであるミステリーは人を選ぶ。
時計館の館を続けて読むつもりだが、果たしてどうだろうか。
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