■評価:★★★☆☆3.5
■読みやすさ:★★★★☆4
「オカルト的な現象は現実的に説明することも可能である」
【小説】ポルターガイストの囚人のレビュー、批評、評価
『このホラーがすごい!』2025年版(国内編)で1位を獲得した『深淵のテレパス』の上條一輝による
2025年6月30日刊行のホラー小説。
【あらすじ】「あしや超常現象調査」の芦屋晴子と越野草太は、古い一軒家でポルターガイストに悩まされる人物の依頼を受ける。世界で起こったポルターガイスト現象から法則性を導き出し、独自の対策を編み出して超常現象に立ち向かう二人。やがて現象は収束した……と思った矢先に、依頼人が失踪してしまう。さらに晴子と越野の周囲までもが奇怪な現象に蝕まれ始め──。(Amazon引用)
シリーズ前作の『深淵のテレパス』同様、オカルトとしての謎が魅力的。
前作では、視点人物の1人でOLのカレンが「変な怪談を聞きに行きませんか」と同じ職場の部下の誘いで怪談会に足を運ぶ。
そこで奇妙な怪談を浴びたことで、日常生活が怪異に蝕まれるのだ。
YouTuber『あしや超常現象調査』の活動として活動する主人公の越野と同じ会社の晴子は、依頼人のカレンの身の回りに起こる怪奇現象の解明に取り組む。
本作では、PR会社に勤める越野たちがある映画の宣伝を行う。
そこで知り合った40歳の主演俳優、東城省吾が最近、金に困って戻ってきた実家で、ポルターガイスト現象らしきに悩まされるのだ。
一般的に語られるポルターガイストの原因について言及しつつ、越野と晴子は省吾が食らうポルターガイストの法則を探り、真相に迫る。
戻ってきた実家で怪奇現象に悩まされるというのが魅力的な謎だ。
省吾は幼少期から実家の空気感は好きではなかったが、特に何事もなく過ごしていた。
しかしなぜか、戻ってきた今になってポルターガイストに襲われる。
このちょっとしたスパイスが謎を魅力的に仕立て、私を物語に没入させてくれた。
何の縁もゆかりもない引っ越した家ではなく、実家という身近感にもより恐怖が宿るので良かった。
作者の主張を打ち出しているところが好き。
お話のネタバレにはならないと思うので書くが、
(※もしあなたが1ミリでもネタバレを避けたいと思うなら、すぐにブラウザバックしてほしい)
前作同様、本作もあくまでオカルトを全面的には肯定せず、実際的な論理で、省吾の身に起こった現象を説明しようとするキャラクターがいる。
越野、晴子一派は2人を含めて全員で5人おり、オカルト肯定派、否定派に別れている。
晴子はやや中立寄りの印象。
晴子がリーダーなので、安直にオカルトに振り切ることはしない。
そのため、晴子たちが遭遇するポルターガイストなどの奇妙な現象に対し、多角的な視点で各々の説得力のある論理を展開し、議論していくので、より物語に深みが増す。
やっぱり反論があるからこそ、より物事・事象に対して本質に迫れる。
思考を止めない姿勢は大事だ。
結果的に軽いエンタメ作品に留まらない、読み応えがあるいい読後感がある。
あとは、簡単に結論付けないことで、著者がこの『あしや超常現象調査シリーズ』を長く作っていきたい主張なのかもしれない。
個人的なポジティブ・ポイントなのだが、省吾の家が豊島区の雑司が谷にある関係で、池袋の隣の駅『要町』が出てきたのは嬉しかった。
個人的に馴染みのある土地なので。
過去にも私の生まれの土地である神奈川県小田原市を舞台にした村上春樹のある著作にも、どこか記憶に強く残っている。
自分に馴染みのある土地を舞台とした小説をもっと読みたいと思った。
また本作は、前作よりも物語にスケール感があった。
それは何人かのキャラクターの変化が描かれているため。(厳密に言えばもっと多く変化している)
物語とは重要なキャラクターが変化・成長するからこそ、起こったトラブルのスケール感が図られるもの。
キャラクターが変化・成長しない物語は、キャラクターたちが遭遇する事件が大したことではない証明になる。
そのため、個人的には前作よりも本作の方が好きかもしれない。
ただもっと晴子の良さを押し出してほしかった。
前作に比べ、本作では晴子がややテンション的に低空飛行なので、晴子の魅力が薄めだった。
突き抜けるほどの作品ではないが、キャラは魅力的だし、読み応えがあるので個人的には好きだし、このシリーズは追いかけたい。
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■深淵のテレパス
■ぼぎわんが、来る
■でぃすぺる
ポルターガイストの囚人の作品情報
■著者:上條一輝
■Amazon:こちら


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