ノンフィクション本『天才はあきらめた』ネタバレなしの感想。嫉妬の化け物・お笑い芸人山里亮太は今日も暴走する

ノンフィクション等

■評価:★★★★☆4
■読みやすさ:★★★★☆4

「天才をあきらめたゆえに成し遂げた偉業」

【ノンフィクション】天才はあきらめたのレビュー、批評、評価

お笑いコンビ南海キャンディーズの山里亮太による2018年7月6日刊行のノンフィクション本

【あらすじ】嫉妬の化け物・南海キャンディーズ山里は、どんなに悔しいことがあっても、それをガソリンにして今日も爆走する。
コンビ不仲という暗黒時代を乗り越え再挑戦したM-1グランプリ。そして単独ライブ。
その舞台でようやく見つけた景色とは――。(Amazon引用)

本著は刊行当時、テレビなどの多くのメディアで芸人たちが言及し話題になった印象がある。

お笑い芸人コンビ、南海キャンディーズの山ちゃんこと山里亮太さんが、自身が今の売れっ子になるまでに経験した苦労や様々な感情をつづった自伝本。
そもそも、山ちゃんはお笑い芸人を育成する吉本養成所の同期芸人であるキングコング、とろサーモンなど、多くの人気芸人から『最悪な性格』といじられ倒してきたのと同時に、常軌を逸した努力家であると、私は多くのバラエティ番組で目撃していた。

自己研鑽が何よりの趣味であり、日々をコールドシャワーでメンタル強化を図る私にとって、成功哲学に関する本が大好きなので、本著をも読む日をずっと楽しみにしていた。
結論から言うと、タレント本の枠を飛び越えた傑作だった。

性格が悪すぎて笑える。
山ちゃんは養成所で知り合い、最初に組んだ相方М君へとんでもやい暴虐を振るう。
山ちゃん自身が漫才のネタを作っていたため、山ちゃんが上に立ち、M君の言論統制をする独裁を行った。
例えばM君は滑舌が悪かったので、巻き舌の訓練を半日やらせたり。
M君にどんな予定があろうとも、突然呼び出してネタを背を付け合わせたり。
山ちゃんのハードな要求にM君は疲弊し、やつれた風貌から周りから死神と呼ばれるようになった。

それでも山ちゃん自身は努力家であり、ネタ作りやインプットを膨大に行っていたから、M君は反抗できないし、売れるためにもなんとか食らいついて行ったのだろう。
それでもひどい。

その後に組む、富男君への要求もひどい。
上記のようなドン引きする諸々の要求に加え、唯一笑えたのが、『ネタには前向きのコメントだけしか言わないで欲しい』というもの。
山ちゃん自身が決してメンタル強いわけではなく、その部分が垣間見えるところが読んていて、山ちゃんを嫌いにならずに済む救い。

山ちゃんの戦略が鋭い。
性格の悪さはかなりのものだが、の悪さを山ちゃんは自分を客観視しつつ、明確に成功のビジョンを持っている感性の鋭さがあったから、南海キャンディーズを世間が認知するまで押し上げ、さらには大女優との結婚に至ったのだろう。

2番目に、組んだ富男くんはブサイクな自分にはない見た目の良さと、ファッションセンスの良さを、見いだしていた。
そのため、富男くんには山ちゃん自身のファッションをおしゃれにプロデュースしてもらっている。
今のスカーフを巻く小物使いも富男くんのアドバイスによるもの。
確かに見た目が劣っていても、小綺麗であるほうが我々、見る側としては受け入れやすい。

南海キャンディーズの相方のしずちゃんもそう。
富田くんと解散した後は、山ちゃんは女性の相方を探していた。
理由は当時、男女コンビが少なかったから。
目立つためや新しさを追求するために当時すでにコンビを組んでいたしずちゃんを口説いた。

山ちゃんは相方を傷つけたり、苦しめたり、決して要領の良い人間ではない。
天才ではないかもしれないが、それでも努力を積み重ね、巧妙に戦略を練って実践したのだろう。

天才より努力家が勝る。
私が今読んでいる『やり抜く力GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』は、成果を出すのは天才ではなく、情熱と粘り強さを兼ね備えた凡人であると記している。

この本の結論を山ちゃんは体現していた。
特に感じたのは、
2004年のM1グランプリで決勝まで残った時のネタ作り。
決勝と最終決戦用の2本あればいいので、山ちゃんは2本をとてつもなく作り込んだ。
一つのくだりのボケに対し50個ぐらい作り全てをライブで試し一番受けたやつを残すトーナメント式で練り込んだ。
ネタ帳は、前のコンビのものも入れて100冊近くに膨れ上がったそう。
とんでもない執念ではないか。

何より、怒りや嫉妬をガソリンにするという行為。
当時の芸能界、例えばディレクターや女性タレントは芸人を下に見る行為が顕著だった。
だから山ちゃんはデスノートならぬ、復讐ノートを作成していた。
嫌なことをされたらイラ立つのは時間がもったいないのですぐにノートに書く。
併せて、自分が売れたら将来どんな復習をしてやるかを具体的に記載するのだ。
そうやってすべての怒りや売れている芸人の嫉妬をガソリンにし、ネタ作りなどのクリエイティブな活動に生かした。

当時書かれた復讐ノートの画像もあるので心から感心させられた。

読み物としても面白いし、たくさんモチベーションをもらえた良書。

生き様に心震わされる魅力的な主人公が登場するおすすめ作品はコチラ。

■白鷺立つ

■火花

■エヴェレスト 神々の山嶺

天才はあきらめたの作品情報

■著者:天才はあきらめた
■Wikipedia:山里亮太
■Amazon:こちら

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。小説の添削でボコボコに批判されて凹みがち。

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