小説『恋に至る病』ネタバレなしの感想。150人以上の命を奪った恋人の内面に迫る

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■評価:★★★☆☆3
■読みやすさ:★★★★☆4

「流される人生に、失われた自由意志に疑問を感じなければならない」

【小説】恋に至る病のレビュー、批評、評価

『楽園とは探偵の不在なり』『星が人を愛すことなかれ』の斜線堂有紀による2020年3月25日刊行の青春スリラー小説。

【あらすじ】他人と深い関係を結ばないように生きてきた内気な性格の高校生・宮嶺望は、転校先の学校で、誰からも好かれるクラスの人気者・寄河景と出会う。周囲との距離を保とうとする宮嶺に対して、景は持ち前の明るさで距離を縮め、2人は次第に一緒に過ごす時間が増えていく。そんなある日、同級生の根津原が近所で遺体となって発見される。さらに、その後も同級生の不審な命を落とす事件が相次ぐ中、宮嶺は大切な景が事件に関わっているのではないかという疑惑を抱きはじめる。それでも彼女を思う気持ちを抑えることができず……。(映画.com引用)

今回初めて手に取った斜線堂有紀さんの著作だけど、彼女のことは前から気になっていた。
ペンネームである斜線堂は、私が最も好きなミステリー小説、占星術をモチーフとした小説の著者による名作ミステリー小説『斜め屋敷の犯罪』に由来する。
私ももちろん読了している『斜め屋敷の犯罪』はめちゃめちゃ優れた物理トリックを展開する。
正直、机上の空論感がいなめないバカミスの雰囲気もあるが、論理的には実行可能なクレイジートリックが明かされた時は胸が踊った。
館シリーズでおなじみのミステリー小説家、綾辻行人も称賛する『斜め屋敷の犯罪』は一度読んだら忘れられない強烈さがあるのだ。
なので、斜線堂さんには勝手に親近感を持っていた。
本作はアマゾンレビューが高評価だったのと、2025年10月24日に実写映画の公開を控えているので手に取った。

だいぶぶっ飛んだ話だけど、女性作家ならではだと思った。
主人公はいじめられっこの平凡な小学5年生、宮嶺望。
そんな彼を、いじめっ子から救ってくれたのが、クラスのマドンナを超越したカリスマ的存在、寄河景。
2人は、互いを共感・理解し合い、またチームとなって距離を縮めつつ、あらゆる困難に向かっていく。

共感とチーム感で、関係性を育くんでいく描き方に女性性を感じさせた。
男性作家だと、適当に出身地が同じとか趣味が同じみたいな共通点からキャラが仲良くなったりする。
だが本作では随所にお互いの根深い負の感情に共感を示し、お互いを受け入れ、肯定し合うのはもちろん、景が望に『何があっても私のヒーローでいてほしい』といったチーム感を強く打ち出すのが印象的だった。
今作では150人で多くの命が落とすハードな内容なだけに、温かな女性性がより強調された。

ただ本作は全体的に好みではなかった。
ファンタジーではないのに、景の能力があまりに実在感がなく、入り込めない。
たとえばこんな一例がある。
景は、小学校5年生のクラスでカリスマをほこっていた。
ホームルームではクラス委員を決めたりするのだが、意見の対立が起きることは一度もない。
34人の生徒がきれいにたった1度の話し合いで、それぞれの委員の定員に収まる。
これは景が事前に各々の生徒に『あなたはこんないいところがあるね』とその人の長所を指摘し、遠回しにその人に適した委員へと立候補するようにし向け、コントロールしていた。

理屈はわかるけど、いくらなんでも完璧に行動を掌握するのは、現実離れすぎている。
しかも小学生が。
超能力設定ならまだしも、彼女はただの人。
このエピソード始め、本作は理解に苦しむぶっ飛んだ展開が多くあり、物語に入り込みづらかった。

また、景は望を最初から気に入っているのだが、なぜ好意を示しているのか、読書を納得できる理由が存在せず、違和感を覚えた。
というのも望が魅力的な人間には見えないから。
そのため、望には何か裏でもあるのかと深読みしてしまったくらい。

悪い意味でラノベって感じだった。
個人的には、もっと生々しい実際感のあるキャラたちが、己の確固たる哲学だけを頼りに厳しい世界に立ち向かう物語が好き。
本作はまるで深みはないし、興味深い社会性を含んだテーマもない。
実際に起きた自ら命を落とす若者が多発した『青い鯨』事件がモチーフだが、ただエンタメとしてパンチがあるから使っただけで、読了後に何か考えさせるられるようなことは描かれていない。

正直期待はずれ感が否めない。
彼女の著作は『楽園とは探偵の不在なり』も積ん読しているので、こちらに期待したい。

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■Nの逸脱(占い師Bの板東)

■テスカトリポカ(バルミロ)

■爆弾(スズキタゴサク)

恋に至る病の作品情報

■著者:斜線堂有紀
■Wikipedia:恋に至る病
■Amazon:こちら

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。小説の添削でボコボコに批判されて凹みがち。

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